音楽ストリーミングサービスの選択肢がまた拡がりますね

高級ヘッドフォンBeats by Dre. Dreブランドを展開するBeats Electronicsが開発を進め、間もなくサービス開始と噂されてきた音楽ストリーミングサービスのプロジェクト「Project Daisy」。これまでは秘密のベールに包まれてなかなか情報が入って来ませんでしたが、今週Beatsでは幾つか新しい動きがあり、サービス内容が徐々に明らかになってきました。

新しい音楽サービスの名称は「Beats Music」。Beatsは9日(金)にウェブサイト(http://beatsmusic.com/)を公開、「Coming Soon」のメッセージとともにeメールアドレスと携帯番号の募集を始めました。

Beats Music

Beats Musicは現在いつサービス開始か、どのようなサービス内容になるか、どの国で提供されるか、など詳細は明らかになっていません。

Beats Musicの音楽キュレーションチーム

またビルボードによれば、Beats Musicでは昨年から人力による音楽キュレーションチームの構築と強化を図ってきており、様々なジャンルやバックグラウンドを持つ人材の獲得に注力していることが明らかになりました。

Beats Musicが最近獲得した大物は、米国ラジオ・ネットワーク最大手「クリア・チャンネル・コミュニケーションズ」(Clear Channel Communications)でオルタネイティヴ・ブランド・オーディネーターやiHearRadio Music Festivalのブッキングを担当してきたベテラン、ジュリー・ピラット(Julie Pilat)を、音楽・キュレーション・アーティスト・ディベロップメント担当ディレクターとして迎え入れました。今後はBeats Musicの音楽キュレーションチームをリードしていきます。

ピラットは、クリア・チャンネル以前はLAで最も人気のあるラジオ局KIIS-FMの音楽ディレクターを務めていました。

またBeats Musicのキュレーションチームには、現在分かっているだけで、以下の音楽専門家が所属しています。

・スコット・プライゲンホフ(Scott Plagenhoef, 元Pitchfork編集長)
・カール・チェリィー(Carl Chery、元XXL誌 デジタル・コンテンツ・ディレクター)
・スージー・コール(Suzy Cole、デトロイト市ラジオディレクター)
・アルヤン・ホワイツ(Arjan Whites、Recording Academy音楽ブロガー)
・メイソン・ウィリアムス(Mason Williams、元Rhino Records A&Rディレクター)
・ファジー・ファンタビュロウス(Fuzzy Fantabulous、ロサンゼルス市ヒップホップラジオDJ)
・ケン・タッカー(Ken Tucker、カントリー音楽ライター)

またBeats Musicのサイトでは現在13の求人案件を掲載しており、エンジニアやデザイナーなどサービスの開発チームをさらに拡大しています。

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Beats Musicを手がけるBeats Electronicsは、ヒップホップの名プロデューサー、ドクター・ドレー(Dr. Dre)とユニバーサルミュージック傘下のインタースコープ-ゲフィン-A&M (Interscope-Geffen-A&M)レコード会長ジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)が共同創業者として2006年に設立しました。その後Beats by Dreのヘッドフォンが大ヒットし、高級ヘッドホン市場でのシェアを60%以上獲得するほど、短期間で急成長してきました。

またBeats MusicはCEOに、元TopSpinのCEOやYahoo Music運営に携わってきたイアン・ロジャース(Ian Rogers)、クリエイティブ・チーフ・ディレクターにはナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーと、音楽業界でも知名度の高い人材が集まっていることが特徴的です。

Beats Musicでは、ピラット氏やその他の音楽エキスパートで構成されたチームが生成するキュレーションされたコンテンツやプレイリストを音楽チャンネルのように配信するのではないかと予想されます。ピラットは「音楽キュレーションによって、音楽エキスパートと多くの一般的な音楽リスナーとの直接的なつながりを作り、音楽コンテキストを提供していくことができる」とコメントしています。

音楽ストリーミングサービスなど音楽サービスでは人のチカラでコンテンツをキュレーションすることは、大変な作業と言えます。何よりもアルゴリズムを使ったほうが容易にレコメンデーションを提示できることは明らかです。それでもBeats Musicは人間によるキュレーションにチカラを注ぎ、未知の領域にチャレンジしようとしています。

集まっているチームも非常にユニークです。特にピラット氏のように大手ラジオ運営会社で多くのリスナーに音楽を提供してきた経験があり、ヒットを作り上げてきた経験を積み上げた人の存在は今後の音楽ビジネスで貴重になるでしょう。アルゴリズムではなく、人が「良いな」と思った音楽に共感して新しい音楽に出会い、スマホやデスクトップ、車の中で直ぐに聴ける環境が生まれることに期待したいです。

人のチカラによるキュレーションから音楽ストリーミングサービスからヒット曲や人気アーティストが生まれるかもしれません。Beats Musicだけでなく既に先行しているSpotifyやDeezerなど音楽ストリーミングサービスでは今後さらにアーティスト・ディベロップメントが重要視されていく気がします。

 

ソース
Beats Music Beefs Up Curation Team, Says Service Is ‘Coming Soon’(8/9 Billboard.biz)

Jimmy Iovine Plucks Radio Vet to Head Up Curation for Beats Music (Exclusive)(8/7 Hollywood Reporter)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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