「Spotify」はスウェーデンで誕生した、音楽を聴き放題できる定額制音楽ストリーミングサービスです。世界的に音楽ストリーミングへの注目とシフトが起こる中で、Spotifyはアクティブユーザー数6000万人以上、有料会員数1500万人以上を獲得している、圧倒的なリーダー起業です。
今ものすごく勢いのあるSpotifyの2014年度の収益が明らかになりました。
Spotifyは1億6200万ユーロの純損失を計上。2013年度に出した純損失5590万ユーロから拡大しました。営業損失は2013年度の9100万ユーロに対し、2014年度は1億6500万ユーロ。
一方で売上高は10億800万ユーロで、前年の7億4700万ユーロから45%大幅アップしました。
Spotifyは2014年にモバイル・アプリ開発に大規模な投資を行い、さらにブラジル、カナダなど新規市場に参入する海外戦略にも投資を行いました。2008年にローンチしてから現在は世界58カ国に拡がり、日本を除く音楽大国では殆どがSpotifyを導入しています。2013年末にはユーザー数は3600万人でした。
2014年は、配信に必要な音楽コンテンツを使用するために必要なロイヤリティ料に8億8200万ユーロ支払われました。Spotifyでは毎日数千曲規模で楽曲をサービスに追加しています。昨年支払われたロイヤリティ料は6億300万ユーロでした。
定額制音楽ストリーミングサービスの分野は、デジタル音楽の中で新しい収益モデルとして期待が高まっています。今年はアップルがBeats Musicをベースにした定額制サービスを開始すると噂されて、6月8日から開催する開発者向けカンファレンス「WWDC」でそのお披露目が行われるというのが大方の予想です。
アップルはSpotifyが提供する無料と有料のオプションに対して、高い収益性が見込める有料オプションのみでの配信でサービスを展開すると見られ、レコード会社からの協力を仰いでいます。
音楽ストリーミングの注目が高まる一方で、音楽ダウンロードは世界的に減少傾向にあり、iTunesストアでの収益も落ち込んでいることがアップルに音楽戦略で新規事業を立ち上げさせる要因になっています。
結果的に「SpotifyがiTunesストアの人気を奪った」と一概には言えないですが、Spotifyはじめ音楽ストリーミング各社の利用が増えるので、ダウンロードする人が減り始めているのが、今の世界の音楽図です。
ファイルをダウンロードする「所有」型の音楽体験から、ストリーミングする「アクセス」型の音楽体験に移行し始めたのは、アップルがiPhoneを世に送り出し、アプリのエコシステムを作り上げたことが少なからず影響しているのは、アップルにとって皮肉なことですね。
アップルはこの競争に勝つために、巨額の投資を行うはずですし、すでにBeats by Dreブランドを持つBeats ElectronicsとBeats Music合わせて30億ドルとアップル史上過去最高額で買収しています。そのアップルに対してSpotifyは今後どう成長していくのか、そして、まだ上陸していない日本を含めて、これからどの市場に進出するのか、今年はSpotifyにとっても転機となる年です。
ソース
Music streamer Spotify revenues topped 1 billion euros in 2014(5/8 Reuters)
Spotify Revenue Rises in 2014 but Still in Red on Heavy Investments(5/8 WSJ)