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コールドプレイの最新アルバム「Ghost Stories」はリリースと同時にSpotifyで配信されません。

シングル「Magic」「Midnight」「A Sky Full of Stars」はSpotifyで配信されています。ですが新作はまだ聴くことは不可能でした。

コールドプレイは新作リリースにおいて、ダウンロード配信とストリーミング配信の時期を分けて配信しているアーティストの1組です。コールドプレイは前作「Mylo Xyloto」でもリリースと時期を遅らせてSpotifyやその他の音楽ストリーミングサービスで配信を開始する「Windowing」(ウィンドウィング戦略)を実践してきました。ですのでコールドプレイが今回も「Ghost Stories」でウィンドウィング戦略を取ってきたことに大きな驚きはありません。

ですが新作を期待しているSpotifyリスナーにとっては、突然聴けないことが残念に思うリスナーが現れると可能性があるため、Spotifyはこのアルバムから下のメッセージを付けてアーティストのプロフィールページを更新しました。

“The artist or their representatives have decided not to release this album on Spotify. We are working on it and hope they will change their mind soon.”
アーティストまたはその代理はこのアルバムをSpotifyでリリースしないという結論に達しました。私たちはリリースに向けて作業を進めており、彼らが考えを変えてくれることを願っています。

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Spotifyではこれまでもアルバムが聴けないことはありました。しかしこのようなメッセージが表示されることは初めてです。Spotifyではザ・ブラック・キーズの新作「Turn Blue」や、ビヨンセの最新アルバム「Beyonce」でも同じメッセージが表示されます。

しかしSpotifyに反対する発言を繰り返してきたトム・ヨークとナイジェル・ゴッドリッジのAtoms for Peaceのプロフィールページには上のようなメッセージは表示されていません。

コールドプレイはSXSWで開催されたアップル初のiTunes Festivalでライブを披露したり、iTunesで「Ghost Stories」をリリース前に独占先行配信するなどアップルと強いつながりがあるようです。

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Spotifyが楽曲が配信出来ない事情を説明する戦略を取る理由は、Spotifyが幅広い一般ユーザーにまで普及し始めたことから、ただ楽曲が存在しないふりをしているよりも、音楽を求めてサービスに来るリスナーに対して背景を説明する必要性に迫られていると考えられます。またSpotifyのメッセージには、リスナーに誰のせいで配信を妨げているのかをアピールする内容になっています。ですので将来はファンがSpotifyで配信を拒否するアーティストに対し反論した結果、アーティストが考えを覆すような環境が生まれるかもしれません。

コールドプレイやブラック・キーズの他には、アデル、テイラー・スウィフトが過去にウィンドウィング戦略を実施してアルバムを配信しています。話題作がリリースと同時に聴けることは、Spotifyにとってプレミアな音楽サービスとして自社の価値を高め、アーティスト/レーベルからの信頼を高めるために必要な要因です。しかしリリースと同時に配信されない環境が続くと、Spotifyや音楽ストリーミングを使う価値が薄まってしまうという懸念材料があります。

アップルはメジャーレーベルに対し、話題作をiTunes限定で先行リリースするようにプレッシャーをかけていると言われています。その成功事例が今回のコールドプレイであり、昨年末のビヨンセの新アルバムの独占配信です。

Spotifyのスポークスパーソンはガーディアン紙に対して

コールドプレイは「Ghost Stories」をSpotifyやその他の音楽ストリーミングサービスで配信しないことを決定しました。Spotifyでは世界中の最高なリスナーが数千億人規模でおり、バンドの決定に私たちはひどくショックをうけています。

とコメントしています。

音楽ストリーミングサービスを使うことで、最新作を聴いてもらえるチャンスが拡大します。そのため、新アルバムをウィンドウィング戦略によって時期をずらして配信を開始しても、すでにリスナーの興味は他のアーティストに映っている可能性があり、配信することが非効率的なプロモーションになってしまいます。多くのアーティストやレーベルにとってはリリースと同時に配信するほうがメリットは高く、視聴や購入へのチャネルを拡大でき効果的なプロモーションを仕掛けられるチャンスです。新作をSpotifyや音楽ストリーミングで配信するほうが良いという考えと、そうでないという考えの議論は今後も当分続くでしょう。

ソース
Coldplay’s new album isn’t on Spotify – and it’s letting fans know why (5/20 Musically)
Spotify lets fans know about Coldplay and Black Keys album holdbacks (5/20 The Guardian)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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