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アップルは音楽サーヴィスの強化に向けて、音楽ジャーナリストを求めているようです。

ロンドンのiTunesチームでは、「Editorial Producer」(編集プロデューサー)職の募集を開始したことが明らかになりました。

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アップルは今回の募集職種がフルタイムで、編集とプロデュース「経験豊かなライター」で「フリーランスの世界で密接なコンタクト情報」を持っている編集者を探しているようです。

募集要項には次のように書かれています。


iTunesではポップ・カルチャーに精通し音楽ジャーナリズムの専門性を持った編集プロデューサーを探しています。今回の職種はフルタイムで、業務時間は編集とプロデュース活動に従事します。編集業務では執筆、編集、さらにフリーランス・ライターのマネジメントを担当し、ビジネス及びコンテンツ担当者と共同で編集主体による販売プロモーションの方針を定義していきます。

アップルは今年に、2014年に買収した定額制音楽ストリーミング「Beats Music」をブランディングし直して、iTunesと連携させた新たなサービスとして開始すると言われています。このサービスは、世界的に広がる定額制音楽ストリーミングの分野においてSpotifyやDeezer、Rdioなど先行する企業の直接的競合になると言われています。

つまり新しいポジションはジャーナリストの経験に加えて、コンテンツ制作やプロモーションについて総合的に企画できる人を求めています。インタビューや特集記事を作るだけのライターに収まらない人材を求めていることからして、アップルが今後展開する音楽ビジネスではオリジナルコンテンツ制作に注力することが予想できます。

音楽ジャーナリズムとキュレーション

先日アップルがイギリスBBC Radio 1から最も人気の高いDJゼイン・ロウ(Zane Lowe)をスカウトしたことが明らかになったばかりです。詳細はわかっていませんが、彼はiTunes Radioの事業に取り組むと噂されています。LoweはBBCでは大物アーティストやプロデューサーの独占インタビューから、無名の新人アーティストの発掘まで、音楽を機械的ではなく目利き力で紹介してきたことが高く評価されてきた人物です。実際にアデルやエド・シーランといった英国一般人の間では無名だったアーティスト達を積極的に取り上げて、英国音楽シーンを活性化させることに貢献した1人とも言えます。

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これまでiTunesは音楽ジャーナリズムとは無縁の音楽ストアでした。iTunesの編集とは、どのアルバムを推しているか、またはiTunes独自のプロモーションなどを表すバナーをトップページに作ることに限られてきました。

競争相手となるSpotifyは、独自の編集チームを抱えて独自コンテンツの作成を行っています。エクスクルーシブなライブ・シリーズ「Spotify Session」や、ニルヴァーナやレッド・ツェッペリンなどの著名アーティストをフィーチャーした独自コンテンツ「Spotify Landmark」をプロデュースするなど、機械的なレコメンデーション以外でも人力なキュレーションも強化しています。

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via @jerrypulles

アップルのBeats Musicも元Pitchforkの編集長始め、名だたる編集者を集めたチームで、人力によるキュレーションを持ち味とするレコメンデーションやプレイリストを提供しています。

これまでダウンロードの世界では王様だったアップルとiTunesが、「音楽ジャーナリズム」という新しい要素をiTunesに取り込み、音楽との出会い方やアーティストとのつながりを拡張できるのか、アップルの次の動きに焦点が集まります。

ソース
Apple is hiring a music journalist to write original content for iTunes (2/23 Business Insider)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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