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テイラー・スウィフトが最新アルバム「1989」のプロモーション強化のため、「Spotify」など定額制音楽ストリーミングサーヴィスでの配信を取り止める販売戦略を実施したことはネットで大きな話題を集めました。

テイラー・スウィフトは「音楽に価値が無く、無料であるべき」という考えに反対するアーティストの1人で、ライターやプロデューサー、アーティスト、クリエイターが平等に対価を支払われるべきことを公の場で明言してきています。

そのテイラー・スウィフトのYouTube動画の再生回数が、Spotifyから楽曲を削除した11月3日以降の7日間で2倍に増加したことがリサーチ会社ニールセンのMusic Connectのデータで分かりました。

11月3日-9日の7日間を見てみると、テイラー・スウィフトのYouTube動画とVevo動画にアップされた公式動画及びユーザー投稿動画は、11月3日には約1250万回だったデイリーの視聴回数が、11月9日には約2400万回にまでアップしています。音楽PV「Shake It Off」の再生回数は120%増加。11月16日週には、YouTubeチャンネルのデイリー再生回数は10日にリリースされた「Blank Space」の影響で前週比較で72%増加しデイリーの試聴回数は3500万回までアップしました。

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新アルバム「1989」は、リリース第1週目で128万7,000枚を売り上げ、今年リリースされた作品では最大のヒット作となり、また2002年にエミネムが「The Eminem Show」をリリースして以来最大の週間売上を記録しました。「1989」は現在Beats MusicとRhapsodyの有料プランでは継続して配信しています。

テイラー・スウィフトは「音楽業界の景観は急激に変化していて、私にはSpotifyなど新しいものが巨大な実験のように感じます。私は自分の人生をかけた作品を、自分の音楽のライターやプロデューサー、アーティスト、クリエイター達に公平な対価を支払っていると感じないその実験に使わせる気は毛頭ない。そして音楽には価値が無く、無料であるべきという決め付けた考えには断じて反対します」とSpotifyから楽曲を削除した理由をインタビューで答えています。

テイラー・スウィフトがSpotifyから楽曲を削除して1週間後、SpotifyのCEOダニエル・エクが音楽の価値に対する考え方に対しての声明文を公開しました。

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ニールセンはMashableに対して、11月9日週は同社のNielsen Music Connectがオーディオ配信をトラッキングし始めた2004年から初めて1週間の再生回数が40億回を超えた週になったと説明します。同じ期間内で動画の再生回数は20億回を越えました。ニールセンは「しかし、動画の台頭は1人のアーティストが特定のサーヴィスからコンテンツを削除したから起きたわけではなく、リスナーの音楽の消費形態が総合的に変化していることを意味しています」とMashableに答えています。

米国音楽チャートを管理するビルボードは12月から米国のアルバムチャートにSpotifyなど音楽ストリーミングサーヴィスからの再生回数と、個別デジタルダウンロードの回数をランキングに反映させると発表したばかりです。

この新しい計算システムでは、米国でいまだにYouTubeの再生回数はアルバムチャートには反映されません(シングルチャートではYouTubeはすでに回数がカウントされている)。

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アーティストやレコード会社はYouTubeからいくつかの方法でマネタイズしています。広告を表示して動画を配信する方法。iTunesやAmazonなどに誘導させる方法。グッズを販売する方法。スポンサーとなる企業やブランドと組む方法。カバー曲からロイヤリティ料を徴収する方法。YouTubeとその親会社のグーグルは、ロイヤリティ料支払いのパーセンテージを公開していません。しかし音楽業界関係者によればYouTubeでの再生1000回に対し0.5 – 2ドルのロイヤリティが権利関係者には支払われると推測されています。

Spotifyではロイヤリティ料支払いのシステムなど、アーティストへの料金分配についての情報を公開しています。Spotifyはストリーミング再生1回につき平均で0.006 – 0.0084ドルがロイヤリティとして権利保有者に支払われます(その後アーティストへ分配されます)。SpotifyはMashableに対して、YouTubeでの再生回数2000万回をSpotifyのシステムで換算した場合、テイラー・スウィフトのチームは12万 – 16万8000ドルが2000万回からロイヤリティ料として権利保有者とアーティストに支払われると答えています。

ソース
Taylor Swift’s YouTube views doubled after pulling music from Spotify (11/21 Mashable)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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