今アメリカではアナログレコードの人気がかつて無いほどほど盛り上がっています。今年アナログレコード売上枚数は前年比49%アップし、約800万枚が購入されていることが最新のデータで明らかになりました。
アナログの購入者の多くは若者で、特にインディーズロック好きが好んで購入しています。
ですが、アメリカでは今、アナログレコードの人気復活の影で深刻な問題が発生しています。それはプレス工場の稼働率。注文が多すぎるため注文を受けることが困難になり、機材の故障や資材の供給不足に毎日直面している状態が続いている現状を、ウォール・ストリート・ジャーナルがレポートしています。
1995年から2014年12月7日までのアナログレコード売上枚数
例えばプレス工場用のパーツ製造。コネチカット州ハムデンにあるRobert Roczynski氏の工場はアメリカでも数少なくなったアナログレコードのプレス工場向けの部品製造業者で、12人の従業員が残業で働きつづけています。アナログを平たく伸ばすスチール製鋳型の注文は2008年から3倍に伸びたといいます。
テネシー州ナッシュビルにあるアメリカ最大のアナログレコード・プレス工場「United Record Pressing」は、プレスマシンを増やしていますが、起業家からはアナログ製造に対して未だに大型の資金や信頼を得られていないのが現状です。投資家はアメリカの音楽売上のわずか2%でしかないアナログレコードの製造に大きな投資を行うことには関心を示していません。
プレス工場では、一時間で約125枚しかプレスできません。工場ではレコードレーベルからのニーズに応えるため、マシンを24時間体制で稼働させて製造量を増しています。その結果、マシンのメンテナンスや修理への支払いが増えるようになりました。
インディーズロックバンドThe War on Drugsや、ダフト・パンクなど人気アーティストのアナログレコードは注文量が伸び続け、またカラー盤や夜光盤などノベルティ用途のアナログレコードも、製造の工程を困難にしています。
そのため工場経営者は世界中でプレスマシンから探し出し、15000〜30000ドル(約178万〜356万円)で購入したり中古品を整備するなどしています。
アナログレコードの原材料となるポリ塩化ビニルコンパウンドを全米の工場向けに提供しているのは、カリフォルニア州ロングビーチの「Thai Plastic & Chemicals」です。なんと、この3人体制の工場は、全米の工場で使われるPVCコンパウンドの約90%を製造しています。
その他の問題には、アナログのマスター盤の製造機材不足、過酷な労働条件、若い技術者の育成と、アナログレコード復活を支えるこのニッチな業界への投資が深刻化しているのが現状です。
アナログレコードは、クリスマス商戦や毎年4月に行われる「レコード・ストア・デイ」を通じて、新しい音楽ファンを獲得しており、業界にとって必要不可欠になっています。またレアな音源の再発盤や、コレクション目的の限定盤など、音楽を手にすることが好きな音楽ファンにとっても、アナログレコードは音楽を購入するキッカケにもつながっていることを考えれば、このフォーマットへのニーズは今後数年は続くと予想されます。もっとも、この分野の復活を歓迎する人は少なくないが、なぜ今復活したかを議論することは消極的でもあります。なぜこのフォーマットが再注目され愛されているのかを分析し議論することが、将来的な音楽シーンの活性化へとつながっていくのではないでしょうか?
ソース
The Biggest Music Comeback of 2014: Vinyl Records(12/11 Wall Street Journal)
image by maren~ via Flickr