世界で期待が高まるアデルの新作「25」が11月20日に世界同時リリースしました。前作「21」が異例のメガヒットを記録したため、今作も今年最も注目されるリリースであることに間違いはありません。
「25」のマーケティングで、アデルのチームが定額制音楽配信を使うかどうか、これまで音楽業界では密かに注目されてきました。
数週に渡って騒がれてきたこの話題ですが、「25」はSpotifyやApple Musicなど定額制音楽配信でリリースと同時に配信をしないという決断をアデルのチームは下しました。決定を伝えたタイミングも、リリースの24時間を切ったタイミングとで各サービスに伝えたとニューヨーク・タイムズがレポートしています。最終的な決定を下すまで議論していたか、単純にこのタイミングでの通達になったのか、いずれにしてもサービス側は直前まで調整で混乱していたはずですね。
ニューヨーク・タイムズによれば、定額制音楽配信でストリーミングしないという決定には、アデル本人も関与したと報告されています。
「25」のリリースは、前作「21」と同様にイギリスのインディーズレーベル「XL Recordings」が取り仕切っています。
アデルの約5年ぶりとなる新作は、今年最大のメガヒットとなると予想され、アメリカの音楽業界では初週売上だけで250万を突破すると予測されています。同じ規模での初週売上記録は、CDがまだ売れていた2000年に男性グループ「イン・シンク」(ジャスティン・ティンバーレイクがいたグループ)が240万枚を売り上げた「No Strings Attached」以来の記録を塗り替える可能性が騒がれています。
アデルはテイラー・スウィフトがSpotifyから楽曲を削除する以前から、SpotifyやDeezerなど定額制音楽配信には新作リリースから一定期間タイミングを遅らせてから配信する、「ウィンドウ」戦略をとっている代表的なアーティストです。
アデルが配信してこなかった前作の「21」は世界中で爆発的な大ヒットとなり、CDやダウンロードで記録的な売上を達成しました。
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アデルほどの国際的に知名度のあるアーティストがSpotifyやApple Musicで一定期間は配信をしないと決めたことは、世界中のアーティストやレーベル、マネジメント会社に対して、同じ決断が成功につながる強いメッセージを送ることを意味しています。
しかしこれを歓迎するかどうかは別の話になりそうです。アデル(やテイラー・スウィフト)ほどの人気も実績もあるアーティストやレーベルは世界では極わずか。アデルと同じ決定をしたからといって、結果に繋がる可能性は生まれにくいのも現状です。
アデルの決定によって一つはっきりしたことは、今後アーティスト達やレーベルオーナー、マネジャー達は、定額制音楽配信で「配信するか、しないのか」の経営判断を常に抱えてマーケティング戦略を考えることが絶対条件になるということです。
配信しなければ、CDやダウンロードをもっと売れるかもしれない。しかし定額制音楽配信と協力すれば、彼らのデータやプラットフォームを活用して的確なデジタル戦略を組むことも出来ます。
この難しい結果にどう向き合うのかも、これから定額制音楽配信が日本を含む世界で普及する上で重要なポイントになります。今後に期待したいことは、将来的にアーティスト自らがこの決定を下す存在になっていくことが、ユーザーの音楽の聴き方に対して一番影響力が大きいのではと感じています。
アデル公式サイト
http://adele.hostess.co.jp/
ソース
Adele Is Said to Reject Streaming for ‘25’ (NYTimes)