世界中で音楽ストリーミングサービスの市場獲得戦争が激化する中、また1つ新たな動きが浮上しました。世界的モバイルキャリア大手のTelefonicaは、音楽ストリーミングサービス「 ナップスター 」( Napster )と提携すると発表しました。

今回の提携ではTelephonicaは、ナップスターをの新規市場拡大を支援します。その第一歩として、初めてラテンアメリカ市場で展開を開始する予定です。そしてTelefonicaは同社がこれまで展開してきた既存の定額制音楽サービス「Sonora」を11月1日からナップスターに置き換えます。これによってSonoraユーザーの多くはナップスターのサービスへ移行します。さらにTelefonicaは今後モバイルプランやブロードバンドプランにナップスターをバンドルしたプランを展開する予定です。

この提携によってナップスターは大規模な新規ユーザーの獲得と、単独では実現出来なかった新規市場への進出が一気に可能になりました。

今回の合意に際してTelefonicaは親会社のRhapsodyに戦略的投資を行い株式を取得します。投資額は明らかにされていません。またRhapsodyの経営がどのように変化するかも明らかにされていません。

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現在Rhapsodyとナップスターは定額制の音楽サービスを展開するのみで、無料のサービスを展開していません。しかしTelefonicaとの提携により、今後は無料サービス提供も可能性が高まります。

ナップスターの現在のユーザー数は世界中で120万人です。これは600万人以上の有料会員数でこの分野をリードする「 Spotify 」と比べて極めて小さく、同社が生き残るためには大量の新規ユーザー確保が要件の一つでした。

音楽ストリーミングとモバイルキャリアの提携が現在のトレンド

世界中ではすでにSpotifyやDeezerなど音楽ストリーミングサービスが、新規市場への進出と新規ユーザー獲得を図りしのぎを削っています。その中でより多くのユーザーにリーチするためにモバイルキャリアと提携する戦略が音楽ストリーミングサービスでは増えています。

例えばスウェーデンでは、Spotifyが北欧最大のユーザー数を誇るTelia Soneraと提携し、音楽サービスをモバイルユーザー向けに提供しています。またイギリスではDeezerがEEと、SpotifyがVirgin Mobileと提携しています。さらにDeezerにいたってはフランスのモバイルキャリア「Orange」が投資パートナーとして参加しています。

その一方で米国のモバイルキャリアは、Spotifyと提携を発表していません。しかし米国ではRhapsodyがモバイルキャリアとは良好な関係を構築してきました。RhapsodyはMetroPCSと組んで、月額5ドルでプレミアムプランを提供しています。Rhapsodyは過去にはベライゾンやAT&Tとも提携してきました。

今回ナップスターがTelefonicaと提携したことにより、世界の大手モバイルキャリアが音楽サービスに投資し、モバイルプランにバンドルする動きが今後は増えるでしょうか? モバイルキャリアと提携することが、音楽サービスをメインストリームの消費者に届けるための戦略の第一歩かもしれません。

ソース
Telefónica strikes up new tune with Napster streaming music deal(10/16 The Guardian)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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