ロンドンにある世界で最も有名なスタジオ「アビーロード・スタジオ」が、ヨーロッパで初めて音楽テクノロジーに特化したインキュベーターを設立しました。
インキュベーターの名前は「Abbey Road Red」。アビーロード・スタジオの事業の中に新たに立ち上げるイノベーション部門として活動します。インキュベーターでは起業家やリサーチャー、開発者の支援を目的としたヨーロッパ唯一の音楽テクノロジー専門インキュベーターと言われています。
アビーロード・スタジオの新たな取組みは、2012年にユニバーサル・ミュージック・グループがEMI買収に伴い、スタジオの運営権を獲得したことから進み始めた再編の一貫として進み始めたプロジェクトで、83年の歴史を持つスタジオがデジタル時代に向けた変革を加速しています。
Abbey Road Redへ最初に参加するスタートアップは「Titan Reality」となります。過去4年間、ステルス状態で活動してきたTitan Realityは空間を移動するオブジェを認識し、数百の楽器音を再現できるという謎の音楽デバイス「Pulse」を開発しています。
Abbey Road Redでは6月毎にスタートアップ3社増やしていく予定をしているとのこと。スタートアップはスタジオのエンジニアからの協力を得られるだけでなく、戦略アドバイスや財務関連のサポートを得ることができます。
Abbey Road Redの代表を務めるJon Eadesは、「面白いスタートアップが多数存在し、さらにアカデミックな分野での研究も多数ある。だが音楽に特化したインキュベーションの仕組みはこれまで存在していなかった」と述べ、長年の経験を活かしたインキュベーター設立はスタジオにとってごく自然なステップだったと言います。
Tital Realityの共同創業者Arny Arnoldは、アビーロード・スタジオからの支援は「高い技術を活用する私たちのようなプロジェクトにとって驚異的な動き」と表現し、「世界を代表する音楽専門家」が起業家の製品開発に関わって支援してくれると述べています。Pulseは3Dモーションキャプチャーと産業用ロボットと同類の物体認識技術を融合したオーディオコントローラーで、今年リリースする予定だそうです。
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— Abbey Road Studios (@AbbeyRoad) October 22, 2015
インキュベーションの発表会で紹介されたのは、この他に、人工知能で音楽を制作するソフトウェア「Jukedeck」、カサビアンのライブですでに実用もされている、ステージの様子を360度ビジュアルと音響でプロデュースする映像サービス会社VISUALISE CREATIVEのVRシステム「Visualise VR」が紹介されました。
またRodrigo of Rodrigo y Gabrielaにも活用された、あらゆる表面を楽器に擬似変換するデバイス「Mogees」、そしてミュージシャンのImogen Heapが開発に全面協力した、ジェスチャーで楽器やMidiデバイスを演奏できるグローブ型のコントローラー「Mi.Mu」がイノベーティブな新音楽テクノロジーのとしてAbbey Road Redから説明されました。
ユニバーサルミュージック・グループは2012年以来数百万ポンドをアビーロードには投資し、ビジネスの整備を行っています。
インキュベーションへの申し込みはすでにオープンしています。興味のある方はこちらをご覧ください。
ソース
Abbey Road sounds right for music technology start-ups(Financial Times)