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アップルが32億ドルと過去最高の金額で買収を目指しているBeats Electronicsは、有名なヘッドフォンビジネスの他に、定額制音楽ストリーミングサービス「Beats Music」を運営しています。

一部ではアップルが本当に狙っているのは、サブスクリプション型音楽サービスに参入するためのプラットフォームとなるBeats Musicではないかとも言われています。今年1月にローンチしたBeats Musicは月額9.99ドルの定額音楽配信でSpotifyやPandoraといった先行する音楽サービスに挑戦する新進気鋭のベンチャーです。

またBeatsのブランド力やマーケティング力、ドクター・ドレーやジミー・アイオヴィンなど音楽業界で影響力のある経営陣、さらにナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがチーフクリエイティブオフィサーに就任するなど、開始当初から話題が豊富でメディアを賑わせてきました。しかしそんなバズも虚しく、音楽サービスとしての結果にはなかなか結びついていないようです。Beats Musicは3月には新規会員をわずか11万1000人しか獲得できなかったことが明らかになりました。

リークされたロイヤリティ支払いレポートによれば、Beats Musicは3月に49371人の個人アカウント、61621人のファミリーアカウント(月額14.99ドル、5人まで利用が可能)を獲得しています。

Beats Musicでは3月に49371人の個別ユーザーが楽曲を1億1640万回を再生、1人あたり平均2357曲、1日あたり76曲という結果になっています。

レポートによれば、Beats Musicは一曲ごとの再生で0.000126ドルのロイヤリティ料を支払っています。Spotifyは0.006ドル〜0.0084ドルのロイヤリティ料を支払っています。

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定額制音楽ストリーミングサービスをリードするSpotifyは、現在アクティブユーザー数2400万人以上、有料会員数600万人以上を獲得しています。しかもこの数値は2013年3月時点のものですので、1年以上が経過した今は、さらに拡大していることが簡単に予測できます。

この数字で計算してみると、もしアップルが32億ドルをBeatsに支払った場合、Beats Music1ユーザーに対して29000ドルを支払うことになります(飛躍しすぎですけど)。

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しかし、アメリカでしか利用できないBeats Musicは現在米最大のモバイルキャリアAT&Tと提携したマーケティングを実施して、Beatsを組み込んだモバイルプランを提供、90日の無料トライアルを実施しています。したがって上のレポートの中でどれだけのリスナーがこの無料トライアルを使っているのか、どれだけのリスナーが実際に有料会員なのか、定かではありません。

Beats Musicはセレブを使ってスーパーボールのテレビCMも出してしまうほどマーケティング力を持っているスケール感は、新サービスとは思えない規模です。しかしそれだけでは多くのユーザーを獲得はできないほど、現在音楽サービスの競争は激化しています。この中にアップルがサブスクリプション型音楽サービスで乗り出しても、SpotifyやPandoraに勝てるほどのサービスが作れるかは疑問です。

Beats Musicをアップルが買収したい理由は、会員数やヘッドフォンの機能ではありません。アップルはBeatsブランドの奥にあるクリエイティブな魅力やストーリー性からデジタル音楽の領域で音楽体験を音楽好きへ届ける体制づくりを目指して動き出しています。単にデジタルファーストな音楽サービスにとどまらない。リスナーが喜ぶ音楽体験を生み出すために音楽サービスが存在する、そのために必要なものがBeatsブランドであり、Beats Musicなのです。

これまで独自の技術を社内で培ってきた傾向の強いアップルにとってBeatsの買収は、そもそもが大きな賭けかもしれない。しかし見方をかえるとアップルという影響力が、Beatsという素晴らしいブランドを損失させることになるかもしれません。どちらにしてもアップルにとっては大きな賭けに間違いありません。

ソース
Beats Music has just 111,000 registered accounts, leaked figures show(5/13 The Guardian)
Q. When does $0.000126 = $3.2 Billion? A. When Apple Buys Beats Music.(5/10 Trichordist)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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