2月21日から23日にかけて東京で日本で初めての音楽ハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」が開催されました。
イベントの模様は直後に書いた記事や、アスキーさんやビルボード・ジャパンさんでもレポートされていますので、そちらもご覧下さい。
日本初の音楽ハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」大盛況で終了! 世界的音楽企業のハッカー・エヴァンジェリスト達が日本人開発者を賞賛! #MusicHackDay
Web API時代のDJのDはデベロッパーのD。(2/25 アスキー・クラウド)
【Music Hack Day】が日本初開催、150人のハッカーが生み出した新しい音楽ハック(2/24 Billboard Japan)
幸運にも僕はイベント主催者のEcho Nest福山泰史さん(@fkymtsh)にお声がけいただいて、音楽ハッカソンで審査員に選んで頂き、音楽ハッカー達が週末作った音楽ハックを目の前で見れるという幸運に恵まれました。他の審査員には、Wired誌編集長の若林恵さん、ユニバーサルミュージックでデジタル事業開発本部長を務めているUMデジタルのドン(と個人的に思っている)鈴木 貴歩さん、ライターの榎本幹朗さんと、各分野でプロとして活躍されている方ばかりが集まりました。
また、今回Music Hack Day Tokyo 2014には、SpotifyやSoundCloud、Echo Nest、Gracenoteなど世界的に多くのユーザーや大手クライアントを抱える音楽企業がスポンサー企業として参加し、音楽APIを提供しました。23日のプレゼン終了後には、APIを提供した各企業が注目する音楽ハックにプライズが授与され、また僕を含む審査員も気になった音楽ハッカーに審査員賞としてプライズを贈呈させていただきました。
最終日23日には合計29組の音楽ハッカーがプレゼンを行いました。このブログでは、発表された音楽ハック29組の中から気になった作品をできるだけ多くご紹介していきたいと思います。
まず第一回目にご紹介するのは、音楽をキュレーションで人に届ける音楽メディア「Spincoaster」チームです。
Spincoaster(スピンコースター)
Spincoasterは、音楽ライターやブロガー、また普段はアプリ開発や音楽とは違う職業を持ちながらも音楽が好きなメンバーが音楽キュレーターとなって、それぞれが「心を震わせた楽曲」を紹介していくキュレーション型音楽メディア。選曲にもキュレーターのパーソナリティが出るので、読者が気になった楽曲でキュレーターの選曲に共感するチャンスも広がるだろうし、キュレーターを軸に音楽を掘っていく可能性も広がっていく、従来の一方的な情報発信型音楽メディアとは大きくアプローチが異なります。
SpincoasterチームとしてMusic Hack Dayに参加したのは、プレゼンもしてくれたJun Hayashi君(@_rinjun_)、普段はモバイルアプリの開発をしているRyotaro Ohkawa君(@ryotarolab)、エンジニアのShigeru Ogawa君(@mugi65)の3人。
今回、Music Hack Day Tokyo 2014でSpincoasterチームが作ったハックは2つ。共に実用性と持続性を考えたアイデアを実現し、1週間や1カ月といわずその先も使い続けたくなるようなアプリを作ってきました。まず一つ目がこちら。
Spincoaster Spotifyアプリ
Spotify音楽アプリとは、Spotifyのデスクトップアプリ内で動作する、音楽を見つけ楽しむためのアプリ群です。「Discovery」(音楽発見)、「Top Charts」(チャート)、「Reviews」(音楽レビュー)、「Social」(ソーシャルミュージック)、「Lyrics」(歌詞)、「Concerts & Events」(ライブ・イベント)などジャンルに分かれ、音楽メディアやレコード会社、アーティスト、音楽サービスがSpotifyの楽曲カタログとユニークなアイデアを結合して、新しい音楽の聴き方や探し方を提案しているアプリのことです。
今回Spincoasterは、音楽メディアというプレゼンスとコンテンツを活用したSpotifyアプリを構築しました。デザインも非常にシンプル。まずSpotifyでSpincoasterアプリを立ち上げると、「Recent」や「Popular」などサイトのコンテンツをに付順や人気順に表示できるようになっていて、またどのキュレーターが書いたのかでもフィルターできる「Written by」も付いています。
アプリでは、楽曲紹介の簡単な見出しとグリッド式レイアウトにコンテンツが表示されているので、アルバムカバーから音楽を探すように掘り進められます。こちらはSpotify APIを利用して作っています。
Spotifyの音楽アプリはすでにPitchforkやローリングストーンのような音楽メディアが活用しており、読みながら音楽を聴くことができる音楽情報サイトとの連携は可能性が高いと思います。
残念ながらネット回線の不具合でプレゼン時間内にはデモがうまく行きませんでしたが、実現できれば面白いと思いましたし、今度個人的に見たいです。
二つ目の音楽ハックはこちら。
SPIN. DISCOVERY
これは何かというと、O2O(Online2Offline)を使った音楽ディスカバリーで音楽レコメンドサービスです。具体的には、iBeacon端末(写真にある赤い粘土みたいなモノ)に近づくと、Spincoasterのプレイリストや、時間帯に応じて変化するプレイリストがスマホにゲットできるという仕掛け。
システムはこのような作り。iBeaconから発信される(Bluetooth Low energy信号)をiOS端末が検知し現在位置を特定、そしてユーザーに通知を送ったり、アクションを促したりすることが可能になります。iBeaconの便利な点は、端末をかざす必要がないことです。ですので、すれ違いや、立ち止まっているだけでも自動的に情報を取得する事が出来ます。NFCを置き換えるのでは?とも言われているテクノロジーです。SpincoasterチームはiOS端末に送る情報として、音楽を送り、音楽と出会う機会をものすごくシンプル化しています。APIにはEcho NestとSpotifyを利用しています。
例えば、iBeaconがある場所をすれ違うと、Spincoasterでキュレートされたプレイリストが自動的に表示し、ユーザーはSpotifyアプリを立ち上げて、楽曲を聴くような、立ち止まること無く音楽をチェックすることができます。
また、眠たい時や、疲れた時に聴きたくなる場合には、その時に応じた選曲をEcho Nest APIを使ってセレクトし、iBeaconに近づくと睡眠に良い音楽が自動的に流れ始めたり、リラックスできる選曲が流れたりする仕組みです。
詳しくはチームが作ったこちらのデモ動画をご覧ください。
チームが考える使い方としては、例えば、好きなバンドのライブが終わって、フラッと会場のロビーを歩いていると、自分のiPhoneにセットリストがプッシュ通知されてくる。そんな来場者限定のコンテンツを使った音楽体験もiBeaconとSpotifyを組み合わせれば実現可能になるのです。
皆さんの中にも、ドアに貼られたセットリストの紙を撮影しても、家に帰ったら復習し忘れたりした経験はあると思います。ライブ会場との組み合わせは、1つ日本で今後普及しそうな可能性の1つと、Hayashi君は語ってくれました。
僕的にもiBeaconを使えば、ライブ会場の帰りにもらう大量のフライヤーの代わりに、次に出演するアーティストのプレイリストが自動的にゲットできて、聴いて良ければ、アプリからチケットが購入できるようなシステムが実現して欲しいと、この音楽ハックを見て思いました。
Spincoasterチームが今回の製品作りについて目指したところは、普段からメディア運営をしている中でのコンセプトでもある「心が震える音楽との出逢い」を、音楽APIとコラボして拡張し実現することでした。これは、普段から活動の場をネット上に持っているチームの強みですね。
また実用性のある音楽ハックが出来たことも面白いと思いました。既存の環境にも適応できるアイデアですし、チームのミッションでもある「継続的に利用できる」音楽体験を創造しようとしているところが好きです。
今回はキュレーション型音楽メディア「Spincoaster」チームの音楽ハックをご紹介しました。Spincoasterに興味がある、キュレーターになりたい、音楽アプリを一緒に作りませんか? と思われた方は、チームにご連絡してみてください!
記事化にあたっては、Hayashi君から詳細な情報をFacebookメッセージでいただいたことで実現しました。ありがとうございました。
このブログでは、今後もMusic Hack Dayの音楽ハックを取り上げていきます。週末の作品がキッカケで、仕事やコラボレーション、次の音楽ハックにつながる手助けを少しでもできれば、今後日本の音楽シーンでも、ITと音楽のつながりが広がりデジタル化を加速できるのではと思っています。もし、紹介して欲しいと思った開発者の方がいらしたら、僕当てにFacebookでメッセージかメール「jaykogami@gmail.com」までご連絡ください。
今回のイベントを通じて、日本で初めての音楽ハッカソンという記念すべきイベントに参加された日本人開発者の皆さんには、今後も音楽シーンを盛り上げていって欲しいと強く確信しました。参加出来なかった開発者の方、そして音楽ビジネスに携わる方や、単純に音楽とテクノロジーが好きな方も、次回の音楽ハッカソンに参加していただきたいと思いますし、普段の生活の中で音楽とテクノロジーの実験を進んで試して欲しい、そう思いました。