新型コロナウイルスは、音楽制作の考え方を変え始めています。レコーディングスタジオやリハーサルスタジオの運営が止まり、大人数で集まることが制限される中、デジタルへの移行が早かったアーティストやプロデューサーは、リモートコラボレーションやリモートセッションで新曲を作り方法に取り組み始めており、コロナウイルス影響下でも、新曲を配信し続け、音楽ストリーミングでのチャンスを掴んでいます。

この流れは、楽曲制作の領域に留まらず、作曲家向けサービスにも広がっています。コロナ以降、楽曲を作りたいプロの作曲家同士を繋ぐサービスから、ビジネスチャンスが生まれようとしています。

音楽テクノロジーに強いことで知られる、独立系音楽出版社の大手のBMGは、アーティストや作曲家、プロデューサーが、自身の楽曲やアイデアをピッチできる機能を、自社の作曲家用アプリ「myBMG」に追加しました。

ピッチ機能は「ウォッチリスト」と呼ばれ、アーティストに楽曲を採用してもらいたい、新進気鋭の作曲家は、BMGが手掛けるプロジェクトへ先行でピッチしたり、レーベルのA&Rや、アイデアを探している作曲家に、いち早く存在を知ってもらうメリットを生む機能となっています。

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myBMGアプリからピッチできる音楽レーベルは、アメリカに拠点を置くアリスタ・レコードアトランティック・レコードキャピトルレコードコロムビア・レコードRCAレコードリパブリック・レコード、オーストラリアのユニバーサルミュージック、イギリスのワーナーミュージックUK、ドイツのソニーミュージック、韓国のSM Entertainment、日本のavexが参加しています。

BMGの仕組みは、新型コロナが収束した後でも、自宅で音楽制作を続けながら、ビジネスチャンスを拡大できる、作曲家にとっての新しい仕事のスタイルとも云えるでしょう。

リモート環境から、業界トップレベルのアーティストや作曲家、プロデューサー、レーベルのA&Rに認めてもらうチャンスが広がり、結果的に、作曲家が得られるライセンス収入や、新しいプロジェクトに参加できる機会など、キャリアアップに繋がります。

新型コロナの影響によって、アーティストや作曲家、レーベルにとっては、スタジオでセッションしたり、作曲家キャンプが開催できないといった、リアルな制限によって、クリエイティブな活動を維持できなくなることは、作曲家コミュニティにとって、大きな問題です。

こうした中、myBMGアプリのウォッチリストは、可能性ある作曲家を発掘するA&Rツールとして、作曲家同士を結びつけるマッチングツールとして、機能します。

BMG_Watchlist_features

アーティストのコラボレーションを、効率的かつスピーディーに見つける選択肢を広げられるはずです。また、楽曲制作と配信までの時間を短縮するツールとしても効果を発揮できそうです。

BMGは当初、ウォッチリスト機能を2020年後半にリリース予定にしていました。しかし、コロナウイルスの影響で今春にリリースを早めました。BMGは、コロナ以降も、アプリが作曲家同士の個人的な関係性を置き換える訳ではないと強調しています。

BMGが契約する作曲家・アーティストには、グラミー賞ノミネート歴のある、若手アーティストのジェシー・レイエス(Jessie Reyez)や、ビクトリア・モネー(Victoria Monet)、ジェイソン・エビガン(Jason Evigan)、「Despacito」の作曲家として知られるエリカ・エンダー(Erika Ender)、イギリスの音楽チャート1位を何度も取っているカミール・パーセル(Camille Purcell)など、ストリーミングで上位を占める楽曲を手掛けてきた、人気クリエイターが数多く名を連ねています。

BMGのCTO、セバスチアン・ヘンツシェル(Sebastian Hentzschel)は、「現在の危機的状況において、アーティストと作曲家にはあらゆる支援が必要です。BGMのチームは直ぐに作業スケジュールを速め、ウォッチリスト機能の統合を進めてきました」と語っています。

ヘンツシェルはmyBMGがもたらす効果は、音楽業界が変わらなければいけない、将来への課題に対する答えだと話しています。「BMGは、業界でいち早く、音楽出版のクライアント向けにオンラインポータルを提供してきました。今後の音楽ビジネスの構造において、高い透明性と、ユーザーフレンドリーな環境が求められることを、私達が重要視した結果です」

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海外では、音楽出版の業界は、ライセンス契約の多様化と、音楽ストリーミングのグローバル化によって、新しいビジネスチャンスとして注目が高まっています。その一方で、収入やキャリアを得るチャンスが広がるメリットが大きくなっており、ビジネス同士の競争の激化や、契約問題の複雑化なども、課題として指摘されています。

作曲家が収入を得られる手段をいかに広げるかは、音楽業界全体が改善すべき課題の一つです。これに対応するための手段の一つが、BMGのようなデジタルツールやビジネスサポートなど、作曲家サービスやマーケティングサービスを提供する流れが、独立系音楽出版社を中心に広がっています。

音楽出版の世界的トレンドから考えた時、日本の音楽業界で多用される「タイアップ」や、楽曲使用料が支払われない仕組みと契約は問題で、すでに時代遅れとなっています。海外では、こうしたディールを提案する音楽出版社やエージェントとは仕事をしないように注意を促す人も多く、インディー系作曲家が搾取されないように、契約や収益性の透明性を高めて、ライセンス収入を得ながら、キャリアアップを支援しようとする動きが、音楽出版業界各社で生まれています。

source:
myBMG
BMG opens up its app to songwriters and artists to create new hit songs

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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