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ミュージシャンやレーベル、音楽業界向けのデータ共有ツールを開発する、カナダの音楽スタートアップ「Byta」(ビータ)は、シード投資ラウンドで1900万カナダ・ドル(約1.5億円)の資金を調達しました。

Byta

Bytaへの出資ラウンドは、カナダ・メディア・ファンド(CMF)がリードして、個人投資家が参加しました。

投資家の中には、90年代のインディーロックバンド、Pavementのギタリストとして知られるスコット・カンバーグ (Scott Kannberg)が個人投資家として、投資を行いました。Bytaユーザーでもあるカンバーグは「Bytaを使えば、音楽をバンドメンバーやレーベル、プロモーター、音楽ジャーナリスト、DJにワンクリックで共有できる。ここまで簡単で安定したデジタルツールは見たことがなく、それがBytaに私が投資した理由です」と述べています。

Bytaを活用しているのは、メジャーレコード会社やインディーレーベルから、インディーアーティストまで、幅広い層が利用しています。

登録も利用も、無料から始められ、フリーミアムモデルで運営されており、アーティストから企業をサポートしています。

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Bytaは2015年に起業家のマーク・ブラウン(Marc Brown)が設立した、音楽専門のサービスです。同社は、これまでどこからも資金提供を受けておらず、創業者たちが自力で開発を続けてきました。

マーク・ブラウンは、1990年代から2000年代にかけて、イギリスのインディー音楽業界の時代を築いた経営者の一人、アラン・マッギー(Alan McGee)の元で、インディーズレーベルのクリエイション・レコーズとPoptonesで、A&Rやラジオプラガーとして働くなど、業界経験が長く、インディーアーティストの成長を間近で見てきました。

音楽作業の効率化アップ

Bytaが解決してくれる、音楽業界の課題とは何でしょうか? それは、リリース前の音楽ストリーミングのデータや、コラボレーションするための楽曲データを、安全かつ簡単に共有するための方法です。

ニッチな領域のツールと思われがちですが、音楽ストリーミング用のデータ共有作業と再生を効率化アップさせるためのツールは、音楽業界でも多くありません。また、HaulixPromoJukeBoxなど、現行の音楽向け共有ツールも、機能が制限的で、現代の再生環境に最適化されていません。さらに、SpotifyやApple Musicなどプラットフォームや、音楽ディストリビューターでも、こうしたツールは、提供されておらず、勿論、日本の音楽市場には存在しないツールでした。

オーディオデータ共有の観点から、Bytaが競合するサービスは、DropboxやBox、WeTransfer、さらにGoogle Driveなど、一般的なファイル共有サービスです。しかし、これらのサービスは、楽曲データに特化しているわけではなく、完全にアーティスト・フレンドリーなサービスとは言えません。

Bytaが狙うのは、増え続けるデータ共有の作業工数を改善したいインディーアーティストやマネージャー、音楽制作の関係者、レコードレーベルです。

音楽ストリーミングが世界的に普及するにつれ、音楽業界は、データ共有の管理作業という課題に、日々追われています。現在、音楽ストリーミングサービスで配信するアーティストの楽曲数は増加傾向にあり、Spotifyでは、毎日約4万曲がプラットフォームにアップロードされるほどまで、取り扱う曲数が増えています。

このような中、多くのアーティストやプロデューサー、レコード会社のマーケティング担当者は、リリース前の音楽データを、プライベートで安全かつ効率よく共有する方法に試行錯誤しています。

また、データ共有先が増えれば増えるほど、アクセス権やパスワードの設定や、連絡先の確認作業が発生して、作業工数も増えていきます

Bytaは、海外のプレイリストにピッチする作業や、ジャーナリストやメディアへ先行で楽曲を共有する作業、アーティスト同士がコラボレーションする際の共有作業、レーベル内で事前にデモを共有する作業と、様々な用途で活用できます。

音楽共有に特化した機能

例えばBytaの機能では、ストリーミングとダウンロードの共有に、リンク一つを作成するだけで、楽曲にアクセスできます。普通であれば、ストリーミングとダウンロード用にリンクが2つ作成せねばならず、Bytaでは作業の手間が縮小できます。

またBytaでは、共有連絡先のリスト管理機能も提供します。エクセルやGoogle Sheetsを探したり、更新する作業も必要無く、共有したい相手の連絡先をByta内で管理できるのも、特徴です。

さらに、大切な楽曲が、リリース前にリークされたり、不適切な人に届かないよう、楽曲共有のセキュリティ管理機能も、柔軟に対応しています。楽曲の配信終了日やパスワードを設定したり、ウォーターマーク付きの楽曲データを共有しつつ、誰がデータにアクセスしたかのレポート機能も備えています。

Bytaによって、解決する課題は、データ共有の複雑性だけにとどまりません。

面倒なデータ共有の作業工数と、複雑化するセキュリティ対応とリスク管理の方法を削減することによって、より多くの時間をクリエイティブな音楽制作や、マーケティングのプランニングに費やせるという、自由な時間に繋がるため、Bytaは音楽業界の働き方改革を促進するためのツールでもあると云えます。

作業環境を効率化して、スピーディーにデータ共有やコラボレーション、プランニングを進めていくアプローチは、コロナ禍によってオンライン中心の作業が増える音楽業界において、今後さらに必要とされ、進化し続けるでしょう。

音楽ファーストなツールはニッチな領域ではあるが、需要の高まる音楽ストリーミングや、アーティスト同士のコラボレーション・プロジェクトの増加、プレイリストやインフルエンサーへのピッチングを考えた場合、作業効率アップを実現するためのツールは、可能性が大きいのです。そして、すでにIPOしているDropbox、Box、Alphabetが、音楽やアートというニッチな領域に注力するとは今後も考えにくく、音楽系スタートアップから、音楽業界やクリエイターの問題点を改善する、将来性と価値ある製品を生み出す機会は十分にあると云えます。

新型コロナウイルスの影響で、リモートワーク環境を整備するアーティストやレーベルにとって、Bytaのようなツールを上手く活用することは、作業時間の大幅の削減と、創作活用の効率アップを実現する方法の一つとして検討されるべきでしょう。

source:
Byta
“Announcing our $1.9m CAD Seed Round Led by the Canada Media Fund” (Byta)
Byta, the private music sharing service for pre-releases and more, raises seed round (TechCrunch)

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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