サブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は、エレクトロニック・ダンスミュージック専門サービス「Beatport」との提携を発表しました。
SpotifyはBeatportのみでしか入手できなかった楽曲や動画コンテンツをSpotify上で独占配信していきます。またBeatportの親会社で、EDMフェスティバルのプロモーション企業大手SFX Entertainmentが運営するフェスティバルやイベントからの動画を独占配信します。提携によって、Spotifyは世界的に人気のエレクトロニック・ミュージックに特化したキュレーションでコンテンツを届けていきます。
SFX Entertainmentは、「Tomorrowland」「TomorrowWorld」「Sensation」「Mysteryland」などを運営するID&Tをグループ会社として持つ他、「Stereosonic」(Totem Onelove)、「Electric Zoo」(Made Event)などのフェス運営制作会社を買収しています。
SpotifyにとってBeatportとの提携は、同社として初めて他社の(しかも競合する)音楽ストリーミングサービスと結ぶ提携となり、この動きからも、Spotifyがコンテンツ力の強化さらに独占配信でApple MusicやTidalなどライバル企業との差別化を図ろうとしていることが伺えます。
またSpotifyはBeatportが提供している人気DJや新人DJ達のミックス、リミックスなど、これまでSoundCloudやYouTubeが強みとしていたコンテンツにもアクセスできる可能性が広がったことによって、定額制音楽ストリーミングサービスとしてキュレーションされたコンテンツをリスナーに提供できるようになります。SpotifyのBeatportとの提携は、ジャンル特化型のコンテンツプロバイダーと今後もパートナーシップを結び、Spotify社外の専門チームによるキュレーションを強化する戦略の第一歩かもしれません。
Spotifyではデヴィッド・ゲッタがDJとして初めて再生回数が累計20億回を超えるなど、エレクトロニック・ミュージックの人気は高いと言えます。先日Spotifyがランニングのスピードに自動で合わせて曲のテンポを調整してくれるランナー向けの新機能「Spotify Running」に、オランダ人プロデューサーTiestoがオリジナルのトラックを提供するなど、つながりの強さを感じます。
BeatportにとってもSpotifyでエクスクルーシブなコンテンツを配信するチャンネルとして、これまで以上に広い音楽ファンにユニークなコンテンツを届けることができます。その一方で、同じ音楽ストリーミングサービス同士がコンテンツを配信し合うことで、ユーザーの取り合いが起こる恐れもあります。推測ですが、Beatportにとって独自にユーザーを獲得する戦略だけでは会員数が伸び悩んでいるため、Spotifyとの提携から幅広いユーザーに認知度を高める戦略とも考えられます。
Beatportは今年開始したエレクトロニック・ミュージックに特化した定額制音楽ストリーミングサービスで有料会員500万人以上をこれまで獲得してきました。Spotifyは現在アクティブユーザー数7500万人以上、有料会員数2000万人以上を持つ、最大の定額制音楽ストリーミングサービスです。
Beatportの動画ストリーミング配信機能「Beatport Live」では、SFX EntertainmentのEDMフェスをストリーミング配信するだけでなく、SkrillexやDiploのDJの生配信なども行うなどエレクトロニック・ミュージック界では揺るぎない地位を獲得しています。
ソース
Spotify focuses more heavily on curation with a new Beatport partnership(The Verge)