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2月22日から24日、日本初の音楽ハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」が原宿THE TERMINALで開催されました。音楽ハッカソンとは24時間という時間制限の中で、音楽APIを使ってアプリやウェブサービス、ハードウェアなど、様々な形で音楽を楽しむための新しい技術を競い合うコンペで、ロンドンやサンフランシスコ、MIDEMやSXSWなど世界的に開催されている音楽好きな開発者のための音楽イベントです。

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Music Hack Day Tokyo 2014

https://www.hackerleague.org/hackathons/music-hack-day-tokyo-2014

https://twitter.com/musichackday

Music Hack Day Tokyo 2014は日本初の音楽専門ハッカソンということもあり、情報解禁後、あっという間に参加者の応募で一杯となり、定員枠がすぐ埋まり締め切られてしまうほど注目されていました。今回集まったのは、約150人のハッカー達。

この日ハッカー達に音楽APIを提供した企業は世界的な音楽企業ばかり。Spotify、SoundCloudなど音楽好きやIT好きなら聞いたこと・使ったことあるサービスを始め、Echo Nest、Gracenote、music Chef、Wasabeatなどユニークなソリューションを提供している企業が集まったこともあり、注目度がさらに上がりました。

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GracenoteのUIデザイナーが作ったパチスロ型プレイリストメーカー「パチオ」

 

24時間の短時間の中で開発者によって29個の音楽ハックが作られました。最終日の24日は時間内にハックを終えたチームや個人からのデモンストレーションが約3時間行われました。

イベントの模様は、「#MusicHackDayTokyo」または「#MusicHackDay」でも様子をフォローすることができます。

幸運にも僕は今回ゲストコメンテーターとして音楽ハッカソンに参加させていただきました。歴史ある初回のイベント参加をアレンジしてくださったEcho Nestの福山くん@fkymtsh) にありがとうと言いたいです。

このブログ「All Digital Music」では、今後Music Hack Day Tokyo 2014でデモをした音楽ハックをできるだけ多く紹介していきます。今回は、このイベントのために集まった音楽企業のデベロッパー・コミュニティ担当者ハッカー・エヴァンジェリスト達と個人的に会話をしていた中で、どの人からも日本人開発者を賞賛する声が相次いで聞けたので、彼らのコメントを紹介したいと思います。

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SpotifyのGlobal Hacker Advocate(グローバル・ハッカー・アドボケイト)を務めるAndrew Mager(アンドリュー・メイガー@mager)は、

日本人開発者のレベルの高さに驚いたよ。初めての音楽ハッカソンで、しかも言語の壁があるにもかかわらず、Spotify APIへの理解が素晴らしく早かった。僕が行く音楽ハッカソンでは、参加者が『これはどうすればいいの?』、『これはどういう意味?』とかよく質問をしてくるんだ。だけど日本人開発者は、自分たちで解決法を見つけることに素晴らしく長けている。

また普段はやらないようなAPIの使い方も、勝手に見つけてやってしまった開発者もいたね。例えば、外部のサーバーにAPIを置いてストリーミング再生させるようなシステムを構築していたチームもいた(笑)。いいことじゃないけど、アイデアは素晴らしいと思ったよ。今回多くの開発者がSpotify APIを使ってハックした(30%)。それだけ日本人もSpotifyに関心があることが分かって嬉しかった。

と、Spotify APIへの関心の高さに驚いていました。

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SoundCloudのDeveloper Evangelist(デベロッパー・エバンジェリスト)のErik Michaels-Ober(エリック・ミハエル-オーバー@sferik)は、

今まで見たことないハックが色々あったよ。日本人開発者にとってこれが初めての音楽ハッカソンとは思えないほど、アイデアに飛んでいたね。特にSoundCloudの音源をMIDIツール、Leap Motionを使ってブラウザ上でVJしたハックなんて素晴らしいと思ったよ。

初めて日本に来たけど、これほどまで音楽APIを使える開発者が多いことに驚いているよ。また日本で音楽ハッカソンは開催してほしいね。SoundCloudは世界中の開発者にはいつでもオープンにしているから、わからないことがあれば、いつでも連絡してほしいよ。

と、SoundCloudの開発者にオープンなスタンスを強調していました。

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Gracenoteでデベロッパー・プログラム・ディレクターを務めるChing-Wei Chen(チン・ウェイ・チェン, @cweichen)は

音楽に興味のある開発者がこんなに集まってくれて嬉しく思う。Gracenoteのメンバーもハッカソンに参加出来て楽しんでたよ。日本人開発者はアイデアがユニークだと思った。これまで見たこともないような音楽ハックを作る人も入れば、すでに仕上がっているような音楽ハックを作っているチームもいたね。また開発が丁寧な点もユニークだと思った。日本で初めてのハッカソンだったけど、とてもみんなエキサイトしていたように見えたよ。

日本人開発者の多様性が印象に残ったと言っていました。

個人的にSoundCloudのErik Michaels-OberさんとGracenoteのChing-Wei Chenさんからは日本市場についてや、開発者コミュニティについて色々な話が聞けたので、機会があればそちらも紹介したいと思います。

 

今回驚きだったのは、今回が日本では初めての音楽ハッカソンだったにもかかわらず、世界中を飛び回って数多くの音楽ハッカーに出会ってきたハッカー・エヴァンジェリスト達が見たことのない音楽ハックを24時間で作ったという発想力の高さ。Spotify APIなど日本の開発者にとっては初めて見るAPIにもかかわらずですよ。さらにいうと、FacebookやTwitterとは違って、日本で使えないサービス(Spotify)やEcho NestやGracenoteのようにB2B音楽ソリューションなど一般的ではない音楽サービスにも関わらず、それらを1日の内にハックしてしまった実力とアイデアをすでに兼ね備えているハッカーが日本に存在しているのです。

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SoundCloudとSpotify APIを利用した「Sound Typography」

 

極論ですが、SpotifyやSoundCloud、Echo NestやGracenoteが日本でサービスを始めるだけでは、日本の音楽は大きく前進することはありません。また音楽企業だけに頼っていては、日本の音楽シーンは進歩しません。そこには、音楽サービスをどう使って、楽しむかの、日常的な使い方やライフスタイルの提案が必要になります。そのライフスタイルと音楽サービスを中継するのが、今回集まった音楽ハッカーの存在ではないかと、改めて強く感じました。

日本人音楽ハッカーの音楽ハックが世界の音楽企業から評価を受け、良い印象を残したということは、世界的な音楽サービスを日本に普及させ定着させる足がかりになるということを意味しています。今回の成功によってSpotifyやSoundCloudなどの企業も、日本でのサービス展開に確信が持てたのではないかと思いますし、そう思わせたのは、開発者が素晴らしい音楽ハックを作り上げたことにほかなりません。

さらに、デジタル化がますます加速する世界の音楽シーンに向けて、SpotifyやSoundCloudなどのツールと連携させたアイデアを日本から世界に向けて広げられる可能性も見えてきました。

将来的な日本の音楽シーンにおいて、音楽プロモーションや音楽サービスの普及、さらには新しいハードウェアやモバイル連携など、音楽の新しい楽しみ方をコアな音楽ファンだけでなく一般層に広げるために、音楽ハッカーの存在はもっと重要視されるべきなのではないでしょうか?

日本にもっと音楽ハッカー文化を作りたい!日本でこれからも音楽ハッカソンを続けたい! 

ということをやっていきたいと強く思いました。

参加してくれた開発者の皆さんも今回だけでなく、次回も参加してほしいですし、また参加出来なかった開発者の人達も、次は参加してと思いました。デザイナーや写真家、ミュージシャン、企業のマーケッターの人にも参加してほしいですし、レコード会社のA&Rさんやマネジメント会社のマネージャーさんにもこれからは参加してほしいなぁと思っています。デジタル化する日本の音楽の中で、違う業界や違う立場の人が横つながりで連携していって、新しいものを作っていって欲しいと改めて確認できた週末でした。

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音楽ハックを紹介していきますよ

今後Music Hack Day Tokyo 2014で発表されたハックは、順次このブログで紹介していきますので、お楽しみに。またMusic Hack Day Tokyo 2014に参加した開発者、開発チームの皆さんも、自分たちのプロチールやSNSアカウント、さらには作った作品の背景やミッション、今後の予定など、3分間のプレゼンで吐き出せなかった熱い思いがあれば、メールまたはFacebookメッセンジャーでご連絡いただければ、記事内で紹介させていただきたいと思いますので、ご連絡ください!

image via @musichackday


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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