レディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークが突如26日に新ソロアルバム「Tomorrow’s Modern Boxes」を発表しました。
トム・ヨークは「Tomorrow’s Modern Boxes」を通常のデジタル配信とは全く異なる販売手法でリリースしました。購入方法は2通りです。限定デラックス・アナログレコードと(MP3/FLAC/WAVダウンロード付き、30ポンド)、ファイル共有システム「BitTorrent」のバンドル配信システムを活用したMP3音源(655円)の販売と、革新的なアルバムリリース手法を実施してきたレディオヘッドらしい方法を採用しています。
特設サイト「tomorrowsmodernboxes.com」に行くと、アルバムが購入することができます。
特に注目が集まっているのは、一般的にはまだ認知度が低いBitTorrentバンドル配信システムを活用している点です。
トム・ヨークはBitTorrentでのリリースについて
もし上手く行けば、作品を作る人たちがネット上のビジネスをある程度自らがコントロールできる効果的な手段の一つになるかもしれない。
とコメントしています。
BitTorrentバンドル配信システムは、torrentoファイルと呼ばれる分割されたファイルをダウンロードしていき、結合することで全ファイルが入手できるダウンロード方法です。クリエイターは購入数やDLデータ、ストリーミング再生データなどファンのコンテンツとのインタラクションが可視化出来ることが大きなメリットになっています。
トム・ヨークはこれまでもSpotifyなど音楽ストリーミングサービスが音楽ビジネスや新人発掘に悪影響を与えているとネット上で批判的な発言を繰り返し行なってきました。
■tomorrowsmodernboxes.com
http://tomorrowsmodernboxes.com/
■bittorrent Bundle
https://bundles.bittorrent.com/
今回の実験的リリース手法も成功といえるかもしれません。リリースから24時間が経過し、BitTorrent Bundleでのリリースは、すでに10万ダウンロードを超えました。現在でもその数は上昇し続け、執筆時27日13時には15万ダウンロードを突破しています。
英国で10万ダウンロードは、ゴールドディスク認定と同様になります(認定されるかは明らかではありません)。
BitTorrentでダウンロードするにはtorrentクライアント・アプリが必要になります。
BitTorrentバンドル配信システムは、BitTorrent社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーで、元海賊ラジオ局DJや「海賊のジレンマ – ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか」の著者、雑誌編集者の経歴を持つ、マット・メイソンが構築しました。
海賊のジレンマ ──ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか
BitTorrentoバンドル・システムは革新的な作品の販売手法として高い注目を集めています。2012年に開始して以来、Death Grips、パブリック・エネミー、マドンナ、デ・ラ・ソウル、Moby、Kaskade、DJ Shadow、ピクシーズといった著名アーティストやプロデューサーが活用し、作品の販売を行ってきました。
トム・ヨークとBitTorrentoの連携したリリース方法は、U2とアップルが実施した「Songs of Innocence」の無料配信から半月も経っていない中行われた、全く異なるアプローチです。アップルによる大規模配信からアルバムの削除サイトの立ち上げ、BitTorrentのファイルDLなど、テクノロジーを活用した音楽配信にもこれまでと違ったモデルが実現可能になっていることは、音楽ファンだけでなく、アーティストやマネージャー、レーベルにとっても、テクノロジーによって音楽体験がシフトチェンジする大きな可能性を示しています。