昨年末、世界最大のダンスミュージック・ストア「Beatport」が、音楽ストリーミングサーヴィスに乗り出すニュースが拡がりました。Beatportの親会社で、「Tomorrowland」「Electric Zoo」などを手掛けるEDM専門のイベントプロモーション企業「SFX Entertainment」は、ダンスミュージック・コミュニティで圧倒的な影響力を持つBeatportブランドを活用した新たなビジネスを展開して、プラットフォーム・ビジネスへシフトチェンジを図る計画です。
まずこれまで中心的な存在だったダンスミュージック・ストアは今後は「Beatport Pro」に名称を変更します。そして今後の中心はどうやら広告の入らない完全無料で無制限の音楽ストリーミング「Beatport」になるようです。
https://www.beatport.com/music
TechCrunchによると、新しいストリーミングサーヴィスはシンプルに「Beatport」という名称で、招待制のベータテストを開始しました。
Beatportのフォーカスは、知っている曲を探して再生することよりも、新しい音楽を見つけることに焦点を絞っているのが特徴のようです。トップページでは、フィーチャーアーティストの他に、チャート、テーマ別のプレイリスト、編集スタッフのピック、クラシック・トラックといった内容に分かれて表示されます。
全ての楽曲がフリーでストリーミング再生できます。これまでのストアに設置されていた120秒のサンプルではなく、フル尺での再生になります。
Beatportの特徴としては、音楽が継続して再生されることにあります。一つのトラックを再生することで、その曲が入っているアルバムやプレイリスト、チャートから曲が再生されるので、音楽ストリーミングサーヴィスで起こりがちな曲が終了して次の曲を探す手間を省いてくれます。
配信される楽曲はSpotifyなどで配信されていないトラックやリミックスが数多く含まれているのも特徴の一つです。Beatportで探したり聴いた曲やアルバムは、「Beatport Pro」と連携して直接購入することも可能です。
ではBeatportがどれだけSpotifyやRdio、Deezerやアップルなどと競い合えるのかが気になる人もいると思います。ですがBeatportは音楽ストリーミングとしてではなく、音楽ストアやメディア機能を兼ね備えた総合的なダンスミュージック・プラットフォームとしてファンとのつながりを強くして、コミュニティを成長させていく将来像を描いているに違いありません。そのため、SpotifyやRdio、アップルなどとは全く異なるビジネスモデルでゴールをイメージしているはず。
コミュニティが大きくなれば必然的に音楽を聴きたいファンも増大し、フェスティバルやイベントへと足を運びたくなるはず。そうなれば、「Tomorrowland」や「Electric Zoo」などEDMのメガブランドを運営するSFXにとってマネタイゼーションをリアルなイベントに設定することで収益化を拡大させることができるでしょう。
アーティストへの分配は?音質は?モバイルは?などBeatportに疑問を抱く人はいるでしょうし、実際これらに対する答えはTechCrunchはレポートしていないもの事実です。ですが、「ダンスミュージック」というセグメントされたジャンルに特化している点でファンをリアルからだけでなく、オンラインからも巻き込める可能性が高くなることを考えれば、アプローチもビジネスモデルも新しく、どれだけ伸びるのか本格始動するのがワクワクしてきます。Beatportの戦略は、急成長を続けるEDMシーンで増えつづけるファンをロイヤルなファンへと変えて音楽を聴き続けてもらうことに対する回答の一つと言えるのではないでしょうか?
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ソース
First Look At Beatport’s Free Dance Music Streaming Service (2/23 TechCrunch)