アップルは中国で定額制音楽配信サービス「Apple Music」を開始しました。3カ月の無料トライアル期間が付き、月額10元で好きな音楽が聴けるサービスではテイラー・スウィフトやエド・シーランなど世界的なアーティストに加えて、陳奕迅や李榮浩など中国圏で人気のアーティストも含まれています。
今回アップルが中国に進出したことは、双方にとって大きな一歩です。これまで中国ではアップルの音楽や映像サービスiTunes Moviesを使うことはできませんでした。今後はApple IDを使いストリーミング再生やBeats 1、プレイリストが楽しめるようになります。
アップルはまたApple Musicのファミリープランも提供します。月額15元で最大6人が個別のアカウントで利用できます。
話題になっているのはその価格。月額料金10元はアメリカドルで1.57ドル、日本円で190円と驚くほどの安さに設定されています。Apple Musicの日本価格が980円となっていることから、約1/5ほどになります。アップルはこれまでもアーティストを中心としたプロモーションで、音楽業界の味方というスタンスを意識した活動へを図っています。しかし、アップルが発表した中国の価格帯でどの程度のロイヤリティが分配されるのか、関心が高まります。
アップルは6月終わりにApple Musicを世界100カ国以上でスタートさせました。またアップルは中国の市場を重要視し、アップルストアの開設やiPhoneの販売など急に中国を意識した戦略に変わって来ています。
中国ではすでにTencentのQQ、BaiduのBaidu Music、Neteaseが運営を始めるなど競争の激しい市場です。CNBCはアナリストのコメントとして、Apple Musicが中国で競うにはまだまだハードルが高いと評価しています。ガートナーのリサーチディレクター、Sandy Shenによれば中国にはすでに「多すぎるほどのローカル企業が音楽ストリーミングサービスを提供している。ローカルユーザーが聴きたくて仕方がないコンテンツを独占的に獲得できなければ、この市場で成功することはそう簡単ではない」とApple Musicのユーザー獲得が難しいことを示唆します。
しかし中国でもデジタル音楽に対する国を挙げての取り組みも広がっています。これまで中国は、違法ダウンロードが非常に盛んに行われている国の一つとして知られてきました。その違法活動を撲滅する活動の一貫として、中国当局は音楽ストリーミングサービスにライセンス契約をしていない楽曲の利用を廃止する取り組みを始めました。
音楽ストリーミングサービスの可能性は今後ますます広がると考えられます。それは、この分野が短期間で音楽業界の新しい収入源として世界に広まっていった勢いが示しています。2014年はRIAAの調べによれば、音楽ストリーミングの売上は世界で29%増加して18億7000万ドルに成長した反面、トラックダウンロードは8.7%減少し25億8000万ドルでした。Apple Musicと競争する音楽ストリーミングサービス「Spotify」は世界で有料会員2000万人、アクティブユーザー7500万人以上を獲得しさらに成長しています。そのSpotifyも2008年からのサービス開始以来、アーティストや権利関係者たちに支払ったロイヤリティは30億ドルを超えるほど、違法ダウンロードがはびこっていた時代には実現不可能だった巨額の収益をクリエイターコミュニティにもたらしています。
ソース
Apple Music launches in China(Business Insider)
Apple Music heads to mainland China(CNBC)