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アップルの衝撃的なBeats買収から1週間が過ぎ、Beatsが持つ数多くの可能性 (ヘッドフォンビジネス、定額制音楽配信、ジミー・アイオヴィンとドクター・ドレーの影響力とヴィジョン)をどのような形でiTunesストアや音楽戦略に誘導するのか、業界やメディアの関心が高まっています。

その中でも音楽業界が最も注目しているのが、Beats Musicと定額制音楽ストリーミングサービスの今後でしょう。これまでダウンロードで無敵の市場シェアを誇るアップルが、全く新しい定額制配信事業をどう仕掛けてくるのかは、本来であればもっと注目されるべきでしょう。8億8000万個以上のiTunesアカウントを保有しているアップルの動きによっては、リスナー、レコード会社やアーティストにも大きく影響を与えかねません。

その中で、アメリカ最大のユーザー数を持つネットラジオ「Pandoraは、アップル-Beatsとの競争にも楽観的な姿勢を見せています。

PandoraのCFOマイク・ハーリングはRaymond James Financial 主催の投資家向けカンファレンスで、Beats Musicの有料会員数の規模の少なさに疑問を投げかけ、音楽サービスのユーザー獲得がいかに難しいかを指摘しています。

BeatsのスーパーボールのテレビCMや、1年以上に渡る派手な煽り、ドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンの知名度、集められるだけのセレブによるツイート。この業界では成功することが非常に難しい。アップルもiTunes Radioのローンチでそれは学んだ。あのサービスも過剰に宣伝され期待視されていた。我々は若干のユーザー減少があったが、その後回復しまた成長を続けている

とコメントしています。

iTunes Radioが出た当時、アップルの新サービスは「Pandoraキラー」と呼ばれて、圧倒的なユーザー数を持つストリーミングサービスのPandoraに対抗する唯一の可能性と思われていました。今回のアップル-Beatsは、Pandoraにとって脅威になるのでしょうか?

Pandoraは脅威にはならないと感じています。その大きな理由はビジネスモデルにあります。Pandoraは、広告モデルを導入したオンラインラジオ・サービス。一方Beats MusicはSpotifyと同様に、リスナーが好きな曲を探していつでも聴けるオンデマンドな音楽サービスです。Pandoraは無料で聴ける代わりに、楽曲やスクリーン上に広告が挿入され、さらにリスナーは聴きたい音楽を選ぶことは出来ず、聴き流しするネットラジオを利用します。

ハーリングは

オンデマンドの領域では、グーグルやSpotify、アップルが直接競争し、その周りに小さなサービスが存在しているが、ここは我々が競争している領域ではない。ネットラジオ、ゆったりした体験、無料で広告モデルの音楽視聴。これらがPandoraの領域だ。そして我々は現在も圧倒的な市場シェアを占め、最高の製品を提供している。

ハーリングの意見を要約すると、アップル-Beats連合で競争に苦労するのは、Spotifyやグーグルということのようです。

Pandoraが競争する領域は音楽ストリーミングサービスでも、オンデマンド型サービスではなく、ネットラジオ/パーソナライズド・ラジオ・サービスの領域になります。例えばアメリカの自動車におけるオーディオ利用を示したチャートが下になります。こちらでは一般的なFM放送やCDがまだ80%以上を占め、ネットラジオのシェアは一桁台に留まっています。

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Pandoraにとってアップル-Beatsが競争相手ではないことを強調することは、メディアや音楽関係者がアップルと既存のサービスを単純に規模感で比較したがることから目を背けさせることもあったと思います。

ただ一方でPandoraには、アップルのようなクリエイティブやマーケティングも無ければ、iOSのようなプラットフォームも持ち合わせておらず、新しい取り組みを始めるには課題が多く将来性が不安です。アップルの場合は、Beatsとの融合以外にも、iTunesのAndroidへの展開など音楽の聴き方を変える取り組みを拡大する可能性が広がっています。

ソース
Pandora doesn’t think Apple and Beats are a threat(6/1 Quartz.com)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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