ブルックリン出身の4人組バンド『Spanish Prisoners』はツアー用大型バンを低価格で購入して、テキサス州オースティンで開催される(今年は3月9から18日)音楽コンベンション『SXSW (サウス・バイ・サウスウェスト)に参加するため、ソーシャルな資金調達プラットフォームKickstarterで資金を集めています。
キャンペーン名は、 ファンタジー(fantasy)とバンをもじり『Make our VANTASY come true!』。バンドのゴールは$5,000(約40万円)。
Kickstarterは、音楽家や映画監督、起業家など広くクリエイティブなアイデアに資金を募るサイト。プロジェクトに賛同したファンは、$1から出資することが可能で、クリエーターは出資者に寄付に応じた特典を提供します。詳しくはこちらで。
こちらはKickstarterでプロジェクトを開始する手順
image via Force Field PR
バンドは寄付してくれた人への特典も用意しています。$20以上を寄付した人には、「VAN SONG Project」の購読権利が与えられます。これは、3月7日から31日の25日間、バンドから車内で録音した新曲を毎日1曲、限定の写真と動画、それに木製のポストカードが届けられるそうです。$20以上になると、非売品やクリエイティブ過ぎる特典がゲットできます。その一部を以下で紹介。
- Tシャツ($50以上)
- ライブチケット($50以上)
- 7インチアナルグのテストプレス($150以上)
- Skypeを通してのギターレッスン($300以上)
- お好みの曲のカバーをスタジオで録音して寄付者に捧げる動画を作りYouTubeにアップ($1000以上。すでに1人が寄付)
キャンペーンからは$20ドルだけで最低25曲がゲットできる、しかも新曲ばかり。これはアルバム1枚買うより価値も高く、ファンにとっては嬉しいのでは?
image via imposemagazine
バンドのドラマー, マイク・ディサントは「ニューヨークから出てツアーをしてSXSWに行き、同時に新しいアイデアを見つけたかった。次のアルバムに向けてスタジオで新曲を試すような感覚だと思う。毎日の出来事が作曲に影響するだろうね」とMTVの取材に対してKickstarterのキャンペーンについて答えています。
キャンペーンは2月23日まで。現在、目標額の47%の$2350が集まっています。
2011年、Kickstarterでは映画プロジェクトに3200万ドル(約25億円)、音楽プロジェクトに1900万ドル(約15億円)が融資されました。多くのプロジェクトは下記のように映画化、アルバム制作などクリエイティブの「完成品」を目指す取組みですが、中にはツアー支援など長期の活動に対して融資を募るプロジェクトもあり、活用は多様化しています。Spanish Prisonersのような場合でも、ユニークな特典(毎日新曲1曲)に加え、SXSW参加、音楽性など、バンドに共感できるポイントが複数存在するので、積極的に関与しようとする消費者や音楽ファンがつながりやすいと思いました。
Kickstarter at Sundance Film Festival 2012
さらに、「完成品」に期待するプロジェクトと異なり、「毎日新曲1曲」という特典は、楽曲配信という導線を経由し期待という『熱度』を維持したまま、継続的かつ長期間の音楽活動をクリエーターと共有できると思います。時間を共に過ごす体験は共感を生みやすく音楽の価値を高める可能性を秘めていると思いました。
反対に、Kickstarterを使うリスクも考慮しなければなりません。例えば、どうすればプロジェクトを知ってもらえるのか?多数ある中からどのようにすれば、注目してもらえるのでしょうか?検索では『SXSW』に関連したプロジェクトは81個に上ります。そのような環境下で参加者に共感してもらい資金調達を実現するためには何が必要か、アーティストは考える必要があります。個人的には、動画やコンテンツ(特典)、ニュース価値などPR的要素と、ソーシャルメディアで作る持続的なつながり(コミュニティ)が重要になってくると感じます。
2011年に資金調達に成功したプロジェクトは46%などのデータがあるように、資金調達の実現は簡単ではありません。しかしクリエーターの魅力に共感してもらい関係が構築できるようなプロジェクトを作ることで、融資後の関係強化にも繋がるカギとなります。Kickstarterとアーティストの組み合わせは、新しいクリエイティブプロセスの潮流を作っていくのではないでしょうか?
Spanich Prisonersホームページ
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