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2016年末に公開された、ボストンマラソン爆弾テロ事件が題材の映画『ペイトリオッツ・デイ』で、サウンドトラック製作を担当したナイン・インチ・ネイルズトレント・レズナーと、NINの正式メンバーとなった音楽プロデューサーのアッティカス・ロス。これまでも『ソーシャル・ネットワーク』『ゴーン・ガール』『ドラゴン・タトゥーの女』を手掛けている二人は、映画のサントラ製作と同時期に、ナイン・インチ・ネイルズの新EP『Not the Actual Events』のレコーディングを行い、さらにレオナルド・ディカプリオ製作のドキュメンタリー映画『地球が壊れる前に』のサントラ製作をグスターボ・サンタオラヤとMOGWAIと共に行なう多忙なレコーディングスケジュールをこなしてきました。

Yahoo Musicのインタビューに答えたトレント・レズナーは、SNSが中心のインターネットによって、「評論家」となった人が現れ、多くの音楽が形式だけで人の評価を気にするモノばかりになったと、現代の音楽シーンの問題点を指摘しています。

ナイン・インチ・ネイルズが広く知られるようになるずっと前から、出来る限り音楽を作る時に自分自身に正直であろうとする姿こそがバンドのあるべき姿だと気付いた。そこには常に自分への問いかけや、不快な感情との葛藤が伴う。そうすることで、曲が支配力を有することを学んだ。幾つもの感情を掻き集め、頭の中から取り出すことで自分の気分を和らげる何かに変えていった時、そこには真実が存在しているから、人が曲に反応してくれることに気がついたんだ。同じような支配を今も信じている。自分がリリースした過去のカタログを振り返ってみると、その当時の自分のベストを尽くし、自分自身に正直であったと心から思う。今は昔とは違う挑戦に挑んでいるだけだ。

誰でも評論家になれる

そして、トレント・レズナーは、現代の音楽シーンが抱える問題点を独自の見解で分析し、アーティストにとって「有害な状況」にあると指摘します。

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今は昔の自分とは違って、恐れることがなくなった。アルバム制作に時間がかかった頃は、心を開いて、頭の中を覗き見ることを恐れていた。自信がなかったんだな。今は自分の力に確信がある。だからと言って、世の中に作品をリリースする時、自分の感情をさらけ出して、作曲する作業の辛さが和らぐわけじゃない。しかし、今は人々が誰でも評論家になって、忍び混んでくるんだ。インターネットは、自分の発言が誰かの関心事になると考える人や、声に出す権利があると思っている人を含めた全ての人に発言力を与えた。全体的に、それはアーティストにとって有害な状況を作り出し、その結果、非常に安全な音楽が生まれることにつながったと思う。アーティストたちは、大人しく従うフォロワーたちを支配するテイストメーカーを喜ばそうと音楽を作っている。悪質なサイクルで、不健全だと思う。今の時代にプリンスのような人は生まれることはない。多くの人たちは、型にはまって、ご機嫌を取るための、菜食主義者向けレストランのパトロンみたいなくだらない音楽を作っている。そのせいで、誰もが他人の評価を馬鹿みたいに気にする状況が生まれている思う。何も作ったことがない人は、自分が意見する権利が無いものに対してまでも批判できると思っている。Facebookのアカウントを持ってるくらいで、誰も気にしてないんだ。何かを成し遂げたと思わないで欲しい。

トレント・レズナーは、アップルでApple Musicのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして、サービスの開発やインターフェースの向上で、ジミー・アイオヴィンなどと一緒にリーダー的役割を勤めていることでも音楽業界で知られています。

ソース
Trent Reznor & Atticus Ross on ‘Patriots Day,’ New Nine Inch Nails EP, and How Social Media Creates a ‘Toxic Environment’ for Music (YAHOO! Music)
image by tua ulamac Via Flickr


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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