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音楽共有プラットホームとして世界的に大人気のSoundCloudが、メジャーレーベルのユニバーサル・ミュージック・グループとライセンス契約を間もなく結ぶとの情報が、関係筋によって明らかになりました。

SoundCloudとユニバーサルミュージックは数カ月に及ぶ交渉を続け、契約締結まできたそうです。交渉で優位な内容を引き出したのはユニバーサルミュージックのようで、株式の譲渡などの条件を要求している模様です。

この数カ月、SoundCloudとメジャーレーベルの関係は、マネタイゼーションを巡って複雑になってきており、います。今年5月にソニーミュージックはSoundCloudにはマネタイゼーション戦略に問題があるとして、アデル、ケリー・クラークソンなど自社のアーティストらの楽曲をSoundCloudから削除し始めました。しかし、これまでSoundCloudで活動してきたMadeonなど人気エレクトロニック・プロデューサーからはレーベル主体の運営に対して不満の声が上がるなど、後味の悪い議論へと発展しました。

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ソニーミュージックがSoundCloudから一部アーティストの楽曲を削除。収益化の交渉で衝突

2014年にSoundCloudはワーナーミュージックと契約を締結しました。この契約ではSoundCloudユーザーがワーナーミュージックに所属するアーティストの楽曲を使ったコンテンツをアップした際に、レーベルが1)ブロックする、2)消音できる、3)広告でマネタイズできるツールを提供し、SoundCloudが売上からロイヤリティを支払う斬新な契約内容でした。SoundCloudはこの契約に同意するために、ワーナーミュージックに株式5%を譲渡しています。

またSoundCloudはレーベルやクリエイターがプラットフォーム上で広告からマネタイズできるプログラム「On SoundCloud」を2014年8月から開始しました。このプログラムには、世界的な大手音楽出版社のSony/ATVとBMGが参加しています。2015年3月にはこの「On SoundCloud」は権利関係者に毎月166,000ドルのロイヤリティを支払ってきていると順調な成長をアピールしていました。

SoundCloudは、登録ユーザー数2億5000人を超える巨大プラットフォームですが、2007年の開始以来、事業の収益化に苦戦してきました。これまで1億2330万ドル以上を投資家から集めてきましたが、黒字化できる戦略を打ち出せていません。さらに追い打ちをかけるかのように、SoundCloudユーザーが著作権に関係なく独自にアップしたミックスやリミックス、リエディットなど、楽曲に対する訴訟の可能性が常につきまとっていることはSoundCloudがいくら資金を調達しても拭えない不安となっており、買収の対象としても厳しい目を向けられています。

SoundCloudは事業の黒字化を目指して、広告モデルの導入、さらには年内にサブスクリプション型サービスの開始を目指していると噂されています。

SoundCloudとの契約においてユニバーサルミュージックは株式の譲渡(ワーナーの5%を超える比率)、さらには将来のサブスクリプション型サービスにおけるギャランティーを、契約締結の条件として提示しているとレポートでは伝えられています。情報筋によれば「ユニバーサルミュージックは訴訟を起こすことも可能性として残しており、また交渉のテーブルから去ってSoundCloudが消滅するのをただ見ていることもできる」と述べているほど、交渉の手綱を握っているのは、レーベル側のようです。

ここで重要になってくるのが、SoundCloudのサブスク型サービスです。現状SoundCloudがレーベルに示せる大きなマネタイゼーションのメリットは前述の「On SoundCloud」のみで、すでに契約しているのは、ワーナーミュージックだけという現状です。さらなる収益源としての機会を提示できるためにもSoundCloudはサブスクリプション型サービスを必要としていると言えます。これまで無料で利用できたSoundCloudが、ビジネス的な理由で有料化もしくは制限がかかることになれば、世界中のユーザーはどんなリアクションを取るのでしょうか?

ソース
SoundCloud has agreed licensing deal with Universal, say sources(Music Business Worldwide)
SoundCloud is close to a deal with Universal Music Group(Business Insider)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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