世界で最もクリエイティブな動画を作るバンドとして有名なバンド「OK Go」(オーケー・ゴー)は、ただ面白い動画を作るだけのバンドではありません。OK Goはこれまで異なる業種の企業と組み、音楽と連動したブランド戦略に大きく貢献してきました。これまでOK Goが組んできた企業には、Google、サムスン、シボレーなど大手ブランドがいます。

via Adweek

6月にフランスで開催された世界最大のクリエイティブのアワード「カンヌライオンズ2013」の期間中、広告業界で最も影響力の高いメディアの一つAdAgeのインタビューで、ボーカル担当ダミアン・クーラッシュは音楽マーケティングの戦略的な側面と、レーベルとブランドと働く場合の違いについて答えています。ミュージシャン自らが音楽マーケティングに発言をすることも珍しいですが、「一緒に働きたいのはレーベルよりもブランド」という発言は、音楽ビジネスに関わる人なら誰もが気になる言葉ですね。こういうオープンな発言ができるカンヌという舞台らしいです。

2分強のインタビュー動画がこちらです。彼の発言を全訳でご紹介したいと思います。

(スマホサイトでは動画が見づらいですが、何度かリロードして頂ければご覧いただけます) 

バンドとして誰と仕事をするほうが簡単ですか?(Who is it easier for your band to work with?)

バンドとしては、ブランドやマーケティング・エージェンシーと仕事をするほうが、レーベルと仕事をするよりずっと楽ですね。なぜならレーベルは、バンドにどうあって欲しいかを既に頭の中に描いているからです。彼らはバンドに対して、作品はこうあるべきという考えを持っています。もし何か新しいことを始めたい場合でも、彼らのシステム内では実現することはできません。さらに、レーベルは全ての問題に対する対処方法を知っていると勝手に思い込んでいます。そして彼らはちょっと「上から目線」で接してきます。

一方でブランドの場合、理想の関係が構築できたなら、ブランドはバンドが目指すゴールと同じモノを目指して動きます。私達が達成したいことは、ファンとのエンゲージメントを最大化することです。私達はできるだけ沢山の人と情緒的、効率的、そして直接つながりたいと考えています。そしてこの大部分は、ブランドのマーケティング担当が目指すことと合致します。私達の間で考えなければいけないのは、優先順位をどう付けるかくらいです。

OK Go - Needing Getting - Official Video - YouTube

ブランドと理想の関係を築くカギは何ですか?(What’s the key to finding the right brand partnership?)

もし良質な関係が作れたのなら、お互いが目指すものは同じものになります。二つのグループは、より具体的なアプローチでつながりコミュニケーションを実現したいと考えます。

私達は2012年のスーパーボールの広告で、自動車ブランドのシェビー(Chevy)とプロジェクトを行いました。その内容は、私達が制作した音楽動画が結果としてスーパーボールのコマーシャルに使われました。このプロジェクトは、規模的にも資金的にも私達が実現できる活動の範囲を大きく凌駕していました。私達は動画で自動車を使いたいと考えていました。アイデアに共感してくれるブランドを見つけたことで、スーパーボールのTVCMという結果が生まれました。このような成果はブランドの協力の無いまま、バンドだけで企画することは不可能なのです。

 

スーパーボールでデビューしたNeeding/Gettingの音楽PVは2012年のカンヌライオンズで合計7個のアワードを受賞しました。OK Goのようなバンド(またはクリエイター集団)にとっては、音楽ビジネスそのものの考え方が従来のシステムとは違っています。ですので、レーベルよりもブランドとのパートナーシップがバンドらしい価値提供を実現しやすいのでしょう。音楽とブランドは結びつけやすいですが、デジタルとクリエイティブの組み合わせ次第では、今の制限を排除してやり方に大きな改善ができるとに思えます (ライブでホログラムをやっても、動画配信しなければ誰も後から見れない、など)。これは日本もですが、世界も同じではないでしょうか?ただ世界のほうが、チャレンジするブランドが多いことは確かです。

例えば、次のOK Goのようなバイラル動画を作れるバンドやクリエイターを企業が支援することなど、簡単に想像がつきます。アーティストも音楽で生活するために変わって行くように、ブランドも古いやり方を捨てて新しいことにチャレンジして行く流れがもっと生まれて欲しいですね。

OK Go公式サイト:http://okgo.net/
YouTubeチャンネル:http://www.youtube.com/artist/ok-go
Facebookページ:https://www.facebook.com/okgo
Twitter(@okgo):https://twitter.com/okgo

ソース
OK Go’s Damian Kulash: Brands Easier to Work With Than Record Labels(7/1 AdAge)
Damian Kulash and OK Go Seek Brand Partner for a Year of Crazy Adventures(6/21 Adweek)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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