Appleが発表した、無料の音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」。iTunes Radioは聴き放題のネットラジオで、リスナーの趣味に合わせた楽曲を自動で分析し再生してくれる、無料のパーソナライズド・音楽ストリーミングサービスです。発表時点では日本開始がアナウンスされていないのが、とても残念ですが、少しでも早く日本でもローンチしてくれることに期待したいです。

「iTunes Radio」の特徴としてはiTunesとMusicアプリと連携していることが挙げられます。スムーズな連携で音楽好きの音楽購入や突発的に音楽を入手したいリスナーを手助けしてくれます。リスナーは再生中の音楽をiTunesでダウンロード購入することが完了してしまいます。連携の精度の高さは、コアな音楽ファンにとっては競合する他社サービスと一線を画するポイントになるのではないでしょうか。

その証拠に、iTunes Radioと競合する、全米で月間ユーザー数7000万人を誇る「Pandora Radio」などその他のパーソナライズド・ネットラジオにもiTunesで楽曲を購入できる機能は搭載されています。iTunes Radioの仕組みはiTunesとiOSと連携しているので、他社よりもユニークな作りになっています。ですので、正式発表前ですが、ここでiTunes Radioを使った楽曲購入の仕方についてご紹介したいと思います。

一方でiTunes Radioの登場で浮き上がる大きな疑問は、「無料で聴ける音楽サービスがあるのに、誰がダウンロード購入するのか?」ということではないでしょうか? たしかに無料で聴き放題のサービスがあれば、音楽をわざわざ購入して聞く必要も無いと感じられます。ですが音楽ファンの中には、好きな音楽をコレクションしたい人もいます。そういうニーズをバッサリ切り捨てるのは、多くのユーザーにいきなり背を向けるような大きな決断です。

ですので、iTunes Radioに音楽購入機能が搭載されたことには、大きな驚きではありませんでした。そしてiOSならではの連携のスムーズさが加わることで、これまで音楽をiTunesでダウンロードしてきたコアな音楽好きはあまり抵抗を感ずることなくiTunes RadioとiTunesを使っていけると思います。

方法1:アプリ再生画面から

まずは再生しているiTunes Radioから直接購入する形。下のイメージにあるように、iTUnes Radioは再生中の楽曲画面の右上に「0.99ドル」「1.29ドル」と赤いボタンを表示します。リスナーはプレイリスト内の楽曲からダウンロードしたい曲のボタンをタップすれば、「Buy Song」に表示が変わってiTunesからダウンロードできるようになります。

 

またiTunes RadioはPandora Radioなどと違い、過去に再生した楽曲を閲覧することが可能です(再生は不可能)。History」画面を立ち上げれば、過去に再生した楽曲がリスト化され、その隣にある0.99ドル、1.29ドルのダウンロードボタンをタップすれば、iTunesでのダウンロードが可能になります。

方法2:iPhoneのロックスクリーンから


Apple InsiderがiOS 7 devバージョンで確認したところ、iTunes Radioを再生したロック画面にはiTunes音楽ストアへの直リンクが表示されることが分かりました。

これはリスナーがiTunes Radioをバックグラウンドで再生したまま、ロックしたiPhoneディスプレイを立ち上げた状態。表示された再生中のアルバム・ジャケットの下部に「Download on iTunes」のボタンが見えます。

Apple Insiderによれば、「Download on iTunes」リンクは、年間24.99ドルのiTunes Matchに加入していないユーザのディスプレイにのみ表示されるとのこと。

現状iOS 7はベータバージョンですので、このリンクがパブリックリリース時には変わる可能性も十分に考えられます。

もう一つ。これは購入方法ではありませんが、楽曲を入手できる方法の一つで、iTunes Radio独自の機能です。このマークはユーザーが既にiTunesで楽曲を購入済みなことを示し、このボタンをタップすると「iCloud」へ保存ができます。自分の好きな曲がiTunes Radioで流れてきて、また聴きたくなったら今度はiTunesで聴くといったような音楽視聴の体験がシームレスに生まれます。

iTunes Radioの強みはiOSにデフォルトで搭載されている機能。アプリのインストールや情報登録の面倒が無くなります。「べつに面倒ではない」かもしれませんが、好きなアーティストや楽曲ごとにアプリを切り替えて使ったり、履歴や検索結果が消えていたりすることも無くなるので、邪魔されるとこなく音楽を聴き続けることができるようになります。

音楽を聴き続ける」ことはiTunes Radioの大きなテーマではないか?と思います。iTunes Radioの目的は、音楽を「所有からアクセスすること」へと価値観を変えることだと思います。「ダウンロード購入したら終わり」のサイクルを変えながら、音楽を日常的で身近なものにする(戻す)、この二つの音楽体験への意識が高まった時に初めてユーザーと音楽の距離がもっと縮まっていくのではないでしょうか。

音楽ストリーミングサービスは、音楽を所有するモノからアクセスするモノへ価値観を変えるサービスです。世界的に見ても音楽やコンテンツは、ダウンロードし保存しておく世代から、ネットへアクセスして楽しむ世代へと、音楽体験が変わってきています。iTunes Radioは、その異なる音楽価値を持つ世代をつないでくれるアプローチの一つと言えます。

みなさんはiTunes Radioを使ってみたいと思いますか?

ソース
iOS 7 beta: iTunes Radio brings first ads to Apple’s lock screen(6/11 Apple Insider)

 


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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