ドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンが音楽業界のトップクリエイター達と始めた、新興の定額制音楽ストリーミングサービス「Beats Music」が、iPhoneアプリから有料会員化を完了できるように、アプリ内課金を始めました。
Beats Musicは、高級ヘッドフォンブランド「Beats by Dr. Dre」で成功したオーディオメーカーBeats Electronicsが運営する定額制音楽ストリーミングサービスとして、高い注目を集めています。Beats Musicは、iPhoneアプリをアップデートし、アプリ内から定額料金を課金できるように設定を変更しました。決済はiTunesのシステムを使用します。
このシステムを使用することで、Beats MusicとBeats Musicに楽曲を配信しているレコード会社は有料会員1人につき3ドル分を失う計算になります。
現在Beats Musicは、アメリカでの利用が可能で、月額9.99ドルの有料プランのみを展開しています。一方、ムードやアクティビティなど、ユーザーが入力した文脈からプレイリストを自動で作成してくれる「THE SENTENCE」という機能だけは無料で利用ができます。
Beats MusicのCEOイアン・ロジャースは、Beats Musicのユーザーは半数以上がiPhoneユーザーであること、そしてアプリ内課金が無いと有料会員に転換させることが難しいことから、今回の決断に至ったと述べています。
Beats Musicと競合する定額制音楽ストリーミングサービスの「Rdio」と「Rhapsody」も現在iOSでアプリ内課金を展開しています。しかしRdioはiOSでの課金からの損失を補填するため通常の月額料金9.99ドルを14.99ドルに上げて設定しています。
音楽ストリーミングサービス分野の最大手Spotifyは、現在アプリ内課金は実施していません。しかしSpotifyは、これまで有料だったモバイルデバイスからの利用を、広告付きの無料にするドラスティックな戦略を2013年から開始しました。同じ戦略を実施している企業は、この分野ではあまり存在していません。
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Beats Musicのアプリ内課金を実施する戦略は、現状の戦略が大きく成功していないことを示すサインかもしれません。現在Beats Musicは、アメリカのモバイルキャリア最大手AT&Tと提携して、音楽サービスをスマホユーザー向けにバンドルしたモバイルプランを個人とファミリー向けに提供しています。
しかし新たに有料会員の誘導チャネルを広げることは、これまでの課金システムのコンバージョンや、スーパーボールのテレビCMなどのプロモーションが結果に結びついていないとも考えられます。
また、今回の決断では音楽サービスがiPhoneに多いことを示しています。このことから、今後はiPad向けアプリのリリースなど、マルチプラットフォームで利用できる環境の整備が早まる可能性が出てきました。
今回浮き彫りになったのは、音楽サービスにおいて有料会員のコンバージョンはいろいろと課題が多いということです。さまざまな音楽サービスが競争しているアメリカでは、会員の獲得方法だけでなく、有料制からの収益の拡大も、これから音楽ビジネスが成功していく上では注目され議論されていくのではないでしょうか。
ソース
Beats Bites the Bullet, and Starts Selling Subscriptions From Apple’s App (4/16 re/code)