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欧米で人気を集める聴き放題の定額制音楽ストリーミングサービス『Spotify』は同社初めての取組みとして、インディーズ系アーティストの音楽マーケティングを同サービス内で手掛けます。第一弾として、スウェーデンのインディーズ系の新人エレクトロニックデュオ「Cazette」(カゼット)のデビューアルバム「eject」を世界でいち早く、Spotifyのみで独占配信を開始します。

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今回の試みでSpotifyはCazetteのプロモーションを世界15ヶ国のSpotifyマーケットで展開することにより、Spotifyが音楽マーケティングツールとしての認知をアーティストやレコード会社経営者の中で拡大しようと試みます。Cazzetteは世界で初めて音楽キャリアをSpotifyから戦略的に始めるアーティストとなります。

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これまでアデルやデビッド・ゲッタなどのリミックスを手掛けてきたCazzetteのデビューアルバム配信において、Spotifyは3通りのパターンでプロモーションを行います。一つはSpotifyの主要機能であるプレイリストの専用リストを作成し、誰もが購読(サブスクライブ)出来るようにすること。二つ目は、Cazzette専用のSpotify音楽アプリが提供され、その中では音楽ビデオやその他のコンテンツが楽しめること。三つ目はSpotifyのトップページでアーティストがフィーチャーされること。

また配信される楽曲も3通り用意されており、最初の6曲は11月13日、次に3曲が12月に、3曲が2013年初めにSpotify音楽アプリ上などからリリースされます。

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Cazzetteのマネージャーで、トップDJのAvicciもマネージするAsh Pournouriは、「消費者はアーティストの今よりも潜在的なアーティストストーリーに魅力を感じています」とコメントしています。現在Cazzetteはどのレーベルにも所属していないため、今後デビューアルバムがSpotify内のチャート上位に食い込んだり、ソーシャルメディアで口コミされるようなら、Spotifyでのマーケティングは成功と言えると述べています。Spotifyは今回のCazzetteプロモーションはSpotifyが無償で実施しており、デュオには通常のストリーミングからの収益が支払われます。

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アデルやコールドプレイが新アルバムのリリース時にSpotifyでの配信を取り下げる中、Cazzetteは真逆の流れを行きます。ですが、CazzetteとPournouriは新作の配信をSpotifyのみにとどめるが、DJツアーや動画、その他の音楽プロジェクトを並行して実施することで、Spotifyの無い国のユーザーに向けてアーティストをプロモートしていきます。

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インディーズ系レーベルDomino Recordsのデジタル担当で、Spotifyのグローバル・コンテンツ担当スティーブ・サヴォカ(Steve Savoca)は、「私達(Spotify)は、アーティストが音楽プラットフォームを活用してファンと強固な関係を構築できるよう優良なパートナーでいたい」と述べています。

Spotifyが自分たちのプラットフォームをアーティスト達に開放していることは、音楽マーケティングにとって良い動きです。その理由は2つあります。一つは巨大なユーザー数を抱えるSpotifyだが、基本的には音楽ファンやリスナーが集まる音楽SNS。FacebookやTwitterに比べ、多様な情報が流れてくることもありません。そのため、音楽のみのピュアな対話形成できるため、アーティストは何のフィルターを通すことなく音楽ファンの共感を得るまでの距離と時間を縮めることが可能になります。 二つ目は、Spotify音楽アプリなどを利用することで、アーティスト(と開発者)はリスナーのユーザーデータを取得できるため、ウェブやモバイル、Spotifyとの連携など更なるマーケティングに活用できるのではないでしょうか?

ただここでも注意したいこと。それはSpotifyで音源を配信すれば人気が出るということは、絶対に無いということです。Cazzetteの場合、リリースのタイミング、Spotify音楽アプリとの連動、ツアーや動画、SNSなどSpotify外の活動など、複合的な視点で戦略を立てています。過大な期待を抱き「配信した」だけだったりや「配信開始!」とつぶやくだけでは、人に届く前に情報に飲み込まれてしまい、多くの現状からは変わりません。

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Spotifyは脅威でも救世主でもありません。人に音楽を届け楽しんでもらうためのツールの一つにすぎません。ですが、Spotifyがアーティストにとってよりオープンな存在になれば、今後少しずつアーティストのキャリアがSpotifyから始まったり契約へと繋がったりする可能性へと広がったり、新作のマーケティング・プラットフォームとしての活用が増えていくうねりがSpotify内から生まれてくる日も近い。そんな日に備えてミュージシャンは音楽世界とテクノロジーのつながりを受け入れ変化に順応する準備を進めておくことはいかがでしょうか。

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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