昨今のEDM人気は1つのブームという枠を飛び越え、世界的に人気が拡大し急速に認知度が高まった音楽ジャンルへと成長しました。有名DJやEDMアーティストの楽曲がチャート1位になったり、野外フェスやイベントには数万、数十万規模を動員するなど、音楽ビジネスにおけるグローバルムーブメントとなりました。
ではそのEDMの成長を支えているのは、誰なのか。継続して拡大するEDMムーブメントを起こしているのは誰なのか。最近のEDM人気の背景が分かる興味深い調査が海外で行われたので、ご紹介します。
オンライン・チケット・プラットフォーム「Eventbrite」がソーシャルメディア解析会社「Mashwork」と共に行った「EDM」に人気に関する興味深い調査結果を発表しました。 Eventbriteが発表したレポート「The EDM Audience Analysis」では、EDMファンの特性を2013年にソーシャルメディア上で行われた7000万件以上の会話を分析し、投稿のコンテクストや熱量、音楽購入のキッカケといった消費者行動やインサイトを調査しています。
EDMファンはSNSで超アクティブ
調査結果によれば、EDMファンはソーシャルメディアの利用が非常に活発的であることが分かりました。EDMファンは1日平均11回ツイートし(平均的Twitterユーザーは1.85回)、3回に1回の投稿はEDMに関連する内容を投稿しており、一般的な音楽ファンに比べEDMファンが音楽について投稿する回数は52%も多い結果となりました。一般の音楽好きなTwitterユーザーは平均的なTwitterユーザーよりも活発的である中、EDMファンは今聴いている音楽について4倍多く投稿し、音楽好きの中でもEDMに関する話題を日常的に生み出しています。
特定のアーティストではなくEDMというジャンルのファンが多い
EDMファンはまた特定のアーティストに偏った投稿を行うのではなく、「EDM」というジャンルが生み出すライフスタイルやイベントの体験など全体的なトピックについて投稿しています。EDMファンの会話の内、14%はイベントやポッドキャストなど総合的なテーマに渡りEDMについて会話をしています。 Eventbriteの調査では、友人がEDMイベントに参加することが投稿した場合、78%がイベントに参加すると回答者は答えています。一方で一般的なライブの場合、参加すると答えた回答者はわずか43%でした。
EDMイベント時に投稿することが好き
ライブイベントの最中でもEDMファンはその他の音楽ファンよりもアクティブにSNSを活用しています。4人に1人がEDMについてイベントの間に投稿しており、また一般的な音楽ファンがライブに行った時と比較して、EDMファンの音楽に関する投稿の回数は30%も多いことが調査で分かりました。 Eventbriteの音楽マーケティングのトップ、マルティナ・ワン(Martina Wang)は、次のようにコメントしています。
彼らはオンライン・オフラインを問わず、最もソーシャルを活用する音楽ファンです。オンラインを通じてEDMブランドがEDMファンのチカラを活用できる非常に大きなビジネス機会が眠っています。 イベント時のエンゲージメントが最も重要です。ソーシャル連携やチャット機能を搭載した、フェスやブランドによるモバイルアプリや、会話を生み出し一元化するためのイベント時のハッシュタグの活用が広がっています。
活発的なSNSへの投稿は、音楽の購入にも結びついています。 調査結果では、EDMファンの音楽購入の27%がイベント時のツイートによって影響されていることが明らかになりました。また写真や動画コンテンツも約10%の割合で音楽購入につながる要因となっており、多くのEDMファンにとってビジュアルのコンテンツがエンゲージメントそして音楽購入のキッカケを生み出します。これらのコンテンツは、EDMイベントでのカラフルでビジュアル性の高いステージ演出、そしてモバイルデバイスでの撮影やシェアによって作り出されています。
EDM愛を投稿する
またEDMファンの投稿は圧倒的にポジティブな内容が多く、またEDMへの熱意を語る内容の投稿が多いことも、大きな特性の一つです。イベントの体験だけでなく一般的な新譜リリースまで常に熱い思いをEDMに持ち続けているファンによって会話が生み出されています。
このことからも、EDMはイベント時の一時的な盛り上がりがSNSで沸き起こるのではなく、イベント終了後でもファンが常にEDMに関するコンテンツを投稿し、日頃からファンの間では情報交換や会話が成立していることが分かり、ソーシャルメディアを活用して常にEDMがムーブメントとして盛り上がる環境を生みだしています。
テクノロジーの進化や有名アーティストのビッグなリリースが音楽シーンの成長においては重要な要因であることには今後も変わりありません。
一方で、日頃から音楽や情報を接するファンに向けて魅力的な新しい体験を世の中に広めるために消費者ときちんと向かい合うことが音楽でもっと必要な気がします。音楽を支えているのは音楽ファンであることを意外と忘れがちになってしまいます。
この調査から分かるように、EDMではロイヤリティが高く、情報発信頻度の高いのは、レーベルでもなく音楽メディアでもなく、ファン自身が好きな音楽について投稿しているという素晴らしい環境が出来上がっていることは、大きなアドバンテージです。EDMコミュニティは日常的に音楽に関与できる情報やコンテンツをオンラインで循環させながら、その反対側ではEDMイベントオーガナイザーやマーケッターは消費者がネタにできる(投稿してもらえる)ステージ演出やブッキング、プロモーションを仕掛けていく、やりとりがEDM成長のカギになっています。このように日頃から音楽ファンが情報に関与して話題を作っていく流れは、コミュニケーションプランナーの高野修平さんのブログで詳しく紹介されています。
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日本ではなかなか根付かないEDMですが、このEventbriteの調査結果には、EDM人気を定着させ世界のようなムーブメントを起こすためのアプローチに必要なヒントが多くあると感じました。
ソース
EDM Fans’ Hyperactive Social Media Use Driving Genre’s Success (Study)(3/12 Billboard.biz)
The Social DNA of EDM Fans(3/12 Eventbrite)