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アムステルダムに拠点を置き、クリエイターたちに人気のクラウド型ファイル転送サービス「WeTransfer」は、イギリス人の人気DJ、ジャイルス・ピーターソンがクリエイティブ・ディレクターに就任したことを発表し、音楽やアート、デザイン分野のクリエイターコミュニティと密接な関係を切り開いていくことを目指します。

ジャイルス・ピーターソンはWeTransferブランドのマーケティングおよび編集プロジェクトに携わり、CMOのダミアン・ブラッドフィールド(Damian Bradfield)と共にクリエイターに向けたクリエイティブ戦略を立案する役割を担います。

30年以上の音楽キャリアを誇り、世界で最も影響力のあるDJの一人であるジャイルス・ピーターソン。イギリスのBBC 6 Musicでは彼がDJを務める音楽番組「WORLDWIDE」が毎週放送され、ジャズやソウル、ヒップホップ、ダンスミュージックなどジャンルを跨いで世界中のアーティストたちをいち早く取り上げプレイする彼の哲学は、これまで数多くのキープレーヤーたちがグローバルな存在になるキッカケを作るほど、現代の音楽シーンに与えた影響は少なくないでしょう。

ラジオやDJ、彼のレーベル「Brownswood Recordings」からの作品に加えて、日本でも開催される音楽イベント「WORLDWIDE SESSION」など、これまで数多くの来日イベントをこなし、さらにDJの松浦俊夫さんや沖野修也さんはじめSoul&”Pimp” Sessionsや最近ではANCHORSONGまで日本人アーティストとのつながりも深いこともあり、すでにお馴染みの人も多いはずです。そして、長年のキャリアにも関わらず、国境を超えた音楽キュレーションとアーティストに対するリスペクトを常に持ち続ける姿勢に世界の音楽ファンから共感を呼んでいます(筆者も15年以上ジャイルス・ピーターソンのラジオ番組は聴き続け録音しているほどのフォロワーです)。

WeTransferでの具体的な役割としては、ライブイベントのキュレーションや映像プロジェクトのディレクション、さらに音楽コンテンツのパートナーシップなどが含まれます。

最初のプロジェクトでは、ジャイルス・ピーターソンとWeTransferは彼のキューバでのレコーディングセッション体験をベースにした短編ドキュメンタリーを制作していきます。現在、変革期の真っ只中にあるキューバにおいて、インターネットやテクノロジー、情報といった西側諸国では当たり前の要素に触れること無く独自に成長してきたクリエイティブシーンの進化に迫る内容とのことです。

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2009年にBas BeerensとNaldenによって創業されたWeTransferは、画像や音楽、映像など容量の多いデータの転送の作業を簡単に行えるシンプルさを売りにしたファイル転送サービスで、現在世界8500万人以上のユーザーに利用されています。最大2GBのファイルは無料で、WeTransfer Plusに参加すると20GBのファイル転送や100GBのクラウドスペースが利用できるサービスです。

クリエイティブコミュニティを支援するサービスに、クリエイターを支援してきたキュレーターやDJ、プロデューサーなどさまざまな顔を持つジャイルス・ピーターソンが協力する意味合いは、サービスの方向性を示す上で重要な大きく、またテクノロジーとアーティストを結びつけるという現代の創作活動に欠かせない「考え方」を強力に後押ししてくれそうです。また楽器やデバイスなどパフォーマンスに特化したハードウェアでなく、創作に重要なクラウドサービスにDJがコミットしてくれることも、アイデアを刺激しそうな予感がします。

ソース
New campaign: June 23, 2016(WeTransfer)
Gilles Peterson Twitter(@gillespeterson) / Facebook / Instagram


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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