音楽サブスクリプションで世界最大手のSpotifyが、サービスをロシアで開始しました。加えて、Spotifyはヨーロッパ13カ国にも進出しました。これでSpotifyがサービスを提供する国は、世界92カ国に拡大しました。

ロシアでは、Spotifyの月額料金は169ルーブル。日本円に換算すると252円、ドルでは2.35ドルです。ロシアの他には、アルバニア、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、スロベニア、ウクライナで、サービスをローンチしました。

Spotifyの海外展開戦略と投資の狙いは、音楽ストリーミングが盛り上がる成長市場に照準を定めています。また、Spotifyは近年、ロシアと韓国へ進出を狙ってきたことから、今後は韓国への進出に期待が高まります。

過去数年を振り返ると、2019年2月に、インドへ進出。2018年は、中東とアフリカ大陸合わせて14カ国でサービスを始めています。

市場展開の規模で比べると、ロシアがSpotifyローンチ92番目の国となりましたが、競合するApple Musicは167カ国で展開しています。

Spotify_Russia_Playlists

ロシアの音楽ストリーミング市場は現在、世界で17番目に大きな市場で、2030年までには世界トップ10入りすると言われるほど、世界的な成長市場となることが予想されています。

ただ、COVID-19のよる影響で、成長速度も遅れると思われます。

ストリーミング成長市場の特性の一つは、自国発のサービスが強いこと。ロシア人の音楽ファンの87%が、音楽ストリーミングサービスをすでに使っているという調査結果も出ていますが、利用者を多く獲得しているのは、自国産のサービスです。Spotifyがロシアで利用者を伸ばすには、ローカルのストリーミングとの厳しい戦いが予想されます。

ロシアでは、ローカルの音楽ストリーミングサービスのYandex Musicと、VKが運営するBoomが人気です。そして、Apple Musicも2015年に上陸して以来、長年サービスを運営してきました。

ストリーミング成長市場でシェアを伸ばすためには、サブスクリプション(有料会員)にコンバートするためのユーザー獲得コストが、成長において重要になってきますので、フリーのトライアルや、バンドル料金などを中長期的に展開することとなるのではないでしょうか。音楽ストリーミングが市場で普及するには、どのサービスでも時間を要します。

音楽ビジネスの側面はどのように変わるでしょうか? Spotifyは、すでにロシア国内のレーベルとパートナー契約で合意しています。また、ロシアの音楽ディストリビューターとも連携していくことも明らかになっています。プラットフォームとしての強みを活かして、ロシア人アーティストやレーベルのグローバル進出を、Spotifyが支援していこうという意図が見えてきます。

今後は、ロシアでの楽曲配信も、ディストリビューターやレーベルを通じて、可能になっていきますので、コラボレーターを探したい日本人アーティストや、ロシア市場を狙いたい日本のレーベルは、チャンスが広がる可能性もあります。

ロシア及び東ヨーロッパ地域でのサービスローンチに併せて、200以上のプレイリストが新しく始まります。ロシアだけでも100以上のプレイリストが新たに展開され、「New Music Friday Russia」など新曲中心のエディトリアル・プレイリストから、「Discover Weekly」「Release Rader」「Daily Mix」などのアルゴリズム・プレイリストも開始します。同時に、グローバルチャートとバイラルチャートもロシア版が公開されています。

ストリーミング市場とオーディエンスが拡大することは、これからの才能を持ったアーティストや、世界市場を見据えるレーベルにとって、市場へのアクセス方法を確保する意味で重要となってきます。土地勘のない市場で、新しいオーディエンスを開拓する時間と労力を、Spotifyから提供されるデータによって効率化できるのは、予算の少ない中小規模のレーベルにとって、またはインディペンデントアーティストにとってもプラスになるはずです。

Spotifyにとっては、ロシア市場への展開は、全世界のSpotify有料利用者の獲得速度を維持するための戦略という意味で重要な市場です。今後も継続されるストリーミング成長市場への投資と様々な施策を行うSpotifyの戦略上、ロシアを外すことはできません。これから数年で、欧米の音楽市場はサブスクリプション市場がさらに成熟し、新規利用者の獲得速度が鈍化することが予想される中、グローバルでの成長が企業プライオリティのSpotifyは、音楽プラットフォームが成熟していない、ストリーミング成長市場への投資を続けるのは当然の選択と言えるでしょう。

source:
Spotify Is Now Available in Russia, Croatia, Ukraine, and 10 Other European Markets

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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