ライブ・ネイションは、2021年Q3の業績(7-9月期)が約2年ぶりに黒字転換したことを発表しました。決算報告では、同時期に開催した音楽フェスティバルやコンサートで1700万人以上を動員したことが明らかになり、2020年から低迷が続いたライブやフェスに対する需要が着実に回復し始めたことを示しています。

黒字化の背景には、欧米で有観客の大型音楽フェスティバルやライブが今夏に復活できたことが大きく影響しました。

地域別での売上では、今年の夏期に大型音楽フェスやライブ、イベント再開が間に合った米国と英国が売上全体の95%を占めました。一方で、行動制限の緩和や、経済対策が遅れている日本を含むアジアや中南米地域での業績回復が遅れています。

フェスやライブ再開にあたり、同社は、イベント解禁後に素早く開催に踏み切れるよう、行政と連携してワクチン接種証明または陰性証明書を用いた運営体制に切り替える準備を進めていました。

ライブ・ネイションCEOのマイケル・ラピーノ(Michael Rapino)は「2022年は過去最高の一年になります。2023年、2024年も好調が続くでしょう」と予測します。加えて、「2021年Q4では、有手数料総取引額の過去最高売上を見込みます」とアナリストに答えています。

ライブ・ネイションは、2020年内にライブ動員数が新型コロナ以前の規模に回復する見通しだと述べています。

ライブ・ネイションによれば、チケットマスターで購入された、2022年開催のイベントチケットはすでに6500万枚以上を超えています。

2022年にライブ・ネイションが開催予定のライブやツアーのチケットはすでに2200万枚以上が売れています。コールドプレイやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーはそれぞれ100万枚以上のチケットが購入され、ハリー・スタイルズやクリス・ステイプルトンなどのツアーはすでにソールドアウトしました。ライブ・ネイションによれば、50万枚以上のチケットがすでに購入されたツアーが数百以上ある述べており、ライブやツアーの需要高をアピールしています。

決算発表後、ライブ・ネイションの株価は過去最高の127.75ドルまで急上昇しました。同社の株価は2021年で74%上昇しています。

コロナ依然の水準にはいつ回復か

Q3の実績では、調整後の営業利益は3億570万ドル(約351億円)。前年同期は3億1920万ドル(約367億円)の赤字を計上した2020年Q3から黒字化を達成しています。

グループ連結売上高は26億9000万ドル(約3093億円)。アナリスト予想の21億2000万ドル(約2440億円)を上回り、2020年Q3の売上高1億8400万ドル(約212億円)から大幅に増加し、ライブ需要の回復の恩恵を受けたことを示していますが、新型コロナ以前の2019年Q3水準(売上高は37億7000万ドル)と比較すると依然28.5%少ないため、いつコロナ以前の規模までフル回復するか注目です。

コンサート事業及び音楽フェスティバル事業からの売上高は21億5000万ドル(約2474億円)。前年同期は1億5480万ドル(約178億円)でしたので、ライブ運営のさらなる回復が期待されます。

チケット販売最大手のチケットマスターの収益は3億7420万ドル(約431億円)。2020年Q3に1億9740万ドル(約22億7800万円)のマイナス売上を計上しており、この中にはチケット購入者への返金が含まれています。今季は営業売上が過去最高の1億1400万ドル(約132億円)で黒字化に成功しました。

チケットマスターでは、販売したチケットの内、1400万枚以上のチケット販売が新規クライアントによるものだったことも明らかにしています。

チケット販売の収益改善では、チケット価格の値上げを行いました。特にアンフィシアター型の野外会場でのチケット価格は一人当たり63ドル(7250円)に値上がりました。他には、プレミアムチケットの販売も好調で、VIPチケットを値上げしたことも、売上を牽引しました。

また、フェスティバル客やライブ来場者が会場で支払った、一人当たり平均消費額(飲食、グッズ等)を、2019年水準から20%増加させることも成功したことが、収益化に貢献しました。

スポンサーシップおよび広告事業は、4790万ドルから72.5%増の1億7440万ドル(約200億円)まで回復。営業利益は1億280万ドル(約118億円)。

2021年Q3の時点で46億ドルの現金及び現金同等物を保有します。フリーキャッシュフローは17億ドル。チケット事業によるキャッシュフローが13億ドルとなっています。

2021年1月-9月期の売上高は前年同期比54.2%増の35億ドルでした。

しかし好調な業績回復とは裏腹に、音楽フェス事業で窮地に立たされています。

トラヴィス・スコット主催フェス『Astroworld Festival』で何が起こっていたのか 現地報道などを整理 – Real Sound|リアルサウンド
https://realsound.jp/2021/11/post-902878.html

決算発表の翌日にテキサス州ヒューストンで開催した、ヒップホップアーティストのトラヴィス・スコット主催の音楽フェスティバル「Astroworld Festival」で10人が死亡し、多数の負傷者を出す大事故が発生したことで、主催者側のライブ・ネイションは会場の安全確保と対応が適切でなかったとして、観客を煽ったとするトラヴィス・スコットと共に、負傷者やその家族から提訴されています。

スコットはフェスの全観客に対してチケット代の返金を行うことを明らかにしましたが、負傷した観客や、死亡した被害者の家族を含む282人が、トラヴィス・スコットとライブ・ネイション、同じステージでパフォーマンスを行ったドレイク、フェスのライブ配信を行ったアップルなどに対して20億ドル(約2300億円)の損害賠償を求める集団訴訟を起こしたほか、他にも精神的なダメージや、警備会社や運営側が安全確保を怠ったなど、さまざまな理由で訴えられています。

アストロワールド フェスティバルの警備員2人が約1億1,500万円の損害賠償を請求 | HYPEBEAST.JP
https://hypebeast.com/jp/2021/11/two-security-guards-travis-scott-live-nation-cactus-jack-astroworld-tragedy-lawsuit

また、Astroworld Festivalの運営マニュアルで、警備対策および緊急事態応答のセクションに、パニック状態の観客に対する対応策が不十分だった事実が、地元メディアの取材で明らかになりました。ライブ・ネイションは、興奮状態で制御不能な観客に対する処置を助言しようとしたイベントセキュリティの専門家による助言を無視し、安全対策を軽視した運営が問題視されています。

Live Nation ignored Travis Scott’s reputation for encouraging wild audiences (NPR)
https://www.npr.org/2021/11/10/1054543388/astroworlds-safety-plan-failed-to-say-what-to-do-in-case-of-a-crowd-surge

source:

Live Nation Entertainment Reports Third Quarter 2021 Results – Live Nation Entertainment


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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