ソニーは、日本以外の音楽事業と音楽出版事業の中核を統合し、新しい企業グループ「ソニーミュージック・グループ」を設立する。
この大規模な組織再編により、世界展開するソニーミュージック・エンタテインメントと、音楽業界最大の音楽出版社のソニー/ATVが新会社に統合される。新会社設立後も、2社はそれぞれ別会社として経営は続けていく。
日本の音楽事業運営会社である株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントは再編の影響を受けず現状の経営体制を継続する。
今回の再編は音楽ビジネスメディアのMusic Business Worldwideが独自に入手した情報によって明らかになった。MBWよれば、ソニーミュージック・グループは8月1日から始動する。新会社のCEOは、ソニーミュージック・エンタテインメントのロブ・ストリンガーCEOが兼務する。
今回の再編を前に、ソニーミュージックは音楽出版事業を運営するソニー/ATVの新たな会長兼CEOにジョン・プラットが今年4月に就任した。プラットは就任以前は、ライバルのワーナーチャペルでCEOを務めていたが、EMIミュージックパブリッシング時代の上司であり、3月まで長年ソニー/ATVのCEOを務めていたマーティン・バンディアの後を引き継いでいる。
音楽業界の中では、ソニーミュージック以外のメジャーレコード会社はすでにグループ経営で事業を展開している。
長い歴史の中で何度も再編と買収を繰り返しながら、ユニバーサル・ミュージックグループと、ワーナーミュージック・グループでは音楽事業と音楽出版事業をグループ化してきた。現在ユニバーサルミュージック・グループはフランスのメディア企業ヴィヴェンディの子会社でもある。
ソニーミュージックの音楽事業は今、サブスクリプション型音楽ストリーミングが最大の収益源となっている。最近の業績でもそれは顕著だ。ソニーが今年4月に発表した2018年期通年の決算によれば、音楽分野全体での売上高は8075億円、音楽事業の売上高は4269億円でその中でストリーミングからの売上高は2275億円だった。
音楽事業の売上が前年からほぼ横ばいだった(2017年度は4470億円)にもかかわらず、音楽ストリーミングの売上高は1974億円から15.2%アップしており、フィジカル音楽とダウンロードの売上が低迷する中、好調な成長を見せていた。
同決算報告書では2019年度の見通しとして、「音楽制作及び音楽出版におけるストリーミング配信売上の増加」と、「音楽制作におけるパッケージメディア及びデジタルダウンロードの減収」が挙げられている。
新会社設立の目的は、ソニーミュージックが音楽グループ間のシナジーを最大化させることで、グローバル規模で音楽ストリーミング市場や新世代アーティストに対して音楽事業と音楽出版事業の双方の領域から取り組むこととなるはずだろう。ソニーミュージックと契約するアーティストや配信契約するアーティストのストリーミングからの利益拡大を目指すだけでなく、作曲家の音楽出版からの収益拡大や、世界規模での音楽マーケティングの展開を実施しやすくすることなど、アーティストや作曲家に優しいエコシステムを提供していくというのがソニーミュージックが新しい体制で狙う音楽の未来ではないかと考えられる。
ソニーミュージックを抜いて、現在音楽事業の売上世界一を誇るユニバーサルミュージックには近年、企業買収の噂が耐えない。もしユニバーサルミュージックの売却が実現すれば、今後の事態を予想して別会社に移るアーティストが出てくるかもしれないが、その行き先としてソニーミュージックとなることもすでに考えているのかもしれない。