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英国の人気ロックバンド、コールドプレイが10月に新アルバム「Mylo Xyloto』を発表するにあたり、Spotify (スポティファイ)Rdioなど会員制音楽ストリーミングサービスで配信しないことを発表したことを受け、音楽関係者やメディアの間でデジタルダウンロードとストリーミング配信の収益とメリットについての議論が交わされました。

そして、先日新たに(メジャーレーベルのワーナーミュージック傘下所属の)米ロックバンドのThe Black Keysが新アルバム「El Camino」(iTunesリンク)をSpotify, Rdio, MOG, Rhapsodyの音楽ストリーミングサービスで配信しないことを発表しました。

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今回の決定は、コールドプレイやThe Black Keysなど一連のアーティスト・レコードレーベル側が主張する、無料の音楽ストリーミングサービスによる新作の配信は、実際の購入に結びつかずアルバム売上が減少するという、意見を反映した結果と言われています。一方音楽配信サービス側は、無制限で再生できることで音楽発掘やSNSでの共有の機会が増え、総計の売上増につながると主張しています。

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image via LA TImes

そして先日The Black Keysはテレビ取材に対して、なぜSpotify等で音楽配信しないか理由を明確に説明しています (コールドプレイは説明なし)(動画はこちら)。理由は以下の2点にあります。

image via burg

1. ファンに不利

アルバムを購入してアーティストの音楽活動を支援してくれるファンを抱え、彼らは無料で聴く消費者とは違うと説明します。自分たちのコアファンを大切に思うがゆえに下した決断とも読み取れます。

“it felt unfair to people who purchased our album to allow people to just go on a website and stream the album for free whenever they wanted.”
「このアルバムを購入したファンに対して、ウェブサイトにアクセスしていつでも無料でアルバムをストリーミングできるなんて、不公平だね」

なんだかリアルとバーチャルな関係のようで、顕在する信頼のおけるファンに届けるか、ライトファンから「いいね!」をもらえるか、を求めているように感じます。

2. アーティストに不利

音楽ストリーミングサービスのビジネスモデルは、現状ではアーティストやコンテンツクリエーターにとって利益配分でのメリットが少なく、従来の販売方法と比較的近い収入を得ることは難しいと説明します。

“For a band that makes a living selling music, it’s not at a point where it’s feasible for us,” 
「音楽で生計を立てる我々のようなバンドに取って、今は採算性がないと感じるね」

it still isn’t at a point where you’re able to replace royalties from record sales with royalties from streams,”
「ストリーミング配信からのロイヤリティ収入はレコード売上のロイヤリティをまだ置き換えられない」

また現在の状況は、アーティストやクリエーターよりもレコードレーベルが有利になるように設定されているとも説明しています。

“”There’s a lot of stuff about some of these services that people don’t really know, It’s kind of set up to be a little bit more fair for the labels than for the artists.”
「これらのサービスでみんなが本当に知らないことがたくさんある。アーティストよりもレーベルに少し有利になるように構成みたいなところがあるんだよ」

ちなみに米国での現状では、アーティストはiTunesなどダウンロードストアのシングル1曲分(99セント)から得る総収入を、Spotifyでは64回のストリーミング再生でやっと同額を得ます。(via Billboard biz)

今回の発表後、リリースされた「El Camino」は初週に206,000枚を売上げ、ビルボードのアルバムチャートに2位でデビューするなど、The Black Keysで過去最高の結果を残しました。コールドプレイと同じで良い結果に結びついていますね。

この説明に、英音楽家ザ・ストリーツのマイク・スキナー(@skinnermike)は賞賛のTweetをしています。
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今回The Black Keysは新アルバムのマーケティングにマスとデジタルを組み合わせた包括的なアプローチを取っています。人気TV番組(SNL, Colbert Report)等でのゲスト出演と一般メディアでの露出に加え、12月8日にはNYCコンサートを「MTV Hive」でライブ中継すると共に、サイト内でライブストリーミングしました。(ライブはこちらでご覧ください)

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image via MTV

またコメディ要素満載なティーザーサイト「wannabuyavan.com」でシングルやアルバムカバー、プレオーダー販売や動画配信を行ってきました。

image via wannabuyavan

さらにバンドはシングル「Lonely Boy」のみを音楽配信サービスでストリーミングしています。この曲を無料・有料で聴いたファンに興味を持ってもらいアルバム購入につながればという導線を引いているようで、音楽配信サービスを完全に否定しているわけではないと思えます。むしろマーケティングツールの一つとして活用している感じです。

Spotifyなどは確かに業界を再編させる破壊的ビジネスモデルですが、音楽家やクリエーターにとっては現状も彼らのクリエイティブに対価が支払われるビジネスモデルであり、その証拠にファンやフォロワーがアルバム購入で支援してくれています。オンラインやSNSなどを活用した可能性は数多くあるにしても、現状を変えてまでも利益を追求するリスクは避けたいと思います。

特に米国という音楽やエンターテイメントが大きなビジネスを形成する市場では、Spotifyなど新興サービスはネガティブな影響を示唆する要因は多々考えられると思います。ですので、音楽家やクリエーターが慎重になるのもうなずけます。これは今後進出するであろう市場である日本でも同じことが起こると予想されます。

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ですがアーティストにとって、ファンが音楽を楽しみながら接して、アルバムやライブチケット購入につなげる導線を最適化して作ることは、今後最も欠かせないアプローチだと思います。ストリーミング配信も一つのツールだとしたら、動画やFacebookアプリの利用なども今後検討価値のある例だと思います。(Spotifyが売上に影響するという現状も、YouTubeが影響しているという話は一切聞こえてこないのが、謎です)

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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ソース
The Black Keys Discuss Streaming Block (12/14 Pitchfork)
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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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