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日本にとっては追い風ですね。

世界の音楽シーンで話題を集めている、定額制音楽ストリーミングサービスSpotifyは2013年4月に香港、マレーシア、シンガポールでサービスを開始し、本格的にアジア圏に進出してきました。それ以来、アジアでは台湾とフィリピンの2カ国が追加されただけで、世界的な市場拡大戦略に比べて比較的スローなペースで広がっています。

現在Spotifyは世界57カ国でサービスを展開し、拡大の勢いはとどまるところを知りません。そして今は日本を始め、ロシアやカナダなど大きな市場への進出を狙っていると言われ、各国で組織作りを強化しています。

Spotifyのアジア担当ディレクター、スニータ・カウル(Sunita Kaur)The Next Webとのインタビューで、Spotifyは今後12〜18カ月でアジア圏内と世界市場でさらに拡大する計画があると答えています。

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カウルは、あらゆる場所で知られるようになりたいとする一方で、現在Spotifyはアジア圏では主に自発的な成長に任せているため、自社に対する注目を十分に集められていないと述べます。

長い間、私たちのユーザーがSpotifyをマーケティングしてくれていました。私たちの話題はいたるところで沸き起こります。私は昨年でそれに勢いが付いたと見ています。そしてこれからはハードウェアやメディアなどのパートナーシップをさらに増やしていきます。またリアルでのイベントもさらに行なっていきます

私たちは自分たちのパーソナリティとマッチする楽しいことをしていきたいのです。私たちはマスメディアで大々的に広告を打つことは苦手です。それは私たちのやり方ではありません。ですが私たちが誰で何をしているのかを伝えるため、より一層ブランディングを強化していきます。

カウルはまた通信キャリアとの提携によるバンドルプランの提供、そしてハードウェア・メーカーとの提携も強化すると述べています。

例えばSpotifyが提供しているオーディオ機器との連携規格「Spotify Connect」は最近ではサムスンのワイヤレス・スピーカーシステムと連携して、プレミアムユーザーにアプリから2本以上のスピーカーで直接ストリーミング再生可能にします。

モバイルでの成長

Spotifyのモバイルデバイスへの対応強化は全体の成長に大きく貢献しています。Spotifyは、昨年スマホとタブレットでフリーの再生機能を解禁しました。スマホの場合は、ラジオのように曲順はコントロールする必要のないシャッフル機能による再生方法や、Spotifyのフリーのデスクトップ版と同様に広告モデルを採用するなど、モバイル分野でもユーザー体験を進化させてきました。

Spotifyは今年に入って56カ国で有料会員数が1000万人、アクティブユーザー数4000万人を突破する大きな節目を迎えました。カウルはこの数値を達成した大きな要因は、モバイルでの成長をあげています。

世界レベルで1000万人の有料会員を獲得出来たのは、私たちがSpotifyをあらゆるデバイスに対応させるという大きなシフトをビジネスに取り入れたからだと思います。

2013年12月に方向転換を行い、その後の結果はどう説明していいか、言葉が見つかりません。誰もが喜んでくれて、会社として疑う余地もないほど正しい判断でした。なぜならSpotifyをより多くの人に届けられただけでなく、世界における有料会員へのコンバージョン率は20%と、Spotifyを使った5人に1人が有料会員になっていることが分かります。数値的に考えると、より多くの人へ届けられれば、より多くの人がSpotifyの有料会員になってくれます。

特にアジア圏内で同様のシフトは潜在的に大きな可能性を秘めています。昨年GSM Associationが発表したレポートによれば、16億ユニークユーザーという膨大な数のアクセスがアジアでは起きており、これは世界の約半分のモバイル通信を占めるとのことです。

一方でSpotifyのモバイル戦略にも競合が存在します。フランスの定額制音楽ストリーミングサービスDeezerもSpotifyと同様にフリーでスマホやタブレットでの再生を解禁しました(Spotifyと異なるのは、シャッフルでの視聴ではなくプレイリスト形式であること)。

しかしカウルは、Spotifyのアジアでの最大の競争相手は、引き続き違法ダウンロードだといいます。

違法ダウンロードの問題は、私達が最も多くの時間を費やし頭を悩ます課題です。多くの場合が啓蒙活動になります。そして政府も協力的になってきていることは素晴らしいと思います。

例えば今年4月にSpotifyはフィリピンでサービスを開始しました。カウルによれば、フィリピンの音楽業界と交渉していた時、違法に再生される音楽の割合が95%を超えていたそうです。「多いことは知っていましたが、まさか95%とは予想外でした。多くの新しい市場でサービスをローンチすればするほど、より多くのことを発見していっています」

カウルは日本や中国を含むあらゆるアジア諸国でパートナーと交渉していると述べましたが、詳細について触れることはありませんでした。

ご存知の通り中国は過剰な違法ダウンロードで満ち溢れ、日本は未だにCD中心の音楽文化が根付いているため、音楽ストリーミングサービスという新しいビジネスモデルがこれらの国に進出し、既存のビジネスモデル中心の市場に食い込むことは困難と言われています。

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今年もすでに半年が過ぎ夏場にさしかかりましたが、未だに日本ではSpotifyに関する進展が見られていません。ですが、カウラさんやSpotifyのCEOダニエル・エクからのプレッシャーも相当なものだろうと思われますし、始めるか始めないかの決断の時はどんどん近づいてきているはずです。日本の音楽業界にとっても、Spotifyと一緒に次世代に残る新しいビジネスモデルを議論し実現していくチャンスだと思います。CD販売と流通が無くなることを危惧するかもしれませんが、スマホやクラウドといったテクノロジーの価値を活かしながら、ニーズに応えられる新しい音楽エコシステムをつくり、その中で出来たコミュニティをどう育てていくのかが重要なのだと思います。CDとかストリーミングというのは手段であって、継続して使ってもらうことやサービスを知ってもらうことのほうが重要なテーマだと思いますので、その意味でもSpotifyが動けば日本の音楽も動くことに期待しながら、アジアでの動きに注目していきたいと思います。

ソース
Spotify Passes One Year in Asia, Will Step Up Branding (7/21 The Next Web)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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