Media_httpwwwcnetcouk_kijfb

欧州で人気の音楽ストリーミングサービス「Spotify」(スポティファイ)は、1年以上も米国進出を試みてきた。Spotifyはウェブ・モバイル向けに1000万曲以上の楽曲から無制限ストリーミングを提供するスタートアップで、広告入りの無料会員および複数の有料会員向けに『フリミアム』なサービスを欧州10カ国で展開している。

数ある音楽スタートアップの中でも最も人気、会員数の高いサービスの1つだが、米国進出に向けたレコード会社との交渉の長期化によって、Spotifyは欧州で1000万ユーザーを獲得した魅力的なサービスと同様のメニューを米国では展開することが困難になっていると、CNETのGreg Sandoval氏が伝えている。

Spotifyは4大レコード会社の1社とライセンス契約の締結に成功し、2社目との合意に近づいている。しかし欧州発の音楽サービスは米国でのサービス展開を開始するに当たり、どのくらいの犠牲を払っているのだろう。

結果的に、同社は大きな犠牲を払うことになった。音楽業界関係者が1月31日にCNETに伝えた情報によれば、Spotifyは1年以上に渡り米国での音楽権利の取得を妨げられてきた結果、レコード会社に対して極めて多大な譲歩を余儀なくされた。

情報筋によると、Spotifyはレコード会社に有利な金銭的なオファーだけでなく、フリーで視聴可能な音楽の数に制限を設けることで合意した。もしSpotifyが米国サービスを開始する場合、ヨーロッパで1000万ユーザーに提供しているサービスとは異なる内容になる、このソースは伝えている。Spotifyのスポークスパーソンから交渉に関するコメントは得られなかった。

Spotifyはソニーミュージックと合意に達し、ニューヨークタイムズはEMIと交渉が進んでいることを報じている。Spotifyとワーナーミュージックおよびユニバーサルミュージックとの交渉の進展に関しては不明である。

Spotifyは交渉の席で、幾つかの問題においてレコード会社からの要求に応じる以外に選択肢は残されていなかった。レコード会社は大部分の要求を譲歩しようとはせず、Spotifyを永久に米国から締め出した状態に満足している。

Spotifyのビジネスモデルに懐疑的なエグゼクティブは数多い。音楽の無料配信でユーザーを獲得し、後から有料会員へと誘うビジネスモデルは音楽サービスでは成功してこなかった。レコード会社は、Spotifyの実績は十分とは思っていない。
Media_httpnewmediamon_syufe

レコード会社に支払うために湯水のごとく浪費した金額で以ってしても、Spotifyの有料会員は全体の一桁に留まっている。反面、Spotifyにはフリーな音楽配信によりアップル、アマゾンやその他のストアの売上に切り込む可能性が存在する。無料音楽配信サービスはまた生存確率が低い。imeem、Ruckus、SpiralFrogは典型例である。

音楽業界関係者によれば、レコード会社のエグゼクティブは、Spotifyの米国版が引き起こすであろうリスクと、損失を未然に防ぐため、多額の前払いを要求していると伝えられる。

*          *          *
この現実には正直失望しています。なぜならSpotifyがフリーまたは有料で提供するサービスは音楽の海賊行為に対しての代替となる可能性があると感じているからです。フリーで好きな音楽が合法的に視聴できるなら、ダウンロードする必要は無くなる。海賊行為こそが楽曲売上低迷に影響を与える,音楽業界やパブリッシャーが抱える最大の懸念材料ではないだろうか。もしもSpotifyのフリーな音楽が制限されるなら、当然ユーザーは不満を感じるだろうし、継続してサービスを利用ことを止め、ダウンロードに行き着く可能性が高い。
Media_httppaidcontent_collv
Spotifyの魅力は無制限な音楽配信モデルにあり、アップルのiTunesが確立したシングルダウンロード型音楽配信モデルに対抗できるものと思います。月額料金を支払えば、好きな音楽がデスクトップやモバイル端末で好きな時に好きな場所で聴けるライフスタイルは、現在のユビキタスなインターネットを最大限に活用したモデルだと考えられます。iTunesユーザーでもあるが、その他のオプションがあっても良いのではと考える音楽愛好家にとって、Spotifyはまさに理想的な存在になるかもしれない。

みなさんはどう思いますか?

最後にSpotifyの米国でのオペレーションの簡単な概要。Spotifyの米国事業はKenneth Parksが統括している。彼は以前、EMIで戦略・事業開発担当の上級副社長を努め、ワールドワイドの音楽およびデジタル配信を統括した人物だ。Spotifyの取締役には、「ソーシャルネットワーク」にも登場したナップスター創業者で元Facebook社長の投資家、ショーン・パーカーが参加する。その他には欧州で数々のインターネット企業に投資してきた著名エンジェル投資家、Klaus Hommelsがいる。またFacebookにも投資する香港の大物投資家、Li Ka-ShingがSpotifyには初期から投資している(Facebookと同時期)。

コメントは
Facebook.com/jaykogami までご連絡ください

ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
取材、記事執筆、リサーチ、音楽ビジネスやストリーミング、海外PRに関するコンサルティングのご相談は、お問い合わせからご連絡を宜しくお願い致します。

  • プロフィール
  • お問い合わせ