巨額の買収劇が続きますね。動画コンテンツ・ビジネスがまた拡大しそう。
米モバイルキャリアのAT&Tと投資家グループChernin Groupは、YouTube最大のマルチ・チャンネル・ネットワーク (MCN)の「Fullscreen」の過半数株式を取得すると発表しました。
Re/codeによると、月間再生回数が40億回以上に上るFullscreenの買収は、AT&TとChernin GroupのジョイントベンチャーOtter Mediaを通じて行われます。正式な投資金額は発表されていませんが、約2億ドル〜3億ドルと伝えられています。
「つながり世代初のメディア企業」と自称するFullscreenは5万組以上のYouTubeクリエイターのコンテンツを配信しており、4億5,000万人以上の購読者とつながります。YouTubeクリエイターはFullscreenのツールとサービスを活用して、チャンネル運営の効率化や動画のプロモーション、コンテンツ・マーケティング戦略、広告運営がより効率的に実現し、動画からのマネタイゼーションを最大化することができます。
FullscreenはChernin Groupが保有するメディアの中でアニメ専門のCrunchyrollとアートクラフト専門のCreativebugを抜いて一位になります。
Chernin Groupはニューズ・コーポレーションの元社長で投資家のピーター・チャーニン(Peter Chernin)が率いる投資会社です。これまでSoundCloudやTumblr、Flipboardなどへ投資してきました。またピーター・チャーニン自身もネットラジオPandoraやTwitterの取締役を務めています。
Fullscreenの創業者でCEOを務めるGeorge Strompolosは、今後も同社の指揮を取り続けます。
2011年に創業されたFullscreenは、これまでChernin Groupやコムキャストの投資部門Comcast Ventures、広告グループWPPから約3000万ドル (約30億円)の資金を調達しています。WPPは継続して戦略的シェアホルダーとなります。Fullscreenの買収には米Yahoo!やAOL、NBCUniversalなども関心を示していました。
今年3月にFullscreenのライバル企業で、同じくYouTubeのMCNである「Maker Studios」をディズニーが9億5000万ドルで買収するなど、MCNの価値に大手メディアが注目し巨額の投資が行われています。
YouTuberといえば日本では製品やゲームをレビューするような個人レベルの人をイメージされるかもしれませんが、海外のYouTuberはプロフェッショナルレベルの動画コンテンツとソーシャルを駆使した配信で、世界規模のクリエイターとして活動しています。音楽の世界では、リンジー・スターリング(Lindsey Stirling)、タイラー・ワード(Tyler Ward)、ピーター・ホレンス (Peter Hollens)などインディペンデントなアーティストがFullscreenの支援を受けながら、YouTubeで脚光を浴び、リリースやメジャー契約、世界ツアー、ブランドとのマーケティングなどで成功するケースが増えています。
とりわけ若者層にリーチしやすいYouTuberと連携することで、企業はネットでのコンテンツ事業を拡大させるだけでなく広告やマーケティングでも大きな効果を期待できます。ただこれはアメリカや一部の海外の事情ですので、日本でMCNがここまで価値を高めるには、もう少し業界の変化を待つ必要がありそうです。
Fullscreenの主な収益源はYouTubeの広告ですが、今後はブランドとのマーケティングやYouTuber向けサービス、サブスクリプション型コンテンツなど、収益化の多様化を検討しているとのことです。
ソース
AT&T & Chernin Buy Fullscreen, the Big YouTube Video Network (9/22 Re/code)