これからの音楽マーケティングはデータが重要視される流れが来ています。
音楽データ解析サービスを提供する「BeatDeck」がウェブアプリを開始しました。BeatDeckはシリコンバレーのベンチャーキャピタル「Y Combinator」から出資を受けた音楽スタートアップ。ミュージシャンのSNS上でのデータを解析し、レコード会社や音楽ビジネス関係者に向けてライセンス提供することで、次のスターを発掘する手助けをしたり音楽レコメンデーションの最適化を支援します。
BeatDeckは音楽企業向けのデータ解析サービスで、ターゲットユーザーは完全にレコード会社や音楽サービス企業など音楽ビジネス関係者になります。従って一般ユーザーやリスナー向けのサービスは提供していません。音楽業界向けのビジネスとなりますが、そのサービスのコアとなるデータを収集するために、解析サービスを無料でアーティストに提供します。もちろん日本人アーティストもBeatDeckを使うことはできます。以下でサービスの流れをご説明します。
まず初めにアーティストはBeatDeckにアカウントを作成し、SNSアカウントを連携させます。アーティストはBeatDeckのダッシュボードから、各チャンネルでのファンの活動、年齢層や性別、位置、視聴時間などデモグラフィックを確認することができます。また、ファンの影響力やポジネガ分析を見ることも可能になります。
さらにBeatDeckのパブリッシング・ツールを使ってSNSに音楽を配信・共有すると、例えばYouTubeではどの楽曲で早送り(スキップ)されたか、巻き戻しされたかなど、楽曲データの解析も可能になります。
これらのデータは、通常であれば個別のツールを使って各アカウントごとに分析する必要があり、アーティスト特にリソースの少ないインディーズミュージシャンにとっては、トラックすることができないデータです。
BeatDeckを使うことで、必要なデータを一元化できるので、どのSNSにチカラを入れるのか、どのファン層をターゲットにするのかなど、アーティスト活動の戦略を立てることが容易になります。例えば視聴時間が短いのであれば、あえてフル視聴を薦めるのではなく30秒視聴を動画で提供するなど、活動の効率化が図れます。アーティストはこれらのデータ分析に無料でアクセスすることができる点が、他社のデータ分析サービスとは全く異なるところです。
BeatDeckでは、アーティストが蓄積したデータをレコード会社やA&Rの人間にライセンス提供することを予定しています。またBeatDeckはオンライン音楽ストアや音楽サービス向けにもサービスを提供することを計画しています。例えばレコード会社のA&Rは所属アーティストの活動を一括でモニターをすることが可能になります。また例えばSpotifyがBeatDeckを利用した場合、どのアーティストのどの曲がどのサービスで人気があり、またスキップされたのかを把握することができるので、どのアーティストをレコメンドするかなど配信を戦略的に計画できるようになります。
レコード会社や音楽ビジネス向けにデータ解析を提供するのは、Next Big SoundやMusicmetric などがすでに存在します。しかし多くの場合、企業はアーティストが使うデータ解析ツールを有償で提供していることがあり、ゆえにミュージシャンは支払うことができずツールを使うことができないという現状の課題があります。BeatDeckでは無料で解析ツールを提供することで、この課題を解決しアーティストの参加へのハードルを低くしています。
一方で音楽分野でのデータ解析は新しい分野です。よってミュージシャンから理解を得ることの難しさやレコード会社への提案が長期化する恐れもあります。ですが、BeatDeckやNext Big Soundのようなスタートアップがすでに生まれ、サービス提供を開始している事実からも、音楽活動もデータ重視の流れへと移り変わろうとしていると言えます。これからのミュージシャンやA&Rの人間は、データの読み取りや理解も出来ないと、2-3年後にはアーティスト活動で遅れを取ってしまうかもしれません。
早く日本でもこういう音楽サービスが出てくればいいですね。
ソース
BeatDeck’s Free Analytics Show Musicians Who Their Fans Are(5/20 TechCrunch)