イギリスの音楽団体を取りまとめる非営利団体「BPI」(英国レコード産業協会)が、2014年度のイギリス国内音楽売上データを発表しました。BPIによれば、音楽ストリーミングサーヴィスの急成長と、イギリス人アーティストの人気によって、2014年は10億ポンドを超える10億3,000万ポンドに到達しました。しかし売上規模でみれば2014年は前年比1.6%減少でした。
音楽ストリーミングサーヴィスの利用が飛躍的に拡大は著しく、ストリーミング再生された曲数は2013年の75億曲から148億曲に大きく増加しました。
アルバム売上のトップ10は全てイギリス人アーティストの作品が占め、エド・シーランの「x」は170万枚、サム・スミムの「In The Lonely Hour」が125万枚とミリオンセラーが2枚登場した年になりました。
デジタル・フィジカルは伸び悩む
デジタルアルバムのダウンロード売上は2013年の3260万枚から9%減少して2970万枚に留まりました。トラックダウンロード売上は2013年の1820万曲から14.2%と大きく減少、1560万曲に減りました。
CDなどフィジカルのアルバム売上は2013年の6140万枚から6.9%減少して5720万枚になりました。CDは未だに減少傾向ですが、その速度は一時よりも緩くなり、デジタルアルバムの減少率が高くなりました。
アナログレコードも世界的な人気復活に伴ってイギリスでも大きく売上を伸ばして130万枚に到達、1995年以来初めて売上枚数が100万枚を越えました。ピンク・フロイドの「The Endless River」がアナログ売上トップで、アークティック・モンキーズの「AM」、Royal Bloodの「Royal Blood」が続き、こちらでもイギリス人アーティストがチャートで存在感を出しています。
音楽消費(曲再生回数と売上を比較)においては、全体の51.2%がダウンロードや音楽ストリーミングなどデジタル音楽となり、CDなどフィジカルは48.8%になりました。また音楽ストリーミングは全体の12.6%を占めて二桁台に成長しました。ここでいう「音楽ストリーミング」にはSpotify、Deezer、Google Playなどサブスクリプション型音楽ストリーミングは含まれますが、音楽試聴で頻繁に使われるYouTubeなど動画サービスやSoundCloudは含まれていません。
BPIのCEOジェフ・テイラーは
私たちのレコード会社はエド・シーランやサム・スミム、ジョージ・エズラなど世界でも人気を集め始めたイギリス人の才能を支援してきました。
2015年のサブスクリプション型音楽ストリーミングの成長となるはずのアップルやYouTubeなど大手の新しい有料サーヴィスの登場によって、私たちは世界をリードするイギリスの音楽業界が今後もさらに拡大していくと信じています。
先日アメリカの音楽市場で、デジタルアルバムのダウンロードが二桁減少して、音楽ストリーミングが50%以上拡大したことを書きましたが、イギリスでもデジタルアルバムは二桁に近い9%減少する流れが見られたことは、音楽の聴き方がダウンロードや購入する「所有」型からクラウドへ「アクセス」型に変化していることがはっきりと見られます。
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Spotifyがイギリスに本格上陸したのが、2009年2月。それから5年が経過し、デジタル・ダウンロードが飽和状態になり2年連続で売上が減少している中で、音楽ストリーミングの影響が市場にも反映し始めています。音楽ストリーミングの成長が無ければ、CDとデジタル・ダウンロードの低迷による減少比率はさらに大きくなり、イギリス音楽市場の低迷にもつながっていたでしょう。リスナーにとっては手軽に音楽を楽しむ手段としての「音楽ストリーミング」、手元に保存しておきたい手段として「ダウンロード」と、消費形態の選択肢の多様性が広がり、音楽業界にとってはCDとデジタル・ダウンロードの減少を音楽ストリーミングの増加が補完している新たな経済構造の誕生を迎えたと言えます。
ソース
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