世界の音楽ビジネス界隈では、業界再編が続いていますが、また新たな動きです。
世界中のインディーレーベルの重要なパートナーとして長く活動してきた、独立系ディストリビューターのRedeyeを、Exceleration Music (エクセレレーション・ミュージック)が買収しました。買収額は公表されていません。買収後もRedeyeは引き続き同ブランドで経営を継続します。
Redeyeは、米国をはじめ、世界各国のインディーレーベルに特化したディストリビューションとマーケティングサービスの提供している会社です。
特に、アナログレコードやCDなど、インディー音楽ビジネスの重要な収益源であるフィジカル商品の世界流通を強みにしています。
インディーレーベルの収益拡大
日本の音楽業界と大きく異なり、海外のレーベルは、収益化や海外展開を拡大したい時、目的や地域に合わせて、ディストリビューターを変えて契約することが通常です。
インディーレーベルの中では、FUGAやBelieve、The Orchard、Ingrooves、IDOLなどと契約する一方、CDやアナログレコードの流通はRedeyeと契約することも多くあります。
Redeyeと契約するレーベルは、Beggars GroupやDomino Recordings、Mom+Pop、Ninja Tune、Warp Records、Stones Throwなど、100以上の著名インディーレーベルが名を連ねています。
2020年1月、世界最大のインディーレーベル・グループのBeggars Groupは、それまで米国でのフィジカル作品の流通を担ってきたワーナーミュージックのディストリビューター「ADA」との契約を終了し、Redeyeと新たに契約を結びました。
同月には、Beggarsに加えて、Domino Recordings、Saddle Creekとインディー大手が、相次いでRedeyeに米国のフィジカル流通契約を切り替えました。Redeyeは新譜に加えてカタログ作品のフィジカルリリースも取り扱っています。Beggarsは、4AD、Matador Records、Rough Trade、Young Turks、XL Recordingsのレーベルとアーティストを手掛けています。
Redeyeと契約するレーベルには以下があります(一部)。
New West Records (米国)
Saddle Creek Records (米国)
Mom+Pop Music (米国)
Kemado Records / Mexican Summer (米国)
Stones Throw Records (米国)
Drag City (米国)
Real Gone Music (米国)
Innovative Leisure (米国)
Carpark Records (米国)
Thrill Jockey (米国)
Luaka Bop (米国)
Partisan Records (米国)
Sargent House (米国)
Barsuk Records (米国)
Daptone Records (米国)
Yep Roc Records (米国、Redeye傘下のレーベル)
Sundazed Records (米国、Redeye傘下のレーベル)
Beggars Group (英国)
Domino Recordings (英国)
Warp Records (英国)
Ninja Tune (英国)
!K7 Music (ドイツ)
フィジカル音楽が強みのRedeye
Redeyeは、米国ノースカロライナ州ヒルズボロに本社があります。流通センターを運営しています。
海外では、ベルリン、パリ、ロンドン、カナダ、オーストラリア、北欧など、世界15都市にオフィスを構えています。
Redeyeはまた、2019年、スウェーデンのディストリビューター「Border Music」を買収しました。買収により、Redeyeはヨーロッパ事業、レーベルサービス、デジタルチームを強化しています。
Border Musicと契約するインディーレーベル/ディストリビューターでは、
Third Man Records
[PIAS]
AWAL / Kobalt
Bella Union
Mute Records
Groove Attack
などがあります。
Exceleration Musicの買収には、Redeyeに加えて、同社のインハウスレーベルのYep Rec RecordsとSundazed Records、音楽出版事業のRiff City Soundsも含まれます。
Redeye共同創業者でオーナーのグレン・ディッカー (Glenn Dicker)とトーア・ハンセン (Tor Hansen)は、引き続き同社を指揮します。また二人はExceleration Musicの株主になります。
インディー音楽のExceleration Musicのビジネスモデル
2021年設立のExceleration Musicは、インディー音楽企業に特化した投資会社です。
一般的な音楽投資会社のイメージは、ヒット曲を持つ作曲家から著作権を買収したり、カタログ楽曲のアーカイブを権利者から買収していくことです。
一方、Exceleration Musicは、インディペンデントなレコード会社を対象に、彼らが構築してきた音楽的資産と文化価値を保護し、持続的に事業強化するための支援を目的に活動しています。
設立わずか数年にも関わらず、インディペンデントな立場を維持しながら、成長したいレコード会社の創業者や経営者に対して、戦略開発や投資を行ってきました。
Exceleration Musicがこれまでサービス提供をしてきたレーベルの一部は次の通りです
Bloodshot Records
Kill Rock Stars
Mom+Pop
SideOneDummy
レイ・チャールズ財団/Tangerine Records
+1 Records
Azadi Records
Exceleration Musicの共同設立者でパートナーには、経験豊富な音楽業界のエグゼクティブが集まり、パートナー企業の経営層に専門的な知見を提供しています。
グレン・バロス(Glen Barros、元Concord Music GroupのCEO)
デイヴ・ハンセン(Dave Hansen、元Merlin会長、元Epitaph Recordsゼネラルマネージャー)
チャールズ・カルダス(Charles Caldas、元Merlin CEO)
エイミー・デイツ(Amy Dietz、元Ingroovesゼネラルマネージャー)
ジョン・バーク(John Burk、元Concord Records社長)
Redeye買収によって、Exceleration Musicは、2つの事業体制を運営していきます。一つ目は「権利」ビジネスで、文化価値の高いレーベルやカタログ保有者に対して投資やパートナーシップを提供します。
二つ目は「ディストリビューション・レーベルサービス」事業で、Redeyeブランド及び既存の経営体制、システムを維持し、世界展開を目指すレーベルに対して、デジタル及びフィジカル音楽商品の流通、マーケティング、レーベルサービスを提供を続けていきます。
Source:
Exceleration Music Expands Operations through Acquisition of Redeye
Beggars Group, Domino, Saddle Creek Pact With Redeye for Distribution (Variety)
REDEYE, DISTRIBUTION PARTNER OF BEGGARS, DOMINO AND OTHER LEADING INDIE LABELS, ACQUIRED BY EXCELERATION MUSIC (Music Business Worldwide)