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みなさんは自分の好きな音楽を好きな時に好きな場所で聴きたいと思ったことはありませんか?

月額会員制音楽ストリーミングサービスは、PC/モバイル/ソーシャルメディアの友人経由で音楽が好きなだけ視聴できる、iTunesとは別のビジネスモデルとしてコンテンツ業界や音楽ファンから大きく注目を集めています。昨年米国に進出して、有料会員数も世界で3000万人を超え、順調に成長しています。

ですが、Spotifyはまだ始まったばかりのサービスです。日本でも公開が近いようですが、世界中でもまだわずか12カ国でしか利用ができません。

さらに、Spotifyの広告付き無料プランと広告無し有料プランを組み合わせたフリミアムモデルを危惧する大物アーティストやレーベルが、Spotifyでの配信を取りやめるという行動も起きています。

Spotifyで配信しないアーティスト、image via Businessweek

この中には、ビートルズ、コールドプレイThe Black Keys、そして2012年グラミー賞で年間最優秀曲や最優秀アルバムなど6部門を受賞したアデルがいます。昨年世界で1600万枚以上を売り上げた彼女のヒットアルバム「21」はSpotifyでは配信されていません。 

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アーティスト側では、Spotifyやその他の音楽ストリーミング配信では十分な収益が得られない、CD売上とストリーミングがカニバライズする、対価を支払うロイヤルなファン以外の人(無料会員)も聞き放題できることを嫌うなど、これまでの収益モデルと違うSpotifyに対して様々な懸念材料を挙げています。これに同調するかのように、人気アーティストが聞けないことを理由に、定額ストリーミングビジネスを不安視する音楽ファンの声も聞こえるようになってきました。
  
これまではアーティスト側が意見を主張することで、配信にNGを出してきたと思われてきました。しかし、Fast Companyのレポートによれば、アデルの『21』配信においてはSpotify側がアデル側から配信の提案を断っていたことが明らかになっています。

記事によれば、アデル側はSpotifyでのストリーミング配信に積極的で、無料会員を含む全ユーザー対象ではなく有料会員のみへの配信を提案しました。しかしSpotifyはユーザープラン別でコンテンツを提供することは、彼らのビジネスモデルに逆らうとして、アデル側からの提案を断ったということです。

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Spotifyのビジネスモデルはフリミアム。(制限は別として)無料/有料ユーザー問わず好きな時間に好きな場所でコンテンツカタログにアクセスする仕組みを提供することが現在のスタンス。たとえそれがその年のベストアルバムであっても。

  

一方、アデル側は彼女の音楽に対価を支払ってくれるユーザーにはコンテンツ提供を惜しまないスタンスだったのですが、Spotifyで無料ユーザーにフリーでコンテンツが提供されることに難色を示した様子です。
その後アデルは『21』を別の配信サービスRhapsodyでリリースし、こちらでは有料会員のみが視聴することができます。

またコールドプレイも新アルバム『Mylo Xyloto』をSpotifyでリリースしたのは、10月末の発売から数ヶ月経った2月。アルバム売上は2011年末の段階で320万枚にも上り、ストリーミング配信無しでも収益を得られることを示しています。

今回の記事で言えることは二つ。一つ目は、アーティストは完全にSpotifyなど音楽ストリーミングサービスを否定し拒絶してはいないということ。お互いが共存できることを望んでいると感じます。ですが、現段階ではお互いに合意できるウィン-ウィンな結果 (売上、会員のコンバージョン)を得ることは難しいと判断したアーティストやレーベルは、今後もSpotifyでの配信を許可しないでしょう。

二つ目は、音楽ストリーミングサービスSpotifyとアーティストとの関係が明らかになったということ。それはSpotifyのフリミアムに基づいたコンテンツ配信の信念。人気アーティストやアルバム単位でも変わらない一貫したサービスへの忠実さ。いや、ユーザーへの忠実さとを示してくれたと思います。今回のケースによって、はっきりしたことは、例えばローカルのアーティストをPRしたい場合でも、Spotifyにおいては特別扱いは無い。無料配信も月額10ドル支払ってるユーザーもアクセスできるコンテンツは同じ。受け入れなければならない。音楽カタログ1500万曲の中の一部としてPRせざるをえない。

この辺りって、これから始まる日本でのサービス展開で、レコード会社のPR担当者さんやマーケの方達、広告主は考慮しておいた方が良いのでは (出しゃばってすみません)。

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Facebookとの連携やアプリプラットフォームなど、様々な形式で音楽体験を拡張するSpotifyにとって本当に大切なことは、音楽を欲しているファン全員を最適な手法で繋げて、体験の喜びを解放して拡散してあげることのように思えてきました。音楽やコンテンツという無機質なモノを何時でもどこでも聴ける体験創りを実現するプロセスは、新しいサービス企業の形なのかもしれません。

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ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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