日本では想像もつかないですが、アメリカではラジオが未だに人気を博しています。
2017年のアメリカ人のFM/AMラジオ利用データを示した最新のレポート「Audio Today 2018」を、調査会社ニールセンが公開しました。FM/AMラジオが開始して100年以上が経つ今でも、大半のアメリカ人はラジオを毎週聴く生活を続けています。そして、音楽ストリーミングやスマートスピーカー、ポッドキャストといった新しいメディアとテクノロジーによって、オーディオコンテンツへの需要が、見直されようとしています。
ラジオ利用とテレビ、スマホ、動画サイト
ニールセンのデータによれば、アメリカ人18歳以上では毎週ラジオを聴くと答えた人は実に93%に上り、これはテレビやスマホのアプリ利用/ウェブ閲覧よりも多く、2億2850万人がラジオのリスナーであると答えました。これに対して毎週テレビを見ると回答したのは2億1650万人(録画機、タイムシフト視聴を含む)。スマホでアプリ利用/ウェブ閲覧すると答えたのは2億380万人。スマホで動画を見ると答えたのは1億2760万人でした。
音楽ストリーミングサービスを利用すると答えたのは6850万人、Sirius XMなど衛生ラジオの利用は3570万人、ポッドキャストの視聴は2190万人と、ラジオと比べて圧倒的に小規模な市場だと言えます。
上記は、アメリカ人が毎月接触するメディアフォーマットのデータ。ラジオへのアクセスは、SNSサイトや検索サイト、動画サイト、ECサイト、ニュースサイトよりも大きく示されています。
日本ではYouTubeやSpotify、Apple Music、Netflixといったコンテンツ配信サービスの話題が大きく取り上げられるため、一般的なアメリカ人もそれらのサービスを普段使いしていると思いがちですが、現代においてもラジオがアメリカ人にとって情報ソースとして成熟し、メディアとしての選択肢に未だに挙げられていることは驚きでもあります。
ミレニアル、X世代とラジオ視聴の違い
ニールセンのデータでは、世代別に月間でメディアと接触する数値を示しているため、アメリカ社会で人々がどのようなコンテンツに接触しているのかも見ることができます。
18歳〜34歳までの「ミレニアル世代」では95%、35歳〜54歳までの「X世代」では97%、55歳〜64歳までの「ベイビーブーマー世代」では98%が毎月ラジオを聴いています。
さらに、どの音楽ジャンルやラジオのフォーマットが最もこの聴かれたのかまでをレポートは教えてくれるので、アメリカ人の嗜好を考える貴重な情報です。
2017年に最も聴かれたラジオのジャンルでは1位が「カントリー」、2位が「ニュース/トーク・ラジオ、コマーシャル付き/無し」、3位が「ニュース/トーク・ラジオ、コマーシャル付き」、4位は「アダルト・コンテンポラリー」、5位は「ポップス・コンテンポラリー・ヒット」の順に並びます。
各ジャンルごとに、最もオンエアされた楽曲名も記されています。
興味深いのは「アダルト・コンテンポラリー」ではマルーン5とケンドリック・ラマーの「Don’t Wanna Know」が最も聴かれた曲となった一方で、「アーバン・コンテンポラリー」のジャンルでもケンドリック・ラマーの「Humble」が最も聴かれた曲だったということが、今アメリカの音楽市場でアーティストたちがジャンルをまたいでコラボレーション曲を発表して人気を集めている流れを象徴していると考えられます。
ラジオを聴くミレニアル世代で人気は、「カントリーミュージック」「ポップス・チャート」「アーバン・コンテンポラリー」。X世代では「カントリー」「ニュース/トーク・ラジオ」「アダルト・コンテンポラリー」と世代で嗜好が変わります。
ラジオに出稿する広告主
ニールセンのレポートでは、ラジオに広告を出す企業をリスト化しています。
1位はマクドナルドで4610万ドル、2位は寝具チェーン大手の「マットレス・ファーム」が4140万ドル、3位はケーブルTV大手コムキャストの「コムキャスト Xfinity」で3680万ドル、4位は住宅・建築資材チェーンの「ホーム・デポ」が3400万ドル、5位はモバイルキャリアの「T-Mobile」が3280万ドルで入りました。これらは全て音楽をオンエアするラジオでの広告出稿となります。
これとは別にトークラジオやニュース、スポーツ中継を中心とするラジオ局への広告出稿企業もリストアップされています。
1位は転職サイトの「ZipRecruiter」、2位は「コムキャスト Xfinity」、3位は自動車保険会社の「GEICO」、4位は「マットレス・ファーム」、5位はパイプライン会社専門のコンサルティング会社「Accufacts Research」という不思議な会社も広告を出しています。
ポッドキャストの成長
前述の通り、アメリカでも「ポッドキャスト」市場は小規模ですが、オーディオコンテンツ市場として考えた場合、その存在はすでにキープレーヤーとなっています。
ニールセンによれば毎週3000万人以上のアメリカ人がポッドキャストをダウンロードまたはストリーミング再生しています。特にスマートフォンでポッドキャストを視聴するアメリカ人は、2014年から157%増加、視聴が一定数を維持するPCやタブレットとは大きな差を付けてポッドキャスト市場の成長に寄与しています。
なおニールセンは自分たちでポッドキャストも展開しており、「A Guided Tour of Radio」と題したポッドキャストで今回発表されたレポートを振り返っています。
ソース
How America Listens: The American Audio Landscape (Nielsen)
State of the Media: Audio Today 2018(Nielsen)