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定額制音楽ストリーミングサービス「Spotify」が、聴き放題のフリーオプションに制限をかけるかもしえないと噂が上がっています。Digital Music Newsが情報筋の話として伝えています。

レポートによれば、Spotifyはプレミアムユーザー向けのコンテンツを強化して、広告モデルの聴き放題を利用するフリーユーザーをプレミアムアカウントへと移行させて、事業の収益化とアーティストへのロイヤリティ分配の拡大を図るつもりのようです。

詳細までは明らかにされていませんが情報ソースによれば、Spotifyの新たな制限ではプレミアムユーザーのみが最新リリースなど全アルバムにフルアクセスが可能になるとのこと。一方で、フリーユーザーは聴けるアルバムに時間制限されるか、有名なアルバムの1〜2曲のみが視聴可能になるか、またはそのハイブリッド型の制限が設けられると報じられています。フリーユーザーは聴き放題するためには、有料会員」になるというシナリオになります。

Spotifyの方向転換は、レコード会社からのプレッシャーに対する回答だと言われています。レポートによれば、制限は2016年から導入との見込みだそうです。その間にSpotifyはライセンス契約の締結、アプリのアップデートに注力する必要があるようです。

メジャーレコード会社(ユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージック)は現在もSpotifyとライセンスの交渉中で、契約の延長には未だサインしていない状況が続いています。情報ソースによれば、10月1日が契約更新の期限となっているそうです。恐らくは、この契約問題がSpotifyに戦略変更の大転換を測った原因の一つと言えるでしょう。

Spotifyとフリーミアム

Spotifyは、無料と有料のオプションを組み合わせた「フリーミアム」モデルで運用されてきた定額制音楽ストリーミングサービスで、広告モデルで音楽を聴くフリーユーザーを制限無しの有料ユーザーに移行させるアプローチで、会員費と広告費で収益を拡大してきました。

Spotifyが現在公表しているアクティブユーザー数7500万人、有料会員2000万人という規模は、定額制音楽ストリーミングサービスの中では世界トップ。同社の収益の大部分は有料会員の費用によって占められているほど、Spotifyのフリーユーザーから有料ユーザー化戦略はこれまで大きな成功を収めてきました。

SpotifyのCEO、ダニエル・エクはこれまでもフリーミアム・モデルを強く支持しており、コンテンツに制限を掛けることに懸念を示してきました。Spotifyは2008年のサービス開始以来、アーティストやレコード会社に支払ったロイヤリティの総額は30億ドル(約3732億円)に上り、違法ダウンロードやYouTubeにアップされた非合法のコンテンツなどでアーティストに支払いが全く発生しない場合を考えると、音楽業界に大きな貢献を残しています。しかし近年はテイラー・スウィフトをはじめとするアーティストの一部が、音楽ストリーミングからのロイヤリティ分配は不平等だと楽曲カタログを削除するケースも増え始め、アーティスト間でも議論の的になっています。

以前、Spotifyはフリーユーザーには毎月音楽を聴ける時間に制限をかけていたことがあります。しかし現在はその制限は無くなっています。フリーで音楽サービスが使えるオプションは、ユーザーを新規に獲得するために重要な鍵です。フリーミアム・モデルは音楽業界にとっても新しいビジネスモデル(これまでのCDパッケージ中心のビジネスと比べると)で、リスクが大きいと言えます。しかしユーザーがサービスに触れる機会を減らす、または閉ざすことで機会を損失する可能性もあります。逆の見方をすれば、この戦略であれば、フリーモデルに否定的な音楽市場にもSpotifyが参入しやすくなるかもしれません。この仕組みを導入することで、日本でのサービス開始も可能性が広がったとも言えるでしょう。

CD、ダウンロードの売上が世界的に減っている今、音楽ストリーミングサービスのフリーと有料のバランスをいかに成立させるか、音楽業界は判断に迫られています。

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ソース
Spotify Is Preparing to Offer Premium-Only Content, Sources Say(Digital Music News)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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