世界のインディーズ・レーベルやディストリビューターのデジタル権利団体「Merlin」は、Spotify Japanにてライセンシング&レーベルリレーションズ・ディレクターや、アーティスト&レーベルマーケティングの責任者を努めた野本晶氏が、Merlin Japanのゼネラルマネージャーに就任したことを発表した。

またMerlinは、日本の音楽市場における活動の場を拡げるため、日本支社となるMerlin Japan株式会社も設立する。

Merlinは世界57カ国で2万以上のインディーズレーベルやディストリビューターによるビジネスネットワークを統括する最大の非営利団体で、音楽ストリーミングやデジタルサービスに対しての複雑なライセンス契約の交渉から、メンバー企業への売上の還元、利益拡大に向けたさまざまな取り組み、レーベルへの情報提供を行う。

特に音楽ストリーミングの世界的普及によって、Merlinのメンバー企業の売上が世界各地で増加している。2008年の設立からレーベルへの還元額は2018年6月で15億ドルにのぼる。現在では世界のデジタル音楽市場において、ユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージックのメジャーレーベル3社に次いで重要なインディーズレーベルの代表団体である。

Merlinの日本メンバーの売上は200%アップ

Merlinは2016年10月に日本オフィスを設立した。2018年10月にはMerlinに参加する日本のメンバー企業の売上が前年比で200%以上だった。

就任に際して野本氏は次のように答えている。

音楽ストリーミングサービスによって、アーティストやレーベルは世界中のファンとより簡単につながることが出来るようになりました。日本もこのトレンドにおいて例外ではなく、むしろ日本のレーベルにとって所有からアクセスに変化しつつあるこのビジネス機会を拡大する大きなチャンスだと思っています。この変化の一部を担えることをうれしく思っています。またマーリンメンバーのみなさんと共に新しい時代を創ることが楽しみです

日本オフィスの体制では、2016年からMerlinの日本拠点の立ち上げに携わり、代表を努めてきた谷口元氏は退任となる。また日本拠点設立からのメンバーであるヒル薫子氏が新たにヘッド・オブ・メンバーサービスに任命され、音楽権利とライセンシングの専門知識提供など、より広範な活動に注力する。

MerlinのCEOを務めるチャールズ・カルダス(Charles Caldas)は、日本の音楽シーンとMerlin Japanについてこのように答えた。

Akiraをチームの一員として迎えられることを大変うれしく思っています。そしてKaorukoの更なるビジネスへの貢献に期待します。彼らの無比である経験は、消費者が音楽ストリーミングを選びはじめた日本におけるMerlinメンバーシップの拡大と、また我々の長期にわたる日本地域へのコミットメントを推し進めてゆくことでしょう。

また、マーケットの大きな転換期において、我々の日本スタッフは、Merlinの世界各地から参加するレーベルやディストリビューターにとって、考えうる最良の代理人となります。彼らほど日本のデジタル音楽市場を理解するスタッフはいないと考えています。

Merlinを日本で立ち上げることに大きく貢献してくれた谷口元氏にも言及したく思います。Kaorukoとともに2016年より要職を務めてくれました。彼の更なる成功を祈っていますし、日本市場を活気づける存在でありつづけることと期待しています

関連記事:  「グローバルインディーズの時代は既に始まっている」音楽ストリーミングとコンテンツ輸出で急成長する「Merlin」が注力する海外展開

Merlinが開拓するグローバルインディーズの世界

音楽ストリーミング市場の拡大は、インディーズレーベルで楽曲を配信するアーティストたちに対して、新しい音楽市場の開拓や、マネタイゼーションの選択肢拡大、楽曲配信の自由を実現させてきた。そして、音楽ストリーミングによってアーティストやレーベルは、これまで現地のディストリビューションやパートナーとの契約が必要だった音楽の流通やプロモーションの手法が一変して、以前ではアクセス不可能だった国や地域でもリスナーを見つけることができるようになり、本格的にグローバルなインディーズの時代が世界的に始まっている。

日本国内でも音楽ストリーミングが徐々に浸透してきたが、今後は海外でのストリーミングからの売上が伸びる日本のインディーズレーベルも現れる可能性が高く、これからは北欧だけでなく、中国や東南アジア、ラテンアメリカ、インド、アフリカといった地域でストリーミングサービスに配信するレーベルからの需要が高まるはずだ。

Merlinは、メジャーレーベルが行っている重要な音楽市場への参入やプラットフォームとの契約を実現することで、インディーズレーベルやディストリビューターに利益を還元する。今後は世界に展開したいレーベルが増える一方、海外のストリーミングサービスとの最適なライセンス契約や、不利益にならないための交渉はますます複雑化するため、Merlinのようなインディーズの業界団体の存在感は高まるだろう。Merlin以外にもIMPALA、AIM、PRSといったレーベルやアーティストの権利を保護しつつ利益拡大に務める業界団体が世界にはあり、彼らの活動がグローバル化する音楽ストリーミング市場ではますます重要になっていく。

source:
Merlin
Merlin Japan問い合わせ info_jp@merlinnetwork.org (日本語)

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
取材依頼、記事執筆、海外向け音楽コンサルティングなどお仕事については「お問い合わせ」またはFacebookからご連絡のほど宜しくお願い致します。

  • プロフィール
  • お問い合わせ