音楽ストリーミングサービスSpotifyから新人アーティストが生まれる流れをまとめた記事を「Forbes」が掲載していました。大変興味深い記事でしたのでシェアします。今後日本でも同じような流れが生まれることに期待したいです。

2013年の音楽シーンで最も話題だった1人、ニュージーランド出身の若干17歳のシンガー、ロード(Lorde)。彼女のヒット曲「Royals」は、アメリカのビルボードシングルチャートで9週連続1位を獲得、ダウンロード数は390万DLに到達するほどまで高い人気を博しました。彼女は2013年ブレイクしたアーティストの1人となり、56回グラミー賞でも最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)、最優秀ポップ・ボーカル・アルバムの4部門にノミネートされるほど世界的に注目を集めています。

そんな彼女も初めは全く無名のアーティスト。しかもニュージーランドとアメリカや世界の音楽ビジネスからは遠くはなれた場所で音楽を作っていました。


元々のトラックはSoundCloudにアップされた。

そんな彼女が一気にブレイクし世界的に注目を集めるキッカケとなったのは、音楽ストリーミングサービスの「Spotify」でした。もっと正確に言えば、Spotifyのプレイリストで共有されたことで、彼女の快進撃が始まりました。Forbesでは「Royals」がどのようにしてSpotifyで人気を集めたのかに注目します。

spotify_logo

ロードの「Royals」に注目し、Spotifyから共有されるキッカケを産んだSpotifyプレイリストのオーナーは、映画「ソーシャルネットワーク」でも紹介された元Facebook社長で、Spotifyの取締役も務める投資家のショーン・パーカー(Sean Parker)でした。

「Royals」を追加し共有したショーン・パーカーのSpotifyプレイリスト「Hipster International」は、Spotify内でも80万人以上のフォロワーを集める、最も影響力の高いプレイリストの1つです。

ショーン・パーカーはフォーブスの取材で、以下のように答えています。

僕は彼女が、色んな意味で使い捨てのようなポップ・ミュージック界に対抗する存在のような気がした。例えば、ケイティ・ペリーを聴いてる人にとっても親しみやすい音楽だと感じたんだ。だけど同時に、ロードの音楽には明らかに純粋でパーソナルな側面がある。彼女の音楽制作には、シンガーソングライターのようなアプローチに回帰しているように僕は感じた。そして、彼女にはキャッチーなメロディを作る才能があるんだ。

2013年4月2日、ショーン・パーカーは、ロードの「Royals」を彼のSpotifyプレイリスト『Hipster International』に追加したところから、楽曲への注目が急速拡大します。

2013年春にロードと契約したLava Records代表で、元キャピトルミュージックのCEOのジェイソン・フロム (Jason Flom)は、

「Royals」が『Hipster International』に追加された途端、世界中から大きなリアクションがあったんだ。まず6日後にはSpotifyのバイラルチャートでデビューして、Spotifyのネットワーク内で口コミが広がって再生回数は伸び続けた。ロードのデビューアルバム発売まで続く話題のうねりが最初の兆しだった。

とコメントしています。

その後も「Royals」はSpotifyのバイラルチャートを上昇し、ケイティ・ペリーやドレイク、レディーガガなどに迫ってきます。Spotifyでコンテンツ部門のトップを勤めるスティーブ・サヴォカ(Steve Savoca)は、「Royals」のSpotify内での存在にすぐに気づきました

ソーシャル・フェノメノンへと変わっていった。ユーザーはワクワクするモノを発見した興奮を誰かに伝えたくてたまらないようだった。みんながSpotifyやFacebook, Twitterで友人に共有しはじめ、山火事のように広がっていった。
とコメントしています。

サヴォカのチームはロードをSpotifyでプロモーションすることを決定し、Spotifyのホームページにフィーチャーします。5月にはロードはSpotifyのバイラルチャートで1位を獲得。そして6月に入り、FMラジオ局が「Royals」をオンエアし始めます。

現在Spotifyで「Royals」は再生回数が1億回を超え、ロードのデビュー・アルバム「Pure Heroine」はSpotifyのバイラルチャートで1位となり、初週の再生回数が600万回を超えました。またYouTubeの再生回数も1億5000万以上を記録し、さらにビルボードのシングルチャートでも1位を獲得するなど、Spotifyの外でも高い人気を集める結果となりました。

 

ロードのSpotifyにおけるタイムライン

 

2013年
4月2日:ショーン・パーカーが「Hipster International」プレイリストに「Royals」を追加する
4月8日:「Royals」がSpotifyバイラルチャートにデビュー
5月初め:Spotifyトップページにロードと「Royals」がフィーチャーされる
1週間後:「Royals」がSpotifyバイラルチャートで1位獲得
6月10日:米国FMラジオが「Royals」をオンエア開始ーSpotifyバイラルチャートでデビューから2カ月後
6月15日:「Royals」がSpotifyトップ100入り
7月9日:「ROyals」がビルボードシングルチャート入りーSpotifyバイラルチャートデビュー3カ月後、Spotifyトップ100入り1カ月後
8月6日:ロードがニューヨークで米国初ライブ

・「Royals」は米国で新人アーティストの中で最もシェアされたトラック
・「Royals」は米国で4月以降、ダフト・パンクの「Get Lucky」、ロビン・シックの「Blurred Lines」に次いで最もシェアされたトラック

前途のサヴァカは、Spotifyが新人アーティストを見つけることに関して、次のように答えています。

ユーザーが気に入れば、彼らはシェアし再生し、さらに多くの人が楽曲を見つけるでしょう。完全にユーザー主義の世界です。

私達は(アーティストとユーザーの)関係性を橋渡しする役割を補っています。この関係性がロードの場合のように奇跡を起こした時には、私達はデータを解析し、刺激的な新人アーティストをユーザーに紹介する機会を作っていきます。

注目される新人アーティストはどのようにしてSpotifyで取り上げられるのだろうか?

Spotifyではサヴァカ率いるコンテンツ・チームが、注目度の高い新人アーティストに対して、ホームページで楽曲をフィーチャーしたり、注目アーティストのプレイリストに載せたり、さらにはSpotify主催のライブや特別インタビューを開催したりするなど、Spotifyプラットフォーム上のマーケティングを展開し、新人や新曲にユーザーの関心を集め共有されやすい環境を作っていきます。

ロードの例は、Spotifyがただ音楽を聴くだけのプラットフォームではなく、新人アーティストの存在を拡げられる可能性があるプラットフォームであることを証明しています。そしてロードのケースを見ると、ユーザーが新しい音楽と出会うための「ミュージックディスカバリー」としての機能をSpotifyが実践していると言えます。

また、Spotifyで配信された音楽がマスメディアが取り上げるよりも先に人気を集めるトレンドもあり、ソーシャルの世界では音楽にはこれから頻繁に見られそうです。

今後ユーザー数が増え、音楽を聴く時間が増えると、今後もSpotifyからブレイクするアーティストが出てくる確立が増えることが期待できます。

また今回楽曲を取り上げたショーン・パーカーという点もユニークです。ショーン・パーカーは、レコード会社の人間でも音楽メディアの人間でもありません。Spotifyプレイリストのキュレーターという存在ながらも、新曲や新人アーティストを取り上げています。Spotifyプレイリストと注目度の高いキュレーターからの共有が音楽プロモーションにつながる流れは、これまでにデジタル音楽の世界ではなかなか見られなかったことで、非常に将来性を感じます。

Spotifyから新しい音楽が生まれるカタチは、デジタルやソーシャルが発展する世の中で新しい音楽体験を拡げてくれます。今後も多くのトレンドが誕生しそうで楽しみです。

image via Forbes, CNET,

ソース
How Spotify Made Lorde A Pop Superstar(11/26 Forbes)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(Jay Kogami)

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