音楽情報解析サービスのNext Big Sound(NBS)が公開したデータによれば、FacebookやYouTubeなど2011年にウェブサービスで視聴されたオンライン音楽コンテンツは640億回に及ぶことが分りました。同社がまとめた2011年のソーシャルメディアでの音楽ファンの行動データをまとめたインフォグラフィック『2011 State of Online Music』の内容をご紹介します。
NBSは、オンラインやソーシャルメディアでの音楽に関するファン行動データを分析する企業です。FacebookやTwitter, YouTube, SoundCloud, Last.fmなどオンライン音楽サービスからオープンなデータを収集しチャート化と独自の分析を加え、レコード会社のマーケティング担当やアーティストマネジメントなど音楽関係者が投資を効率化するためのデータベースやツールを月額制で提供します。
またNBSはまたビルボードにウィークリーのソーシャルメディア音楽チャート「Social 50」と「Next Big Sound 25」チャートを提供します。
今回発表されたデータは、視聴されたデジタル音楽、動画、アーティストプロフィール、ファン数等の増加とNBSの解析をまとめた、総楽曲消費数、ファン数(フォロワー数等)、閲覧数、各ウェブサービスの前年度比の成長と最も人気のあったアーティスト、ソーシャルメディア上の人気チャート『The Social 50』、ソーシャルメディア上での人気拡大度を測定したNBS独自のチャート「NBS 25」デビューからThe Social 50にランクインするまでの速度をランク付けした『The Big Sound of 2011』です。
【2011年】
新規楽曲再生回数:64,876,491,602曲(楽曲+動画あわせる)
新規楽曲再生回数:64,876,491,602曲(楽曲+動画あわせる)
新規獲得ファン:3,433,149,332ファン
プロフィール閲覧回数:16,182,060,299回
例えば5分の音楽を640億回再生したら、5,333,333,333時間!これをFacebookのユーザー数8億人分で考えた場合、一人当たり402分となり、約80曲の音楽と接触していることになります。総務省が発表した日本人の固定・携帯での通話時間総数が41億時間なので、これを10億時間以上も上回っている結果です。まあ通しで聴く人は少ないから、参考値になれば。
ご注意いただきたいのは、例えばFacebookやTwitterの数値ですが、これはSNS上で(SpotifyやMOGなどで)聴いたりシェアした音楽の回数ではなく、アーティスト・レコード会社ページのファン数やフォロワー数を表します。Next Big SoundはSpotify, Pandora, Rdio等の音楽サービスからのデータ解析を2011年内に追加したので、その理由からこれらのサービスを考慮しなかったと考えられます。
サイト上でチャートにマウスオーバーすると、アーティストのデータ詳細が見えるインタラクティブなチャートになっています。
例えばフー・ファイターズの場合。
【成長率】
SoundCLoud 231% (楽曲再生、アカウントのフォロワー数、コメント数)
Twitter 104% (フォロワー数)
Vevo 97% (動画視聴数)
Facebook 96% (アーティストページのファン数)
YouTube 62% (動画視聴数、チャンネル購読数)
MySpace 6% (再生回数、フレンド数、ページ閲覧数)
Wikipedia アーティストページ閲覧は97億PV
ReadWriteWebは、(差し引いて読んでと前置きして)ソーシャルウェブのチカラで、無名・インディー系アーティストがメジャー所属の大手アーティストよりも注目を集めることが可能になったと説明しています。
特に無名アーティストでも手軽に音楽を発表できるSooundCloudの成長を例に挙げ、さらに、ソーシャルウェブ上の音楽ファンの行動をまとめた『The Social 50』チャートに、レーベルに所属していない新人アーティスト3人がランクインしていることも指摘します。
hypebotは、ソーシャルメディアによって人気アーティストが違うことに注目します。SoundCloudではDJ Bl3nd, The Weeknd,The White Pandaなど無名アーティストがトップ5を占めます。一方、その他のSNSではレディーガガやジャスティン・ビーバー、リアーナ、ケイティ・ペリー、アデルなどネット上で常に話題になるアーティストが上位を占めています。結果彼らは年間を通して売上にもつなげています。
個人的に考えたのは、ソーシャルメディアでつながった音楽消費がより身近になってきたことです。例えば、SoundCloudの音楽をTwitter上で聴くこと、YouTubeの動画をFacebookでシェアする、またはPitchforkのニュースでアーティストの新曲をSoundCloudで聴いて、TwitterでRTした後にアーティストのFacebookページに飛んで、リリース情報をいち早く知りたいために『Like!』した後にウォールにあるYouTube動画を見る(笑)。自分が普段接するSNS内で複数のサービスから音楽に接触し、共有する人が増えたことが、高い成長率増につながったと考えています。
新人にもオープンなPRの機会、複合的で継続的なファンとのつながり、SNS同士の連携、これらのトレンドが起きているということは、今後の音楽ビジネスはどのチャネルに比重を置くかに加えて、どのように消費者が消費するかを考えたほうが、目的(購買、ライブ、メルマガどか)に最適なつながりをファンとソーシャルメディアで形成できる可能性が高いと思いました。
販売は低迷かもしれませんが、オンライン上の情報量は増える一方です。そして、ソーシャルウェブを活用することで、誰もが楽曲を手軽に投稿でき、レコード会社や広告に依存することなくPRすることが可能になりました。どのようにして人に注目してもらい、継続してソーシャルメディアで共感し共有してもらえるかが、大きな要因であることが分ります。音楽プロモーションへのアプローチの再構築が必要とされるのではないでしょうか。
The Social 50
詳細なチャートはこちらでご覧ください。
【チャートの見かたの注意】
「The Social 50」:チャートは各週の各データを集計し合計した数値を示したもので、複合的に数値の高いアーティストのランキングになっています。
VEVOとYouTubeの違いについて:VEVOの視聴回数はウェブ上に埋め込まれた動画コンテンツを含む総数を集計しています。従って、YouTubeのVEVOチャンネルもVEVOの再生回数としてカウントしており、YouTubeとのダブルカウントを回避しています。