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アップルの音楽ストリーミングサービス開発には、Beats ElectronicsとBeats Music買収に30億ドルという巨額の資金が投入されたことはすでに承知の事実。では今後は音楽ストリーミングの買収に資金を投入することはありえるのでしょうか?

アップルは、定額制音楽ストリーミングサービスの「TIDAL」を買収する計画は無いとApple Musicの責任者であるジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)が語っています。これまでアップルやApple Music関係者は直接TIDAL買収の噂に対して発言をしていなかったため、これが公の発言として初めてのものになります。

アイオヴィンはBuzzfeedのインタビューの中で、「我々は自分たちのサービスで、誰とも競争していない。ストリーミングサービスを買収するつもりはないよ」と答え、TIDALを含む他社買収の噂を一層しています。

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ウォール・ストリート・ジャーナルが6月にアップルがTIDAL買収の交渉を始めたとレポートをしたことから、独占配信戦略やトップアーティストの参加など共通点の多い両社が将来的には一つになることも予想できるとして今後の動きが注目されてきました。ただアイオヴィンはアップルとTIDALが交渉をした(または、している)ことは否定しませんでした。

アップルはApple Musicの有料会員数が1700万人を越えたことをiPhone 7発表会で明らかにしました。しかし、Spotifyは先日、有料会員数4000万人越えというマイルストーンを公表、他社を凌駕する勢いの成長速度を音楽業界に示しています。

TIDALは現在、有料会員数が420万人と、二社の規模には遥かに及びません。Apple MusicにTIDALが加わるということは、数百人規模の有料会員が加わだけでなく、これまで積極的に開拓してきたトップアーティストとの関係を手中に収められるという大きなメリットが生まれます。世界的な影響力を持つアーティストたちを自社のサービスの利用者にしようとするアップルやTIDALの動きは、かつてレコード会社がこぞって人気アーティストとレコード契約を求めていた時代を思わせます。

Apple MusicもTIDAL(とジミー・アイオヴィンとジェイ・Zは)独占配信戦略を強化して、数々のアーティストの大作やサブライズリリースを手がけてきた実績を残しています。ドレイクの「The Views」やフランク・オーシャンの「Blonde」はApple Musicで独占配信され、アメリカのアルバムチャート1位を獲得するという結果となっていることで、独占配信を支持する声も上がる一方で、レコード会社の戦略を後回しにするやり方に反発を示す経営者たちも表れ、特に業界で最も影響力のあるキーパーソンの一人、ユニバーサル・ミュージック・グループの会長兼CEOルシアン・グランジ(Lucian Grainge)は同レーベルの独占配信を禁止したと言われています。

アップルが買収に関してコメントすること自体が異例ですが、もしかしたらApple Musicはアップルの社内でも位置付けが別と考えることもできます。後発で市場に投入されたiPhoneがスマートフォン市場をリードする立場に進化した時と同じように、音楽ストリーミング市場でも同じ結果をすでに見定めているかもしれません。

ソース
Apple Music Exec Shuts Down Rumors Of A Tidal Deal (BuzzFeed News)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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