世界的なヒットを生み出したヒップホップレーベル「デフ・ジャム・レコーディングス」の共同創業者で起業家、活動家でもあるラッセル・シモンズ(Russell Simmons)が2013年に立ち上げた、ユースカルチャー専門の動画メディア会社「All Def Digital」が、最新の資金調達ラウンドで1000万ドル(約10.5億円)を新規調達したことを発表しました。
1ドル:105円換算
シリーズBのラウンドは、ゲーム業界のYouTuber向けマルチチャンネルネットワークMachinimaの会長兼投資家Allen DeBevoise率いるVCのThird Wave Digital Partnersがリードし、グローバル広告グループWPPの投資部門WPP Ventures、シリコンバレー有数のVCでもあるAndreessen Horowitz、そしてシリーズAラウンドに参加したVCのGreycroft PartnersとAdvancit Capitalが参加しています。
All Def Digitalがこれまで調達した資金はこれで1800万ドル(約18億円)となります。
ラッセル・シモンズは、ヒップホップ好きなら一度は名前は聞いたことがあるかと思います。LL Cool Jやビースティ・ボーイズ、パブリック・エナミー、EPMDなどヒップホップを代表するレーベル「デフ・ジャム・レコーディング」の立ち上げに関わった、音楽史における重要人物の一人。もう一人の共同創業者リック・ルービンは、敏腕プロデューサーとして現在も音楽制作の領域では引く手あまたの人物。アデルの「25」やカニエ・ウェストの「The Life of Pablo」、ジェイムス・ブレイクの「The Colour in Anything」までポップ、ラップ、エレクトロニックと様々なアーティストと仕事をしています。
All Def Digital(ADD)のビジネスは、YouTubeやオンラインで注目される新進気鋭のタレントやアーティスト、映像監督、脚本家たちを起用し、オリジナルコンテンツを制作、ADDが運営するYouTubeチャンネルなどのソーシャルチャンネルやテレビ、ライブイベント、そして企業向けのブランドパートナーシップを通じて配信するという、メディアとマーケティング双方の機能を持つ、ソーシャル時代に生まれたクリエイティブエージェンシーです。ADDが手掛けるブランドパートナーシップでは、これまでFOXやユニバーサル・ピクチャーズなど映画スタジオから日産、シボレーなど自動車メーカーまで、デジタルプラットフォームを通じたブランディング力アップの取り組みにコンテンツ制作で携わっています
ADDが目指す次の戦略は、クロスプラットフォームでの配信の強化、そしてオーディエンス獲得へ注力しつつ、音楽やコメディ、スポーツ、ニュースなどのオリジナルコンテンツ制作への投資、そして企業のブランディング目的で制作されるブランデッド・エンターテイメントとスポンサーシップの拡大です。
オリジナルコンテンツ制作の領域で、ADDはすでにSpotifyやケーブルテレビ局のHBO、Facebook向けのコンテンツ制作と配信の準備を始めています。Spotifyとはすでにオリジナルのヒップホップ・リアリティビデオシリーズ「Rush Hour」の配信で契約を結んでおり、定額制音楽配信サービスが進出し始めた動画配信にもいち早く着手している手広さは注目ですね。
その他にはスヌープ・ドッグをフィーチャーしたオリジナル動画コンテンツシリーズ「All Def Comedy Roast」が、スヌープが運営する大麻ライフスタイル・メディア会社のMerry Janeとのコラボレーションで制作されます。今年後半に配信が予定される同シリーズはSNSのプラットフォームに加えてFacebook Liveを使って配信する契約が既に締結されています。
All Def Digital社長兼CEOのSanjay Sharmaは声明文で「ミレニアル世代やZ世代は歴史上で最もデモグラ的に多様化して、影響力が強く、既存のメディアでは非常にリーチしにくい層です」とADDのマルチプラットフォーム配信戦略の狙いについて答えています。
ソース
Russell Simmons’ All Def Digital Raises $10 Million(Variety)