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この記事は、企業のデジタルマーケティング、ソーシャルメディアマーケティングを支援するコンサルティング会社トライバルメディアハウスで、コミュニケーションプランナーを務める高野修平さんにゲスト寄稿していただきました。

所属先では、レコード会社のソーシャルメディア戦略を手がけ、また様々な業種業態のコミュニケーション戦略を担当しています。

著書では、日本で初めてソーシャルメディアと音楽ビジネスに焦点をあてた『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』は音楽業界関係者なら必読。その他には共著『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』があります。現在2014年に出版予定の3冊目を執筆中。また近く音楽マーケティングをテーマにしたブログも再ローンチ予定。

「クワトログラフ」、「共有→共感→共鳴のサイクル」など独自の考え方でいつも刺激を受けている高野さんに、2013年に起きた音楽ビジネスの変化と、音楽マーケティングが今後どう進むかについて書いていただきました。
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Buzz型からCampaign Centric型への移行

間もなく2013年が終わります。今年も音楽業界では様々なトピックがありました。

一部ではサブスクリプション元年とも言われましたが、それはまだまだ「業界ゴト」でしかありませんでした。

サブスクリプションサービスに関しては、来年以降Spotifyの上陸も含め活性化することが予想されます。むしろ、活性化されないといけないのです。そうでなければ、サブスクリプションサービスは一部の音楽ファンだけに影響の範囲は留まり、スケールアップしません。

2013年を振り返るにあたって、特にソーシャルメディアの使い方について2012年と大きく異なる違いが生まれたように思います。

それがソーシャルメディアマーケティング=Buzz型という固定概念からの脱却です。

明らかに去年よりもBuzz型への意識傾倒から中長期的な関係を作るAlways-on型への実施と運用、効果測定に対しての意識と実践が強まったように思います。

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もちろん、依然としてソーシャルメディア=Buzz型のイメージのケースも多いですが、それは今まで同様大切です。ただ、Always-on型と連動させたCampaign Centric型へとソーシャルメディアマーケティングに能動的、積極的に取り組むレーベルや事務所は移行し始めているように思います。

それは裏を返すと、しっかりとFacebookページだったり、日々のツイッターの運用を実行し、PDCAを回しているからこそ、いざというプロモーションの時期にBuzzを起こすことを可能とします。ファンとのコミュニケーションの温度感、肌感が理解できているからです。

例えば、日本でも大人気のONE DIRECTIONの日本公式Twitterアカウントは、すでに34万人のフォロワー数を抱えています。毎回、コミュニケーションするわけではないですが、特に今ほど1Dが日本でも巨大な存在になる前から地道にファンと交流したり、ファンが喜ぶ情報を日本語訳にして、投稿したり、なによりその投稿の仕方が機械的ではなく、人間味あふれる内容で「一緒に1Dを応援しよう」といった空気を醸成させていました。

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今年1月の初来日時も1Dの来日スケジュールカレンダーを作成し、ファンに共有できるような仕掛けを用意して、大きな施策ではありませんが、堅実にTwitterアカウントをAlways-on型で運用してきたといえます。

そして、11月の初来日公演では、前回同様Mステ出演も含め、Twitter Partyと題して、テレビ連動型の盛り上がりを仕掛けます。ただ、出るだけではなく一緒に盛り上がる、一緒に楽しむといった土台作りをした結果、Twitterのオーガニックトレンドには1D関連のワードならび、まさしくBuzzを起こしました。

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via YouTube

ゆっくりと着実にAlways-on型でファンと育んできたチカラはマグマのようにグツグツと煮えたぎっています。そこに情報発信のタイミング、頻度、内容を運用をベースにした実績からのプロモーション展開をすることで、Campaign Centric型を実現させています。

ソーシャルとマーケティング戦略の融合

感覚知として、ソーシャルを使う使わないといった議論はもはや終わった話であり、そろそろいかにして「どう使うか、どのように使うか、何を持って使うか」へと他の業界同様、移行していくべきではないでしょうか。

現在では、大枠のマーケティング戦略が決まったうえで、「Facebookどうする?」「Twitterどうする?」「ソーシャルアドどうする?」といった内容に周知しがちです。そうなると、できることが限りなく少なくソーシャルメディアダイナミズムを実行することはできません。

マーケティング戦略を検討していく上で、ソーシャルメディアはおまけに組み込むのではなく、最初から戦略の一環に組込んで考えるようになっていく必要があります。

そうでないと、先日のBeyoncéのような音楽マーケティングを仕掛けていくことは不可能です。

店頭もCMも配信も動画もラジオもソーシャルメディアも連動、もしくは使い分けてマーケティング戦略を練るようになれば海外で当たり前にある戦略が作れるようになりますし、それこそBuzz型を生み出すこともできます。そして、その先には新しい音楽マーケティングの世界があるはずです。

ソーシャルメディアの使い方は無限です。ソーシャルメディアマーケティングを仕掛けることは、つまりデジタルマーケティングを実施することです。

もっともっとアーティストのマーケティング戦略の根幹にソーシャルメディアを意識し戦略的にソーシャルメディア、マスメディア、PRを組み合わせることが必要ではないでしょうか。

ソーシャルメディアダイナミズムをもっと体感するために、そしてそれが話題を引き起こし、売り上げにもつなげる。その変革期はもう始まっています。

beyonce参考:ビヨンセの新アルバム「Beyonce」の世界中で「ビヨンセ」が言及されたつぶやきのデータをリアルタイムで可視化した世界地図

来年はもっと能動的で積極的なデジタルマーケティングの事例や全マーケティング戦略の一環にソーシャルメディアが機能する事例が日本でも増えてきてほしいと思います。

音楽とソーシャルメディアの組み合わせはとても素晴らしいものなのですし、方法論や可能性はまだまだ詰まっているように思います。

小手先のサービスの概要に紆余曲折せず、各サービスの本質を見据えてマーケティングを実行していくと、海外のBeyoncéやOne Direction、Jay-Zなどの取り組みが日本でも見えてくるのではないでしょうか。

筆者:高野修平(トライバルメディアハウス所属コミュニケーションプランナー)

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高野君は、日本で初めてソーシャルメディア・マーケティングの視点で音楽ビジネスやアーティスト・プロモーションを考え始めた人で、この領域では誰よりも早く音楽コンテンツに対して「共有」や「共感」といった、SNSでは当たり前に行われるようになったアプローチを提案した第一人者です。

今でこそ「音楽もソーシャル」とした考え方が増えてきていますが、彼はツイッターやFacebookが日本で普及する前からこの考えを持っていた人間。考え方も新しいですが、それだけ先を見て音楽プロモーションの先を理解できることは、ソーシャルを理解していて(本職がそうだからできること)音楽の本質的な部分を理解するという双方の領域で俯瞰的なモノの見方ができるからであって、日本でも珍しい存在です。

というのが僕の高野君の感想なのです。僕も海外の事例をよく見ながら、日本の音楽マーケティングやアーティスト・プロモーションは、どんどんソーシャルが組み込まれた全体戦略が増えて行くだろうなあとは考えています。だから高野君のような専門家の意見を聞いて見たかったし、このアプローチはアーティストだけでなく、レコード会社やマネジメント、それから音楽ビジネス、そして音楽を使ってマーケティング活動をしているブランドにもあてはまると感じていますので、とても考え方が広まります。

一方で彼の言うAlways-On型の音楽マーケティングは日本ではチャンスだと思う反面、人材不足や予算の確保、ツール・サービスとの連携など、課題は多いと思っています。つまり大きくいうと問題は「継続性」の確保。

ただ高野君が書いているように、「ソーシャルを最初から戦略に組み込む」アプローチが必要になってくるでしょうし。「ソーシャルどうしよう。。。」なんて話でずっと悩むくらい位なら、いっそ今やってるキャンペーンを一から作り直すくらいでないと、今後は継続性をもって仕掛けていくことは無理だろうなあと思っています。

そんなシチュエーションが増えて行く中、そんな問題に直面した時に問題を解決してくれるような新しい人材や他業種との連携は、有名アーティストだけでなくインディーズアーティストでも今後もっと必要になるだろうなと思っています。

みなさんは、この記事を読んでどう思われましたか? コメントがあれば聞きたいですので、メッセ、Twitterやメールでも構いませんので聞かせてくださいー!


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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