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音楽をネットやSNSで自由に共有できるプラットフォーム「SoundCloud」が、音楽業界最大のレコード会社ユニバーサルミュージック・グループと、音楽出版会社ユニバーサルミュージック・パブリッシングとライセンス契約で合意しました。

契約締結によって、ユニバーサルミュージックはSoundCloudの広告プログラム「On SoundCloud」で収益を上げることが可能になります。SoundCloudは、メジャーレーベルの音源を使用するライセンスを手に入れます。

OnSoundCloud

SoundCloudはDJやトラックメイカー、EDMプロデューサー、インディーズアーティストに人気の音楽共有サービスで、誰でも自分が制作した音楽をアップロードして共有できるプラットフォームです。今では、大物のロックアーティストからホワイトハウス、NASA、大学までが音声データをアップして共有する場として、利用が一般向けに拡大しているスタートアップです。

音楽サービスの収益化に関して、SoundCloudはこれまで明確な戦略を打ち立てられてきませんでした。そのため、無数のリミックスやリエディットがレーベルの許諾無しに投稿されて共有されるため、収益化の機会を失うレーベルからシステムの合法化に向けたプレッシャーをかけ続けられてきました。

SoundCloudのCEO、アレキサンダー・ユング (Alexander Ljung)はTechCrunchに対して、SoundCloudが準備している「サブスクリプション」(定額制)プランは、「2016年内」に開始すると述べています。また別の情報ソースによれば、SoundCloudの定額制プランは4-6月前に始まると伝えてられています。

ユニバーサルミュージックとのライセンス締結は、定額制プランを開始するために必要な契約の一つで、収益拡大を目指すSoundCloudにとっても最も重要な契約と言えます。SoundCloudとユニバーサルミュージックの合意によって、これでメジャーレーベルの中でSoundCloudが契約できていないのはソニーミュージックとSony/ATVのみとなりました。つまりは、定額制プランはソニー・ミュージック抜きではローンチできないところに、SoundCloudのジレンマがあります。

ソニー・ミュージックは昨年には、同社がリリースするアーティストの楽曲をプラットフォームから引き上げるなど、SoundCloudにアグレッシブな対抗策をこれまで行ってきた過去があり、交渉に向けた2社の間の関係には注目が集まっています。

ユニバーサルミュージック・グループ会長でCEOのルシアン・グランジ(Lucian Grainge)は、SoundCloudとのライセンス締結について、「このパートナーシップによって、我々はアーティスト、ソングライターそしてレーベルにクリエイティブの面さらに商業面からも利益をもたらしていきます。我々はSoundCloudと協力して、商業的なサービスへの進化を支援していくことを楽しみにしています」と述べています。

音楽共有サービスSoundCloud、イギリスの大手作曲家団体から訴えられる:「SoundCloudはライセンスの必要性を否定し続けた」

SpotifyやApple Music、日本のAWAやLINE MUSICなど定額制音楽配信は、運営にあたり楽曲使用のためのライセンス契約を各自レーベルや業界団体と結び、合法に配信を行っています。しかしSoundCloudの場合は、状況が異なります。サービスが始まって以来、ユーザーが自由に作った楽曲をプラットフォームで公開してきたこと、さらにアップロードされる楽曲の多くがリミックスやサンプリングを使った楽曲、DJミックスであることから、常に音楽業界はSoundCloudの契約事情を問題視してきました。また、広告収入など権利関係者に利益を還元する仕組みを十分に作らなかったこともプレッシャーを強める要因となっているため、SoundCloudはさらに成長していくためのビジネス的な課題解決に迫られてきました。

Billboardに対してSoundCloudのチーフ・コンテンツ・オフィサーのスティーブン・ブライアン(Stephen Bryan)は
、「私たちと音楽業界の関係において最も重要な要素の一つは、リミックスやマッシュアップなどユーザー生成コンテンツ(UGC)からのマネタイゼーションを実現する新たな試みで合意したことです。私たちはユニークなエコシステムを作り出しました。契約にあたり、正当なインセンティブを準備しています」と収益モデルと利益還元の考えを説明します。

SoundCloudは昨年暮れにイギリスの音楽サービス「7digital」の上級副社長だったRaoul Chatterjeeを引き抜き、コンテンツ・パートナーシップのディレクターに迎え入れました。Chatterjeeは過去にワーナーミュージックUKの上級副社長でデジタルサービスとのパートナーシップを担当してきた経歴で、レーベル側からプラットフォームとのビジネス戦略を統括してきました。SoundCloudとユニバーサルミュージックとの契約に見られるように、音楽業界との良好な関係の構築は「音楽ストリーミング」の普及で音楽の世界が激変している今の時代において、新たなビジネスチャンスを作るために必要不可欠です。しかし、収益化を実現するために、これまで築いてきたSoundCloudの熱いユーザーコミュニティをどのようにして納得させてさらに拡大させるかは、今SoundCloudが一番アタマを悩ませているところではないでしょうか?

SoundCloudについての記事はこちらをどうぞ

音楽共有サービス「SoundCloud」、ユニバーサルミュージックと大型契約を締結か。メジャーとの関係と広告モデルやサブスク型配信に挑む戦略

SoundCloudの契約書がネットでリーク。音楽出版社への分配額や有料プラン戦略の存在が筒抜けに

ソース
SoundCloud Signs Up Universal Music, Subscription Service Comes Closer to Reality(Billboard)

As SoundCloud Signs UMG, CEO Ljung Says Subscriptions Are Coming This Year(TechCrunch)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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