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3大メジャーレーベルの一つ、ワーナーミュージック・グループが11日、2015年度Q2決算(1-3月期›を発表しました。ワーナーミュージックでは同社初めて、音楽ストリーミングからの収益が音楽ダウンロードからの収益を上回る結果になりました。

デジタル音楽サービスからの売上が10%増加する中で、SpotifyやYouTubeなど音楽ストリーミングサービスからの売上は33%増加し、音楽ダウンロードからの売上を超えたとワーナーミュージックは発表しました。売上規模で音楽ストリーミングがダウンロードを超えたことはメジャーレーベルでも初めてです。デジタル音楽からの売上全体は7%増加でした。

Q1のグループ全体の売上高は前年同期比3.7%増加して、6億7700万ドルを計上。営業利益は64%増加の1億2100万ドル。純利益は1900万ドルを計上し、前年同期の純損失5900万ドルから回復しました。

ワーナーミュージックの総合的な成長の要因は、好調な新作リリースが続いたこととライセンス事業が好転したことがあげられます。

CEOスティーブン・クーパー (Stephen Cooper)は、前期の成長を「中でも注目すべきは、継続して拡大する音楽ストリーミングからの売上が、我々の音楽ビジネス史上初めてダウンロードからの売上を超えたことでした」と振り返ります。

地域別では米国事業が6%増加して2億8800万ドル。国際事業が2%増加して3億9300万ドルでした。国際事業では、英国、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中国が伸びた分、日本の低迷を補った形になりました。

国際事業のデジタル音楽からの売上は4%減少しましたが、フィジカルの売上とライセンスからの売上で持ちこたえました。

ワーナーミュージックと音楽ストリーミングの関係

決算発表でのトピックは、やはりと言うべきか音楽ストリーミングの成長におけるレーベルのスタンスでした。音楽ストリーミングは今後主要となる音楽の聴き方であり、将来的な音楽産業の収入源の柱となることに議論の余地はありません。しかしそのビジネスモデルに対する懸念が業界全体に広がっていることも事実です。テイラー・スウィフトを始めとする大物アーティストもSpotifyのビジネスモデルとロイヤリティ料分配に反対するスタンスを示しています。

クーパーCEOは、ワーナーミュージックはフリーミアム・モデルを支援すると答え、リスナーの広告付きのフリーサービスから有料サービスへ移行するように努力を続けると述べています。またクーパーは、ワーナーミュージックがいくつかのデジタルパートナー達と協力しながら、「サービスの内容やより洗練されたアプローチを使った修正を加えながら」ユーザーの移行を急がせるとも述べています。

今回の決算でクーパーは普段以上に音楽ストリーミングに対するワーナーミュージックのスタンスを明確にしています。クーパーはSpotifyの低いロイヤリティ料分配への批判に反論するかのように、「広告付きのフリーサービス」は、クリエイターや権利関係者にとって一銭も生み出さない違法サイトからリスナーを救っていることを強調しました。

ワーナーミュージックは音楽ストリーミングサービスの他に、デジタルパートナーとの積極的な提携を進めて、音楽の体験方法に変化を与えています。定額制動画サービス「Vessel」、音楽チャットサービス「Rithim」、中国の「Tencent」、メッセージングアプリ「Snapchat」とのライセンス提携などをすでに実現して、デジタル音楽ビジネスの拡大を狙っています。

ワーナーミュージック・グループは、音楽ストリーミングは引き続き成長し、音楽ダウンロードの落ち込みは「継続的なトレンド」になると見込んでいます。このトレンドは他社の音楽ダウンロードビジネスでも見られています。世界最大の音楽ストアのiTunesストアを運営するアップルはダウンロード売上が2013年は5.7%、2014年は13%減少に直面しています。

音楽ストリーミングへ消費者の関心と利用がシフトすれば、ダウンロードの売上低下は避けられません。そしてストリーミングが世界各国で利用されるようになれば、ダウンロードやCDにとって変わる音楽視聴の方法になる可能性がでてくることは想像できます。ワーナーミュージック以外でもユニバーサルミュージック・グループやソニーミュージックでも同じトレンドが起きることは、音楽ストリーミングサービスにとって非常にポジティブなことです。

その動きはまだ音楽ストリーミングもダウンロードもマイナーな存在の日本では、世界各国とは違った独自のエコシステムになるかもしれません。音楽ストリーミングによって、CDなど既存のフォーマットが脅かされるとは思えないので、音楽産業全体がこの流れによって成長する環境作りに一刻も早く期待されます。

ソース
Warner Music Group Hits Streaming Milestone in First Quarter(Billboard.biz)
Warner Music Group


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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