夏フェスのシーズンも落ち着いた頃かと思いますが、海外ビールのブランド「Bud Light」、と夏フェス、レコードレーベルの面白いパートナーシップの事例を見つけたので、ご紹介します。
海外ではダイエットコーラやAbsolutなどドリンクブランドによるボトルや缶のカスタムパッケージがプロモーション戦略として広がっています。
Bud Lightは夏の音楽体験とカルチャーをの熱気を伝える目的で、世界的に人気のDJ、Diploと、彼が運営するレーベルMad Decentが主催する夏フェスツアー「Mad Decent Block Party」と独占的なパートナーシップを結び、フェス参加者にアーティスト達がデザインした、カラフルでポップな限定Bud Light缶「Bud Light Festival Cans」を提供していきます。
Mad Decent Block Partyの会場では、Mad Decentのカスタムデザイン4作と、アーティストがデザインしたカスタムラベル27作の計31のデザイン缶が限定で発売されます。缶のデザインはBud Lightのインターナルのクリエイティブチームと、Vice Mediaのクリエイティブ・エージェンシーVirtue Worldwide、そしてMad Decentのデザインチームが担当しました。
7月31日から始まったMad Decent Block Party北米ツアーは18都市を周り、アウトドアステージで数多くのDJやアーティストが参加します。
Bud Lightは、缶のカスタムデザインのアイディアは、過去7年間のMad Decent Block Partyが音楽好きに届けてきた自然体で予想不可能な音楽体験がキッカケになったと説明しています。Mad Decent Block Partyとのパートナーシップは、Bud Lightがプロモーション戦略として今夏進める「Summer Bucket List」プログラムの一貫で、夏フェスやアウトドアイベント、スポーツイベントなど夏の特別な体験を共有できるBud Lightのミレニアル世代向けの大キャンペーン「#UpForWhatever」です。
HPの特殊技術でデザインをさらにカスタマイズ
Bud Lightは限定デザイン缶のレーベルでも、特別な体験をフェス参加者に感じてもらいたいと考え、HPと提携し、特別なプリント技術を導入しています。
従来のプリント技術で缶のレーベルを印刷する代わりに、今回Bud LightはHP Indigoデジタルプレス技術と、SmartSteam Mosaicアルゴリズムを採用しています。このアルゴリズムはBud Lightが設定したデザイン・パラメーターを細かく調節することができ、31個のデザインをベースになんと最大3100万通りのレーベルを缶に印刷することが可能になりました。この技術を使うことで、全てのカスタムデザイン缶がそれぞれ違うデザインに仕上がることができるのです。
この技術がブランドに使われたのは、アメリカでは最初の事例だそうです。
製造された20万缶には、20万通りの全て異なるデザインが施され、ユニークな体験を求める若者達、いわゆるミレニアル世代のニーズに答えてくれます。
フェスやライブに行った時、ビールを買うと茶色の瓶か銀の缶、またはプラスチックのコップに注がれて、ビールのブランドも体験も記憶に残りにくいですよね。ですが20万個の異なるデザインが印刷されたカスタム缶となると、友達とも楽しめますし、何よりもフェスやレーベルに更なるロイヤリティが湧きやすくなり、楽しい体験をSNSでも写真投稿もしたくなってきます。
店舗の棚に並ぶビールの缶や瓶のデザインを刷新することは、限定的とはいえ企業にとって大きなリスクとなりかねません。ですが音楽イベントと共に記憶に残る特別な体験を求めている消費者にとって、日常的な製品を見るよりも、非日常的なモノを目にする方を求めているはずです。
個性豊かなアーティストと予想不可能な音楽が揃い、カルチャーやトレンドに敏感な人達が集まるMad Decent Block Partyは、ミレニアル世代をターゲットとした体験型マーケティングにおいて非日常的な音楽体験を届ける絶好のパートナーです。ブランドが主導するのではなく、コンテンツの作り手(DiploとMad Decent)の世界観とファンにコミットして、どれだけユニークな体験を一緒に作れるかが、音楽マーケティングで求められているモデルと言えます。
Mad Decentを主催するDiploは、プロデューサーとしてM.I.A.のデビュー・アルバム制作に始まり、自身のプロジェクト「Major Lazer」や、Skrillexとのユニット「Jack U」、英ラジオBBC Radio 1のレジデンシーDJ、さらに世界中を飛び回ってDJ活動をする、世界で影響力の大きい人気の音楽プロデューサーです。
2005年に立ち上げたMad Decentは、過去にBaauerの「Harlem Shake」をリリースしたことで耳にした人も多いのではないでしょうか。Mad Decent Block Partyはフィラデルフィアのストリートパーティーとしてコミュニティレベルで始まったイベントが、徐々にレーベルのアーティストだけでなく、Diploの呼ぶユニークなアーティスト達も集まり、豪華なラインアップとなっていき、アメリカとカナダの都市で開催される人気の夏フェスツアーとなりました。
イベントとしては、メジャーなアーティストも参加する大規模なものになりました。しかし、家族のような雰囲気や一体感、予想不可能なエンターテインメント性は、規模が大きくなっても変わらずに残っていると評価が常に高く、もちろん話題性も豊富です。ファンを喜ばせるコンテンツ制作と関係構築の点は、EDMのトップDJとして認知されてるようになっても本質が変わらないDiploならではのアプローチと言えそうで、ロイヤリティを獲得したいブランドのマーケティングの考え方に最も近いDJなのかもしれません。
ソース
Here’s How Bud Light Designed 200,000 Different Cans for the Mad Decent Block Party(Adweek)